チョコを食べて、医療従事者に感謝を届ける。京都のカカオブランド「Dari K」のペイフォワード

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新型コロナウィルスの感染拡大により、多くの店舗が臨時休業を強いられ、発注のキャンセルが相次ぎ、たくさんの在庫が行き場を失っている。

京都にあるインドネシア産カカオのチョコレート専門店「Dari K(ダリケー)」も、コロナの影響で在庫過多に陥っていた事業者の一つだ。桜が咲き誇る春の京都は、紅葉の秋よりも多くの観光客が訪れる絶好の繁忙シーズン。

普段であれば、国内外から溢れんばかりに訪れる観光客のために、いつも以上にチョコレートの製造を増やし、準備をしている時期だ。その矢先で新型コロナ蔓延により観光客は激減し、Dari Kも直営店舗の⼀部を閉鎖せざるを得ず、在庫過多の問題がより一層深刻となっていた。

また、問題は自社だけに留まらない。製造・販売が止まれば、新たに原材料を購入して商品を作ることができず、サプライチェーンの上流にいるカカオ農家の収入にも大きな影響が生まれ、負のスパイラルが巻き起こっていく。Dari Kは、この悪循環を「ペイフォワード(恩送り)」の仕組みによって好循環に転換し、在庫の問題を解決するだけではなく、恩送りの輪をどんどんと広げている。

IDEAS FOR GOOD編集部では、カカオを通じて世界を変えるという理念の元、All-Winの輪を広げ続けているDari K広報を務める河村翔さんと上坂桃さんに今回の取り組みについてお話を伺った。

Dari Kのぺイフォワード~あなたの優しさを医療従事者に~
①消費者がDari Kの商品を購入 ②消費者が購入されたのと同じ金額のチョコレートを医療従事者にDari Kが寄付③ インドネシア農家からカカオ豆の調達が継続ができる

真のフェアトレードが実現する「Tree to Bar」

Dari Kは、奇しくも東日本大震災と同日の2011年3月11日、京都で創業した企業だ。「カカオを通じて世界を変える」という企業ビジョンのもと、インドネシア・スラウェシ等のカカオ豆に着目し、フェアトレードを通じてチョコレート市場のあり方を変革してきた。

フェアトレードと言っても、ただ単に低品質なカカオ豆を高価格で買い取るのではなく、自社が求める発酵させた高品質なカカオ豆とはどういうものなのかを農家に共有し、技術を教えた上で、品質が上がったカカオ豆だけを付加価値をつけて買い取るという仕組みにすることで、カカオ農家の「頑張って質の高いカカオを生産すれば所得が上がる」というモチベーションを生み出した。「かわいそうだから与えるフェアトレード」ではなく、「生産者自らが勝ち取るフェアトレード」を実現させたのだ。

この仕組みは、インドネシア農家に対して高品質なカカオの栽培技術の修得と所得の向上をもたらすだけではなく、Dari Kにとっても高品質なカカオ豆の確保を達成でき、消費者は本当に質のいいものへの対価を払うことができるという、三者全員が幸せになるトリプルWinをもたらした。

このように「真のフェアトレード」のパイオニアとして契約農家と一緒にカカオ豆の栽培・発酵から協働し、仕入れ・焙煎・製造・販売までをトータルで手掛けているDari Kのチョコレートは、昨今メジャーになってきたカカオ豆の焙煎からチョコレートをつくる「Bean to Bar」を超えて、「Tree to Bar」と呼ばれている。

インドネシア現地のカカオ農家リーダーたち

新たなwin-winの関係を築く挑戦

そんな「win-win-win」の関係を築くことに注力してきた同社が、このコロナ禍において、なんとか自らの課題を解消しつつも関わる人たちが持続的に幸せになれる仕組みをつくりたいという思いのもと4月20日から新たにスタートしたのが、今回の「ペイフォワード~あなたの優しさを医療従事者に~」プロジェクトだ。

このプロジェクトは、消費者がDari Kの商品を購入すると、消費者が購入したのと同額のチョコレートが医療従事者に届けられるという仕組みだ。

消費者は、自分自身はチョコレートを楽しみながら、医療従事者の方々に感謝の意とともにチョコレートを贈ることができる。また、これによりDari Kが契約するインドネシアのカカオ農家の人々の生計も守ることができるという好循環が生まれる。消費者、医療従事者、カカオ農家、そしてDari Kの4者に恩恵がある「win-win-win-win」な取り組みなのだ。

想定の倍以上を超える大反響。広がる恩送りの輪

ペイフォワード第1弾では、想定をはるかに超えてトータル10,800枚ものチョコレートを医療従事者の方に届けられる結果となった。第2弾の商品販売も終了、現在は第3弾の母の日等にもプレゼントできるギフト用のセットと第4弾のセットの販売が進行中だ。5⽉8⽇時点で第1弾の分も含めてトータル35,000枚を医療従事者の⽅に届けられることが確定している。

第3弾 母の日にもプレゼントできるギフトセット

Dari Kの広報を務める河村さんは、「当初の想定は500セットだったが、その倍を超える1700セットの販売数になっている」と嬉しい悲鳴をもらす。「ギフトで親や友人に送る方も多く、ギフトを受け取った方がまた友人にギフトとして送ったり、ペイフォワードでチョコをもらった医療従事者の方が別の医療機関で働く医療従事者の方に届けるために注文したりして下さっています。また、自分のチョコはいらないから全て贈って欲しいというお声もいただき、急遽全てを贈るギフトプランも用意しました。」

