「禁じられた恋」というのは、古今東西いつの時代も、私たちの関心を引き続けてきたテーマだ。中世ヨーロッパでは、トロバトゥール(吟遊詩人)たちが身分高い貴婦人への叶わぬ愛を歌い、日本では、もう戻ってはこない恋人への思慕を和歌にのせ詠みあげた。敵同士である両家の間に生まれた愛の悲劇「ロミオとジュリエット」は、世界が認めるシェイクスピアの名作だ。
文学や詩といった芸術作品に形を変えてしまえば、人々の哀愁を誘う美しい主題ではあるけれども、そもそもなぜ「禁じられた」恋という概念が存在するのか、あなたは考えたことはあるだろうか。誰によって、なぜ、何を根拠として、禁止されなければならないのか?人はみんな平等で自由な存在であるはずなのに、どうしてある一定の愛の形だけが認められ、それ以外のものは排除されるのだろう?
スウェーデンのスポーツブランド「ビョルン・ボルグ」は、この問いに真っ向から向き合った画期的なサービスを開始した。なんと、国の法律や宗教、性別に関係なく、誰もが“結婚”できてしまうブロックチェーンプラットフォーム、その名も「解禁された結婚(MARRIAGE UNBLOCKED)」だ。
「世界の87%の国々では、同性同士の結婚は禁止されています。愛する人と一緒に生きる権利というのは、私たちみんなのベーシック・ニーズであるべきなのに。この現状を変えたいと思いました」同社は、キャンペーンページでこのように語っている。
プラットフォームの使い方は簡単。ウェブページを開いて、プロポーズしたい相手に愛の告白メッセージを入力する。すると専用URLが発行されるので、これをコピーして愛する相手に送るだけでいい。これを開いた相手が、プロポーズを“受ける”ことを選択し、誓いの言葉を返せば、めでたく“婚約成立”だ。
このプラットフォームの一番の特徴は、“婚姻記録”が、ブロックチェーン技術を介し、瞬時に全世界に共有されるということだ。
ブロックチェーン・ネットワークには、政府や銀行といった中央機関が存在しない。世界中の誰もに平等な閲覧権限があり、第三者が情報を書き換え・改ざんすることはほぼ100%不可能だと言われている。
さらに、一度送信された情報は、半永久的にネットワーク上に残ることになる。だからこそ、国のお役所や教会の“許可”を得る必要もなく、婚姻届に詳細な個人情報を記入するのもパスして、愛する人と“結婚”ができてしまうのだ。
このプラットフォームを通して生まれた夫婦第一号である、スイス在住の同性カップルの2人は、次のように語った。
「ブロックチェーン上の結婚だけでは、私たちは“法的に”夫婦になることはできないし、平等な権利を享受することもできないけれど、2人の関係を認めてもらえる、ということがもたらす安心感は絶大です。私たちにとって、かけがえのない、大きな一歩です」
また、サービス対象はなにも同性カップルに限らない。ひとりひとりが愛する人と一緒に生きる権利がある、と信じる人なら誰でも、気軽に利用できるのが面白いところだ。
世界の金融のあり方をガラリと変えた革命技術は、いまや、愛や結婚・家族といった、これまで「不可侵」であった社会概念までも揺り動かそうとしている。従来の結婚という枠にはまらない、自由な恋愛の形やパートナーシップのありかたが模索されている現代の風潮を、ブロックチェーン技術は、さらに後押ししてくれるだろう。ビョルン・ボルグ社の勇気ある取り組みに、心からの賞賛と拍手を送りたい。
【参照サイト】Marriage Unblocked
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