いま、世界では大量生産・大量消費型の経済システムに代わる持続可能なシステムとして「シェアリングエコノミー」という考え方が脚光を浴びている。人々がモノをシェア(共有)することで無駄な生産や消費を少なくし、環境に優しい形でなおかつ経済を拡大させていくという仕組みだ。その代表的な例としてカーシェアリングのUberや民泊のAirbnbなどが挙げられる。
カナダのトロントでは、このシェアリングエコノミーの成功事例として、「本」ではなくいろんな「モノ」を貸し借りできる「Library of Things(モノの図書館)」という概念に基づき、ユニークな取り組みが進んでいる。2015年に設立されたカナダで初となるSharing Depotがそれであるが、その後、Sharing Depotは1年を待たずに2016年には2店舗目をオープンし、話題になっている。
このユニークな事業を展開するのは、カナダのオンタリオ州にあるDIY用の工具を貸し出すTronto Tool libraryだ。このTronto Tool libraryは、工具、ワークショップ、コミュニティイベントなどをシェア(共有)する新たな空間を提供しており、オンタリオ州ではパイオニア的な存在として知られている。
Sharing Depotでは、スポーツ用品、ボードゲーム、キャンプ用品、子供用おもちゃ、パーティ用品などを年会費50〜100カナダドルで貸し出しており、その中でも人気用品として常に品薄なのは、短期間だけ必要となるテントや寝袋などのキャンピング用品と、年齢ごとに不使用になりかさばる子供用おもちゃだという。これら全ての用品は寄付されたもので賄っている。
現時点でのSharing Depotの運営方法は、事業の約30~40%にあたる部分を政府からの助成金で賄っている。しかし、メンバーシップや青少年プログラム、ワークショップなどをできるだけ低価格で実現し、より多くの人に利用してもらうために、さらなる助成金の獲得を目指しているとのことだ。最終的には1年~4年以内にプロジェクトに関わる団体スタッフを100%直接雇用することを目標としているという。
Sharing Depotは会員のみが利用できるメンバーシップモデルを取り入れているが、そのメリットとして、きちんと返却をしてもらうという盗難を防ぐ面もあるが、それよりも人々がこのプロジェクトに参加し、その一員であるという気持ちでサービスを利用してもらいたいという組織側からの思いもある。
このプロジェクトを立ち上げた背景として、単に用品を借りれる場所というだけではなく、シェアリングエコノミーにより地球の将来を守っていきたいという使命があり、その思いをメンバーとともに広げていきたいと考えているからだ。
Sharing Depotのような施設があれば、利用者は無駄な買い物を減らすことができ、なおかつ自宅スペースの確保も可能になる。また、地域密着型のプロジェクトなので、地域住民同士の交流も生まれ地域の活性化へと繋がる。そして地球にも優しく、まさによいこと尽くめだ。
AirbnbやUberとは異なり、Sharing Depotが実現しているのはあくまで地域に限定された「小さな」シェアリングエコノミーだが、同様の取り組みが世界中のコミュニティに広まれば、それは社会を変える大きなインパクトとなり、私たちの暮らしはより持続可能でより豊かなものになる。
【参照サイト】Sharing Depot