私たちが解決すべき社会課題の一つに、男女同権がある。これまでの世界の歴史を見ても、男女が同じ権利を獲得するために様々な議論やデモが行われてきた。現代ではこの問題は少しずつ改善方向に向かってはいるものの、まだまだ根強く残っている問題は、規則そのものというよりは人々の心に擦り込まれた「女性とはこうあるべき、男性とはこうあるべき」という思い込みのほうではないだろうか。
男女同権や男女平等については日本よりも先進的な考え方や規則が浸透している海外でさえも、ジェンダー問題からはなかなか抜け出せないでいる。
この問題を解決の糸口を、男女のコミュニケーションの取り方の違いに見出したデザイナーがいる。ニューヨーク出身の若きデザイナーRoya Ramezani氏が考えたのは、女性のための言葉をデザインする「キーボード」だ。
このユニークなキーボードは、ジェンダーの問題にデザインから取り組むという発想のもと、「女性がもっと力強い言葉を発することができるように」というコンセプトで作られた。
人が話す「言葉」は、人と人との関係性を形作る大事な役割を果たしている。どんな言葉を選ぶかによって、その人の「人」と「なり」が見え、相手との関係性も決まるのだ。
普段はあまり意識されることがないが、女性と男性では社会の中でそれぞれ異なる話し方をしている。女性は男性よりも曖昧な言葉を使う傾向があり、それにより話す時間も長くなりがちだ。女性デザイナーであるRoya氏は、女性特有のこうした曖昧な言葉や言い回しが男女の関係性にも影響を及ぼしていると考え、女性がより簡潔かつ率直な言葉を使えるようになるキーボードを開発したのだ。
このキーボードは、最小限の言葉や仕事上よく使用する単語や言い回しを、メールを書く際により率直な形で使用することができるように並べられている。また、入力された単語の数を追跡することができ、特定の単語が習慣になると、その新しい単語に置き換えられる仕組みとなっている。
初めから用意されているキーには「クレーム」「反対」「主張する」など、ほとんどの女性が潜在的に避けて使用しない言葉や動詞が選ばれている。使用開始と同時にコンピューターがすべてのキーストロークを追跡、単語がデータベースへ追加される。そして個々の入力のもと、指数サーバが単語を分析し、率直性に欠ける動詞をさらに生成するのだ。
このキーボードは、ジェンダーについての概念的なディスカッションの中から生まれた。キーボードは私たちの思考を言葉に変換するためのツールだが、同氏はこれを問題介入の出発点として使用し、ビジネスの場で活躍する女性の新たな武器として利用してほしいと願っている。
近未来的な形をしたこの製品は、実は1870年に造られた最初の市販タイプライター”Thomas Hansen”の手書きボールからインスピレーションを受けているという。古いものからインスピレーションを得てデザインされたこの製品が、新しい時代の思想と組み合わさり変化を起こす。
この奇妙で個性的な形をしたキーボードが、女性の発言をよりダイレクトに伝える手助けとなり、ジェンダーの問題を変えてくれるきっかけになるかもしれない。
【参照サイト】Roya Ramezani
(※画像:Roya Ramezaniより引用)