傘のシェアリングサービス「アイカサ」が目指す、幸せな循環型社会

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急な雨が降ってきた。家に何本も傘があるのにこういう時に限って持ってきておらず、どこかで買うのももったいない。そのまま移動してびしょ濡れになるか、1本500円もするビニール傘を買うか。どちらも喜ばしい選択肢ではない。

こういったジレンマは、誰しもが経験するのではないか。日本洋傘振興協議会の推定によると、日本の傘の年間消費量は約1億3,000万本。そのうちビニール傘は6割を占めているというが、「いくらでも代わりはある」という認識からか、簡単に忘れられたり、まだ使えるのに廃棄されたりする光景を見かける。

もういっそ必要なときにだけ都合よく傘を利用できたらいいのに。そんな思いが、新世代のシェアリングサービスとなって2017年10月に東京、渋谷で開花した。

街を歩く人を幸せにする傘のシェア「アイカサ」

アイカサのロゴ

アイカサ(iKasa)」は、ビニール傘を好きなタイミングで借り、必要がなくなれば返却できるシェアリングサービスだ。渋谷の提携店舗にQRコード付きのビニール傘を用意し、必要な人が安価で借りていく。渋谷付近に勤める社会人や学生を中心に広がりを見せる、画期的な取り組みである。

本記事では、アイカサの創立者である丸川照司(まるかわしょうじ)氏に話を聞きながら、サービス創立の背景や魅力、シェアリングエコノミーへの可能性などにせまっていこう。

丸川照司氏

代表:丸川照司氏

Q: アイカサ創立のきっかけは何ですか?

きっかけは、私自身が一番傘を手軽に借りられるサービスが欲しいと思っていたことです。近年のシェアリングブームにも関わらず、誰も傘のシェアをしようとはしませんでした。望んでいたサービスを誰も作らないなら、自分で挑戦しようと思い立ったのです。

また、私は「モノを所有するよりも共有した方が楽で経済的」という考えを持っていました。たとえば自転車の空気入れ、工具、車などは、都市においては一家に一つなくても困らない。使用頻度が低いモノは、シェアした方がみんながハッピーになる、そう小さいころから思っていました。

おばあちゃんの家が隣にあり、よくミシンや空気入れ、食器、食材なども借りていました。そういった習慣と、もったいない精神が今の自分にも通じていたのかもしれません。

Q: 傘のシェアリングを通して利用者が感じるメリットとは?

1つ目は、天気予報に関わらず安心して街に出られること。午後からの天気が怪しくても、天気予報を見なくても、天気予報が外れても街にアイカサがあることによって傘を借りられるため、急な雨でも濡れなくて済みます。

2つ目は、荷物になりがちな傘を持ち歩かなくていいことです。雨が降っていないときは手ぶらで過ごし、降り始めるときだけ傘を利用し、雨が止んだら再びどこかの店舗に返す。不要な傘を買う必要がなく、手ぶらで家まで帰ることができるので便利です。

10分間で1円。エコで低価格なサービス作り

アイカサ立ち上げ画面

アイカサ利用の流れはいたってシンプルだ。会員登録後、専用アプリをダウンロードし、アプリ上のマップでレンタルポイントである提携店舗を探す。店舗に置いてある傘を見つけたら、傘に付いているアイカサのQRコードをアプリでスキャンして利用開始だ。好きなだけ利用し、返却の際は傘立てのQRコードを再びスキャンすれば終了する。

iKasa

さらに、10分間で1円という価格設定のため、仮に3時間利用したとしても利用料金は18円で済む。個人や団体から必要のなくなった傘が寄付され、再利用される仕組みであるため、新たにビニール傘を購入するよりもよほど経済的であるし、廃棄も減らすことができる。

このようなサービスを待望していた人は、少なくないだろう。実際に丸川氏も、短時間の利用に便利だということや、荷物が減ること、ビニール傘の使い捨てにならないことなど、良い評判を得られているようだ。

傘のシェアリングサービスで目指す社会とは

雨が降ったらすぐに借りられ、ビニール傘を新しく買わなくて済むことで、結果的に廃棄を減らせるような仕組み。環境保護の観点においても、先進的なサービスに思える。そんなアイカサは、これから何を目指すのだろうか。

渋谷にたたずむ アイカサ創立者の丸山さん

Q: 渋谷以外にも傘のレンタルスポットは広げていきますか?

渋谷を中心として原宿、恵比寿、表参道などにも拡大する予定です。ほかにも、協力的な地域があればどんどん広げていきたいと思っています。

Q: 他にも展開予定のサービスがあれば教えてください。

今後、サービスを利用するほど貯まる「アイカサポイント」も導入予定です。アイカサのレンタルスポットになっていただいている提携店舗で使えるような仕組みや、アイカサの利用料として使えるような仕組みを考えています。

他にも、こちらはまだ先の話にはなりますが、観光地に合わせた和傘のレンタルなど、オファーがあればアイカサのシステムを活かして地域を盛り上げたいと思っています。

Q: 最後に、アイカサの目指すものは?メッセージをお願いします。

私たちは、本気で傘の時代を変えようとしています。傘はシェアした方が便利で、環境的にもより持続性があります。

それが結果的に傘1本あたりの寿命も大幅に伸ばし、ビニール傘の無駄な生産量も、廃棄量も減らせる。本来あるべき傘のあり方に限りなく近づらけれるのです。

東京では一度雨が降ると約20万本近くの傘が売れるとの試算があり、コンビニでも常に傘の在庫が切れないように数多く準備されています。アイカサは、現時点ではまだ新しい「傘を共有する」概念を作り、生活のインフラとなることを目指します。

そして、15年ほど後には「昔って、雨が降ったらビニール傘をみんな買っていたらしいよ。」という雑談が聞こえたらとても嬉しいです。

利用者の幸せが循環型社会を作る

世はシェアリングエコノミーブームだ。コーヒーカップやスクーター、ひいては電力など、IDEAS FOR GOODでも社会をもっとよくするシェアリングエコノミーサービス10選で取り上げているように、あらゆるものがシェアされ、必要な人に届く仕組み作りが進められている。

利用者ができるだけ簡単に、メリットを感じながら、継続して使えるサービスはいつでも需要がある。丸川氏の言葉を受けて、そんな印象を抱いた。なにも利用すると環境に良いから、という始まりでなくていい。ただ困ったときに安く便利に利用できるのなら、誰でも気軽に使い始められそうである。

雨が降ったときに傘を持っていなければ、買わずに借りに行く。使わないビニール傘があれば、次の誰かのために寄付もする。そんな自分の生活を豊かにする行動が循環型社会への貢献につながるのなら、これほど嬉しいことはない。

【紹介サービス】アイカサ
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(※写真提供:アイカサより)

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