約1,500万人の人口を抱え、今や中国はおろか世界を代表する経済都市として「中国のシリコンバレー」と呼ばれるまでになった中国広東省の深圳で、また新たな一大プロジェクトが始まろうとしている。
深圳の西部にある宝安(Bao’an)を走る高速道路、「G107」周辺地域の再開発プロジェクトにおいて、その全容は明らかにされた。宝安地区の再開発に向けてAvoid Obvious Architectsらが提案したのは、世界で初めてとなるドローン専用の高速道路だ。
ニューヨークのマンハッタンよりも長く、30kmに渡って宝安地区を横切るG107は、同地域を都市化が進むウォーターフロントエリアと自然が残されたままの内陸エリアに分断し、都市の持続可能な発展を妨げる要因となっている。
都市における高速道路の役割を再定義するところから始まった同プロジェクトは、「サステナビリティ」「つながり」「テクノロジー」「シェアリングエコノミー」「社会創造」「グリーン建築」の6つをテーマに置き、ドローンや自動運転といった最先端のテクノロジーと自然を融合させた近未来の都市の在り方を提示するものとなっている。
大量の排気ガスを排出していた12車線の高速道路は、4車線ずつに分かれた2つの道路として筒状の空中トンネルの中に格納され、大気汚染の問題が解決される。そしてその空中トンネルの上に敷き詰められた緑の歩道を人々は歩き、都市と自然が一体化された暮らしを実現する。
こうした環境に配慮されたスマートシティ構想は深圳以外にも世界中で進んでいるが、今回提示された都市ビジョンの中でひと際人々の目を引いたのは、何といってもオフィスビルを貫くドローン専用の高速道路の存在だ。
現在、ドローンは産業分野での活用が期待されているテクノロジーの一つだが、その中でも特に関心が寄せられているのが、輸送・物流分野における革命だ。ドローンを活用した新たな空中の物流インフラを構築することができれば、地上のトラック輸送・物流を大幅に削減することができ、利便性はもちろん環境面におけるプラス効果も期待できる。
しかし、ドローンが空中を安全かつ効率的に飛び回り、輸送インフラとしての機能を果たすためには、ドローン輸送を前提とする都市計画が必要となる。そこで今回提案されたのが、ドローン専用の高速道路なのだ。
ドローンの輸送導線を考慮したビル設計を行うことで、効率的な輸送インフラが実現し、テクノロジーと利便性、環境へ配慮が一体化した都市が実現するというわけだ。
今回プロジェクトを提案した香港とニューヨークに拠点を置く建築デザイン会社のAvoid Obvious Architectsは、今回のプランを段階的に実現し、2045年までにこの自然とテクノロジーが融合した未来都市を完成させる計画だ。
今から約30年後の2045年、世界の都市はテクノロジーと共にどのような進化を遂げているのか。そして、そこで私たちはどのような暮らしをしているのか。想像するだけで夢は膨らむが、その未来を現実にするための最初の一歩は、既に始まろうとしている。