営業しないでくれている飲食店を支援。寄付するとレシピをもらえるサービス「Family Meal」

Browse By

世界中での新型コロナウイルス感染症の広がりを抑えるべく、自宅で過ごすことができる方に対して#stayhomeの推奨が続いている。長引く隔離生活の中で、多くの方にとって楽しみである食事において、毎日の自炊に疲れてしまうこともあるだろう。

その中で、現在飲食店は様々な形で、以前は可能であった外食の感覚を自宅で再現する方法を提供してくれている。

#stayhomeでも楽しめる外食の感覚

その代表的な例の一つに、デリバリーやテイクアウトがある。買い物に制限があり材料が揃えにくい時や、料理の時間が取れない時でも、デリバリーやテイクアウトを利用して自宅の食卓で本格的な食事を楽しむことができる。

しかしこれらは、お店の経営の目線から見ると、必ずしも最も良い方法ではない可能性もある。デリバリーやテイクアウトは店内営業とは性質の異なるものであり、アルコールや飲料からの収入が見込めない場合が多い。エクスペリエンスも重視している飲食店にとっては、料理を届けることだけでは完成しない部分もある。また、第三者であるフードデリバリーサービスも頻繁に利用される中、お店を見つけてもらえるチャンスは増えるが、手数料は経営者にとっては大きな負担だ(ただしデリバリーサービスは、コロナウイルスによる失業者に雇用を与えているという、社会全体で見た利点もある)。そして何より、従業員を勤務・通勤させることで起こりうる感染の危険を避けるためにも、デリバリーやテイクアウトすら実施していない飲食店も現に増えている。

そこで、もう一つの方法として目にする機会が多いのが、レシピやクッキング動画の公開だ。

レストランやシェフが、自宅でプロの味を再現するヒントをくれる。近くの飲食店だけではなく、旅行が難しくなった状況の今、いつか訪れたいと思っていたお店の料理も家にいながら楽しめる。飲食店と客のパーソナルなつながりを生むとともに、「またいつか本物の味を食べたい」「営業再開したら是非足を運びたい」と思わせてくれる。とはいえ、レシピやクッキング動画の公開で直近の安定した利益を生むのは難しい。その点で、未来の集客を期待する取り組みであるとも言える。

デリバリーやテイクアウトによる使い捨て容器の多用が気になる方も、この方法であれば自宅で工夫することでゴミの量は減らすことが可能だ。

寄付を通した地域型レストランのレシピダウンロード、Family Meal

この度、レシピ公開を通してニューヨークのローカルなスモールビジネスである飲食店を支援するプログラムとして、“Family Meal” が誕生した。このウェブサイトでは、掲載されている飲食店へ寄付をすることで、レシピをダウンロードすることができる。寄付額は利用者で決定でき、その金額は100%お店と従業員に届く。レシピとしてだけでなく、アートとしても目にも楽しいイラストレーションやグラフィックは、この支援プログラムに賛同したアーティストたちによるボランティアで実現した。

FamilyMeal_TheHiHiRoom_CincinnatiChili

レストラン:Hi Hi Room(HP
アーティスト:Lauren Martin(HP

FamilyMeal_Kikis_Cheesecake

レストラン:Kiki’s(インスタグラム
アーティスト:Jill Senft(HP

FamilyMeal_FiveLeaves_MisoButtermilk

レストラン:Five Leaves(HP
アーティスト:Jay Cover(HP

FamilyMeal_Gohan-ya_AvocadoChickpeaSpringRolls

レストラン:Gohan-Ya(HP
アーティスト:Joey Yu(インスタグラム

レシピを公開しているのは、どれも独特のパーソナリティがあり、市民だけでなく観光客からも愛されているニューヨークの飲食店。しかしながら、彼らのビジネスとしての規模は非常に小さい。家賃が高騰し続けてきたニューヨークでは現在、店舗の賃料滞納が事実上許されているが、あくまで支払いを先送りしているだけであり免除ではない。まだ見通しの立たない本格的な営業再開を待ち、現状をしのいでいけるかどうかは不透明だ。「またいつか本物の味を食べたい」「営業再開したら是非足を運びたい」と思ってもらえても、特にスモールビジネスに関してはその頃までお店が残っていけるかどうかわからない。

飲食店が「営業しないでいてくれている」ことを考える

私たちが感染拡大の阻止と少しでも早い収束を願って、外出を避けて#stayhomeしているのと同じように、飲食店も「営業しないでくれている」。これは言わば外食ビジネスとしての#stayhomeの形である。

Family Mealのような寄付が前提であるウェブサイトは、この困難の時に個々のお店が置かれている状況と、地域型スモールビジネスと私たちのつながりの作り方について考えるきっかけをくれる。

Our restaurants have always been there for us. Let’s be there for them, so they can still be here when this is all over. 
(私たちのレストランは、いつも私たちのためにそばにいてくれた。今度は私たちが、彼らに寄り添おう。そうすることで、いつかこの困難が終わった時に、彼らがそこに存在できるように。)(引用

昨今はレシピや動画公開を無料で行っている飲食店も多いが、必ずしもどこもそれだけの体力があるとは限らないことを気づかされる。デリバリーやテイクアウトでの利益がなかなか確保できず、家賃の支払いは続く中、お店の財産とも言えるレシピを公開することは、苦肉の策でもある。その彼らが経営に苦しんでいる中、レシピを通してお店のことを思いながら、家でその味を楽しませてもらえるお返しとして寄付をするのは、助け合いの形なのだ。

まとめ

コロナウイルスは生産にもビジネスにも大きな影響を与え、需要と供給のバランスの崩れは大きくなる一方である。その状況下、「無料」や「お買い得」といった言葉が出回りがちであるが、タダや値引きを提供できないお店もある。市民の間で経済格差があるように、ビジネスにも経済的な立ち位置には違いがある。

彼らが「営業しないでいてくれている」ことへの感謝として、そして特にスモールビジネスと個人のつながり方や助け合いとして、私たちが直接、可能な限りできることとは何かを、Family Mealのようなサービスを通して見つめ直したい。

【参照サイト】Family Meal
全ての画像提供:Family Meal

#ShareTheLightSideに関する記事の一覧

FacebookTwitter