南太平洋に浮かぶ島国、サモア。そこは自然があふれる楽園だ。ニュージーランドから2,300km、ハワイからも3,700km離れたこの孤島の電力は、これまで他国から輸入したディーゼル燃料で空気を汚しながら発電することで賄われてきた。
しかし、化石燃料に依存した発電は、気候変動に伴う海水面上昇や自然災害となって自らの身に跳ね返ってくる。そこで、サモアは化石燃料による発電を廃止し、島全体の電力を7年以内に100%再生可能エネルギーで賄う計画を進めている。
昨年、サモアの地元電力会社は米国のテスラと協働し、2つの蓄電システムとサモアの電力供給全体を制御できるソフトウェアシステムを導入した。
気候変動の影響を受けやすいサモアは、化石燃料からの脱却を目指して大規模な太陽光発電所や風力発電所、水力発電所など再生可能エネルギーの使用へ大きく舵を進めてきたが、再生可能エネルギーの割合が増大するにつれ、電力供給網の信頼性が低下するというジレンマも発生していた。
風力発電と太陽光発電が電力供給網のピーク需要の20%以上を供給する場合、供給源が一定でないため電力供給網が不安定になる可能性があり、最悪の場合は停電が発生していたのだ。そのため、これまでは依然としてディーゼル発電に依存せざるを得ない状況だった。
この問題を解決したのが、今回導入されたテスラのシステムだ。フィアガ発電所とファレオロ国際空港に設置された2つのテスラの蓄電システム「パワーパック」は13.6MWhの蓄電が可能だ。
そして、この蓄電システムとサモアにある全ての太陽光発電所や風力発電所、水力発電所らをリアルタイムで統合コンピュータ制御できるソフトウェアを実装することで、島の停電がなくなり、電力供給も安定してディーゼル発電の使用を減らすことに成功した。
テスラのCTOを務めるJB Straubel氏は、Fast Companyに対して「大きな雲が太陽を遮り日光が低下した場合、バッテリーを制御してその差を穴埋めし、すぐに発電機を始動する必要はありません。今後は発電機が全く必要なくなるかもしれない」と述べている。
また、この事業のプロジェクトマネージャーを務めるFonoti Perelini S. Perelini氏は「安定性は達成されたが、コスト低減の努力は続けられている。ディーゼル発電の使用を減らし、再生可能エネルギーが充足したら、ディーゼル発電は廃止したいと考えている。」と語る。
今年の夏は日本でも異常な暑さが観測されており、気候変動は他人ごとではない。東日本大震災で、福島原発が被災し事故を起こして以降、日本では化石燃料による発電が増加し時代と逆行する動きがあった。資源の輸入依存は、日本の経済や社会構造の慢性的な弱点でもある。島全体を100%再生可能エネルギーで賄うというサモアの取り組みは、日本にとってもよい手本となるものだ。
【参照記事】The island of Samoa is going 100% renewable–with Tesla’s help
【参照記事】Tesla Powerpacks Push Samoa Towards 100% Renewable Energy