ボーダレス・ジャパン田口氏に聞く。毎日の電気代で社会貢献できる「ハチドリ電力」のねらいとは

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世界中で新型コロナウイルスに対する注目が高まる中、気候変動に対する危機感は少なからず薄れていると言わざるをえない。そんな中でも気候変動は着々と進行し、対策は待ったなしの状況だ。特に、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(以下CO2)の削減が急がれる。それでも、自分にできることは微力だと感じている人も少なくないのではないだろうか。

しかし、家庭で使用している電力を切り替えるだけで、自分の出すCO2を半減させられるとしたら。しかも、切り替えてもほぼ変わらない電気代を通して、社会をよくするために行われる活動を継続的に支援できるとしたら。そんなことを呼びかけるのが、ボーダレス・ジャパンが新たに始める、再生可能エネルギー発電による「ハチドリ電力」だ。

「ハチドリ電力」は、ボーダレス・ジャパンの事業としては珍しく、代表取締役社長の田口さん自らが陣頭指揮を執っている事業だ。これまで、社会起業家を育成することに力を注いできた田口さんが、この事業にかける思いとは。外出自粛が続いていた4月末、IDEAS FOR GOOD編集部が田口さんにオンラインでお話を伺った(写真は以前のインタビュー時のものを使用)。

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ボーダレス・ジャパン代表取締役社長の田口一成さん。ボーダレス・ジャパンはソーシャル・ビジネスしかやらない会社として、2020年6月現在、34の事業を世界11か国で展開している。

環境にも社会にも貢献できる「ハチドリ電力」

ハチドリ電力の特徴は、まず何よりも、ほぼ100%再生可能エネルギーであるということである(※調整分には再生可能エネルギー以外の電力も含まれる)。そのため、電気を使ってもCO2が排出されない。

しかしそれだけではない。毎月支払う利用料金の1%は、契約者が応援したいと思った団体に寄付される。さらにもう1%は再生可能エネルギー発電所の増設に使われる。毎月支払う利用料金を通して、無理なく継続的に社会をより良くする活動を支援できるのだ。

ハチドリ電力の仕組み

Image via ハチドリ電力

また、もう一つ特徴的なのが料金体系である。何気なく支払う電気代だが、従来の電力は電気の仕入れ代などに利益が上乗せされている。しかしハチドリ電力では、毎月500円(法人の場合は、電気の使用量に応じて500~2,000円)の会費の他には、利益は一切上乗せされない。このように料金体系をシンプルにすることで、納得度の高い電気料金を実現しようとしている。

火力発電を減らさなければ。始まりはその強い思いから

Thermal power generation

Image by WikiImages from Pixabay

社会起業家の育成を行ってきた田口さんが、今、再生可能エネルギー電力の事業に乗り出すのには、気候変動に対する強い危機感があった。

「事業の目的は地球温暖化対策です」と田口さんは語る。「原因となっているCO2の排出を減らすことが大切です。そのため、CO2を多く排出する火力発電を減らし、再生可能エネルギー社会、脱炭素社会を作っていこう、というのが今の世界の流れです。実際に、『日本の部門別二酸化炭素排出量の割合』(JCCA全国地球温暖化防止推進活動センター)のデータによれば、日本の二酸化炭素排出量の4割をエネルギー転換部門、つまり発電が占めているのです」

「しかし、2019年12月、日本は火力発電を増やすと表明し、化石賞という不名誉な賞を受賞してしまいました。それを見て『なんとかしなければ!』と思ったのが、今回のプロジェクトの始まりです」

さらに、家庭から排出されるCO2についても調べてみた。自動車の排気ガスによるものが多いイメージを持ちがちだが、『家庭からの二酸化炭素排出量』(JCCA全国地球温暖化防止推進活動センター)のデータによれば、家庭のCO2排出量の46.7%を電気が占めている。つまり、CO2を出さない電気に切り替えれば、家庭から排出されるCO2を半減できるということがわかった。

「応援したい」を電力切り替えの目的に

日本ではもう一つ別の流れとして、2011年の東日本大震災による原発事故を受け、電力を再生可能エネルギーに変えていこうという動きもあった。さらに、2016年には「電力の小売全面自由化」が行われ、誰もが電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになった。新電力に切り替えると、電気代が少し安くなるというケースも多い。

