アマゾンにある“音のない公園”。先住民とともに静寂を守る

Browse By

毎日、どこかで音が鳴っている。目覚まし時計やスマートフォンの通知音、近くを通る車の音……静けさは、私たちの生活からほとんど消えてしまった。耳を休める場所すら見つからない時代に、ほんのひとときでも「音のない環境」に身を置くことが、心や体にどれほどの影響を与えるのだろうか。アマゾン奥地に、そんな体験を約束してくれる静寂の地がある。

南米エクアドルのザバロ川流域は、自然の静けさが今なお保たれている数少ない場所の一つだ。2019年4月14日、この地が世界初の「Wilderness Quiet Park(世界初のウィルダネス・クワイエット・パーク)」に認定された(※1)。認定を行ったのは、自然の静寂を守る活動を続ける団体・Quiet Parks International。人工的な音が一切届かない環境が維持され、静けさそのものを「守るべき資源」として捉えるという新しい発想のもとで保護地の選定・認定を行っている。


この取り組みの中心には、先住民族であるコファン族の存在がある(※2)。彼らは代々この森と共に暮らし、その知恵と文化を大切に守り続けてきた。ザバロ川周辺の静けさを守ることは、単に音を排除する行為ではなく、そこに息づく多様な生態系やコファン族の暮らしそのものを保全することでもある。

コファン族が主催するツアーでは、野生動物を観察し、アマゾン熱帯雨林を探検するほか、ザバロ村で古代のコファン文化を学ぶこともできるという。こうした体験は、自然に囲まれた真の静寂の中で行われる。訪問者はその静けさを体感すると同時に、コファン族の保護活動を直接支援することにもつながるのだ。

「静けさを守る」という視点は、自然保護の取り組みの中ではまだそれほど広く知られているとは言えない。しかし、自然の中にある微細な音や静寂そのものに目を向けることは、自然とのより深い関係を築く上で欠かせない視点の一つだろう。騒音によるストレスや不眠が問題視される今(※3)、微かな自然音に耳を澄ませるような静けさこそが、現代の私たちにとって必要な時間となっているのではないか。

ザバロ川のような静寂に触れたとき、あなたは何を感じるだろう。自然と共鳴するその体験は、きっと心に深く残るものになるはずだ。

※1 Zabalo River Quiet Parks International
※2 The Cofan People Cofan Survival Fund
※3 Noise and mental health: evidence, mechanisms, and consequences Journal of Exposure Science & Environmental Epidemiology

【参照サイト】Wilderness Quiet parks
【参照サイト】The World’s First ‘Wilderness Quiet Park’ Is A Peaceful Oasis Of Calm Deep In The Amazon Jungle
【参照サイト】Cofan Survival Fund 
【関連記事】今や静寂は希少?米国NPOが、自然の音だけが聞こえる「静かな場所」を守る

Edited by Megumi

FacebookX