ペイフォワードの仕組みによって生まれた恩送りの輪がどんどん大きくなりながら循環していった結果、想定の倍以上を超える大反響となっているのだ。

現在進行形で進化し続けるDari Kのペイフォワード

想定以上の反響に応えるべく、Dari Kでは現在進行形でこのペイフォワードのプロジェクトを進化させ続けている。当初は京都の医療機関のみに届ける予定だったが、全国から賛同の声と注文が入っていることを受けて、第2弾以降は全国の医療機関に配布することを決定した。

どこにどれだけのニーズがあるかをきちんと把握し、受取先となる医療機関を決定していくことがこのプロジェクトの難しいところだが、Dari kは、京都では京都市と、そして全国への展開は医療現場で働く人々がメンバーの多くを占める「医療従事者の心と命を守るNPO法人 まもるをまもる」と協業することで、ニーズがあるところにチョコレートを確実に届ける仕組みづくりを丁寧に進めている。

実際に直接病院に届けにいった河村さんは、「直接お届けにいくことはご迷惑ではないかなと思いながら届けにいったところ、皆さん本当にお忙しいはずなのにとても温かく対応して下さり、直接喜びの声をいただくことができ、このプロジェクトを始めてよかったと思いました。」と語る。

第1弾でお届けした医療機関の方からも続々とお礼が届いているそうだ。その声がさらなるペイフォワードの輪を広げたいという想いを一層強くさせ、プロジェクトの開始からこの短期間ですごい速さで取り組みがパワーアップし続けている。

病院の方々へチョコレートをお届けした際の様子(Dari K本店の前にて、出発時に撮影したもの)

恩送りの輪は、チョコレートを届ける配達員にまで

さらに驚くべきは、現在販売されている第4弾だ。第4弾では、日頃荷物を届けてくれる配達員の方々にも感謝を伝えられるよう、「よろしければ、こちらのチョコレートを日頃宅配してくださっている配達員の方にお渡しください」というメモ書きと一緒に、配達員へのプレゼント用のチョコが1枚同封されてくるのだ。

外出自粛により実店舗の多くが休業するなか、Dari Kも含めて世の中では通販の売上が伸びている。そのため、配送業者の人は普段以上に忙しく、不特定多数の人に接するため感染リスクも高いなか、仕事を休めない状況に置かれている。

Dari Kとしては、医療従事者の方に届けたのと同様に、配達業者に直接チョコレートを納品し、プレゼントすることも可能だったが、できればお客様がいつも接している宅配業者の人に直接恩を繋いでもらえたら、もっとペイフォワードの輪の広がりが生まれるのではないか、という配慮から、このような取り組みに進化した。

配達員の方へのプレゼント用チョコ。メモが一緒についてくる。

共感して買い物をする。アフターコロナの消費行動

今後の展望について河村さんに尋ねると、「普通の生活に戻ったときに、消費のあり方や消費行動自体が変わっていて欲しい。より共感して買い物をする、他の人のことを想いながら買い物をする。想いをしっかりもって活動している会社にスポットライトが当たり、そういう商品が売れる社会になっていって欲しいなと思います。」と返してくれた。

このコロナの状況下、いたるところで生まれている、モヤモヤとした「想い」。例えば、医療従事者に何かしたいけれども何もできない消費者のモヤモヤ、緊張下のなかで働き続けている医療従事者のモヤモヤ、自分のビジネスも何とかしないといけない事業者のモヤモヤ、生計を守れるかが不安な生産者のモヤモヤ。こうした様々なモヤモヤな「想い」に寄り添い、そのモヤモヤを解消できる選択肢を提示し、想いを繋げたことによって、想定以上の「共感」を得て、今回のペイフォワードの取り組みが大反響となったのだ。

このコロナをきっかけに、感情や共感という気持ちの部分にフォーカスをあてた共感経済が加速して進んでいくのではないか。今回のDari Kの事例は確かにそう思わせてくれた。

カカオを通して世界を変える。枠を超えた新たなる挑戦

これまで京都のチョコレート専門店としてブランドを確立してきたDari Kだが、リブランディングを担当する広報の上坂さんは「“カカオを通して世界を変える”というビジョンに立ち返り、”カカオに関わる人全ての幸せ”を目指して、チョコレート専門店の枠をこえて新しいカカオの可能性を広げていく挑戦を始めています。」と話す。

「カカオにとどまらず、前向きに挑戦している方々の応援をしていきたい。だからこそ、Dari Kがまず先陣を切って挑戦していく企業になれるように、当たり前に甘んじることなく『何が本質的によいのか』を見定めながら進んでいきたい。今回のこのペイフォワードの取り組みも、在庫や売上⾯で同じ状況下にある事業者の方がいれば、ぜひ一緒にコラボしていきたいです。」

これまでも、お互いの活動に共感している仲間と協働し、関わる人が幸せになれる仕組みづくりを考えながら取り組み続けてきたDari Kは、ポストコロナの時代において必要とされる未来像を提示している。

取材後記

取材を通じて、想いに着目して繊細に想いを感じる柔らかい感性と、本当に大事にしたいものをぶらさずに持ち続け、行動していく芯の強さを持ち合わせていることがとても印象的だった。関わる人たちの持続的な幸せを深く考え続け、より本質的にいい選択をしようと試行錯誤する在り方。自分たちも循環の輪の一部であるという意識を強く持ち、だからこそどんな状況下でもその輪が続いていけるように、さらなる新たな循環の仕組みをつくり、止まることなく進み続ける。

そんなDari K だからこそ、多くの共感を集め、思いもよらぬところまで循環の輪が広がっていったのだろう。改めて「想いへの共感」がこれからの消費行動のキーワードになり、想いを持って商品をつくっている企業こそが輝く時代になってきたと感じられた。

【参照サイト】Dari K公式サイト