それにも関わらず、現状は再生可能エネルギー使用比率は2割程度に留まり、依然、CO2を大量に排出する火力発電に依存する状態が続いている。

「日本は無関心というよりも、生活インフラの一部として当たり前になっている電力について、多くの人が切り替えを真剣に考えたことがないというのが実態だと思います。でも、実際にいろいろな方に『電気を再生可能エネルギーに切り替えれば、自分のCO2排出量の半分を削減できるんですよ』という話をすると、皆『それはいいね!』と言ってくれる。だから、再生可能エネルギーという選択肢を提示する必要はあると思いました」

しかし一方で、これまで多くの企業が再生可能エネルギーを手掛けたが、これまでに普及が順調に進んだとは言い難い。それからわかるのは、「再生可能エネルギー」「従来の電気より安い」というだけでは、多くの人は切り替えないということだ。そこで田口さんが考えたのが、「電気を切り替える目的を作る」ということだった。

「社会活動に共感はしているけれど、ボランティアや寄付はしていないという人が、ハチドリ電力に切り替えるだけで、無理なく継続的に、社会活動を支援できるという仕組みを作ろうと考えました。社会のためにがんばっている人と、それを応援したい人を、電気を通してつなぐのです」

「寄付文化のない日本は無関心と言われがちですが、実際には多くの人は『社会活動には共感しているし、何かしたい気持ちはあるけれど、家計のことを考えると難しい…』といった、モヤモヤした気持ちを抱えているのではないかと思うんです。誰もが善意を持っています。金銭的な負担を少なくして、継続的に関われる仕組みを提供すれば、その善意を形にできると考えました」

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Photo by Perry Grone on Unsplash

ハチドリ電力のウェブサイトには、社会活動に取り組む多くの団体や個人が掲載されている。NPO、NGO、個人、市民活動、企業基金など、形態はさまざまだ。電力契約の際には、その中から自分が支援したい団体を選び、自分の毎月の電気代の1%がその支援先に支払われるように指定できるのだ。支援先の活動は、ウェブサイト上の活動レポートと、毎月の電気代とともに送付される活動レポートで確認でき、活動を継続的に見守っていくことができる。

成し遂げたいのは、社会活動にお金が回る社会づくり

最後に、田口さんにハチドリ電力の事業を通じて成し遂げたい野望について聞いてみた。

「僕がこの事業を通して成し遂げたいのは、『地球温暖化を止めること』、そして『社会事業にお金が流れる仕組みを作ること』です。もともと僕が起業したきっかけは、NPOやNGOに寄付をしたいということでした。今、改めて、ハチドリ電力を通して、社会活動にお金が回る社会づくりをしたいと考えています」

「事業がスムーズにスタートしたら、給料の1%で社会活動への寄付をしようと呼びかける、『1%の運動』を展開したいと考えています。給料の1%をこの団体に寄付しているという事例を、数多く公開するのです。例えば、有名な会社の社長が給料の1%を寄付していると知れば、自分も給料の1%を寄付してみようかなと思えます。月給100万円の人は毎月1万円、月給20万円の人は毎月2,000円。金額ではなくて割合で捉えれば、自分も寄付してみようと思えるんじゃないか。そうした動きができてくると、もっと社会活動にお金が回っていくんじゃないか。そういうことをやっていきたいですね」

電気を使った分だけ地球にも社会にも優しくなれる、新しい電力

turn on the light

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気候変動対策の文脈の中では、「電気を使うこと=悪」とされがちだ。CO2排出を意識すると、照明のスイッチを入れることに軽い罪悪感を覚える人もいるかもしれない。

しかし、再生可能エネルギーであれば、電気を使っても地球環境に負担はかからず、しかも電気を使った分だけ社会活動への支援額が増える。必要な電気を気持ちよく使い、地球にも社会にも優しい暮らしをすることができるのだ。

今後、IDEAS FOR GOODでもハチドリ電力との提携を検討している。興味のある読者の方は、ぜひ、日々の生活を通して社会に貢献できるハチドリ電力への切り替えを検討してみてはいかがだろうか。


【参照サイト】ハチドリ電力
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