【レポート】IDEAS編集部全員が1か月挑んだ「おうちdeゼロウェイスト」

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5月30日は「530(ごみゼロ)」の日。普段何気なく出しているごみに目を向け、いかに減らせるか、何か他の形で使えないかを考えてみる時だ。IDEAS FOR GOODは毎日ソーシャルグッド(=社会をもっとよくすること)をテーマにさまざまな記事を掲載しており、これまでも例えば環境保全の活動をする多くの人を取材してきたが、私たち自身は普段どれくらいのごみを出しているのだろう。

ソーシャルグッドに取り組むメディア、そして会社として、530の日に向けて進めていたプロジェクトがある。当メディアを運営するハーチ株式会社の全スタッフが、新型コロナで外出自粛中の4月から5月にかけて自宅でのごみ削減に取り組む「おうちdeゼロウェイストチャレンジ」である。

本記事では1か月のチャレンジで得られた学びを正直に書いていきたい。

リモート勤務中のゼロウェイストとは?

ハーチのおうちでゼロウェイスト
ハーチでは、2019年12月から「オフィスで出る1か月の燃えるごみの重量を1kgに収める(=1スタッフ卵約1個分)」という目標を持ち、社内プロジェクトとしてゼロウェイストチャレンジを行っている。

新型コロナウイルス感染症が広がり始めてからは、全スタッフがリモート勤務に。オフィスのごみは実質ゼロになったわけだが、暮らしの中で出るごみに目を向け、4月20日から5月20日の1か月間を「おうちdeゼロウェイストチャレンジ」期間として、リモート勤務中の家庭ごみ削減への協力を呼びかけた。

社内のチャットツールを使い、ハーチで働く20名のスタッフを対象に1週間ごと、全4回のアンケートを取り、家庭ごみ削減に向けた進捗を確認。毎週できたことや難しかったことを書いてもらう。また、スタッフ全員が無理なく続けられるごみの測定方法として、それぞれの家で使用しているごみ袋の大きさや、捨てる数ベース(自己申告)で増減もカウントした。

さらに、自宅ですぐにできるゼロウェイストのヒントをGoogleスプレッドシートでまとめ、スタッフ同士でも自身の取り組みや工夫、やってみて気づいたことを共有しあえるようにした。

スプレッドシートの一部

スプレッドシートの一部

最終週となる4週目には、ゼロウェイストを専門に活動するイニシアチブ530weekとの共同オンラインワークショップを実施。「安全で快適に食品のプラ包装を減らすには?」「一緒に住んでいるパートナーにどうやって理解してもらう?」など、日頃のごみ削減に関する課題やモヤモヤを共有し、解決のためのアイデアを互いに話し合った。ワークショップのレポート記事はこちら

新型コロナの報道が落ち着いてきた中、チャレンジ最終日の5月20日を迎えたハーチ。はたしてごみは減ったのか。このチャレンジで何を達成し、何ができなかったのだろうか。

チャレンジの結果と出てきた課題

チャレンジ開始日と同じ人物20名を対象に、1週間で出しているごみ袋のリットル数と捨てた数を聞いた。4月20日と、5月20日実施時のハーチスタッフのごみの量は以下の通りである。

ハーチのおうちでゼロウェイスト

1人が1日に出すごみ袋の数が、0.3コから0.21コに減ったといったところだろうか。劇的な変化といえるのかは不明だが、チャレンジ開始時と比べると、普段出す家庭ごみの量は38%削減されており、実行スタッフの予想を上回った。ただこの測り方では、人によってはごみ袋がいっぱいにならないうちに捨てている可能性があること、特に袋の中身が腐りやすく臭う夏には不向きであることがわかった。

アンケート実施中には、毎回「今週、ごみ削減に取り組む中で難しかったこと」を聞き、最終日の5月20日には「どうしても変えられなかったことや、解決が難しいと思った課題」を聞いた。以下、スタッフの回答の一部を掲載する。

  • 買い物をするとき、食品のプラスチック容器やテイクアウト容器のごみが気になる
  • 親からの仕送りに大量のプラスチック包装が涙
  • 外食も外出も控えているため家族の1日3食分の食材すべてをネットや生協で注文。梱包材は自ずと増える
  • 消耗品を買う際の抜本的な改革は特にできていません。ラップの代用品やエコな洗剤などおすすめ商品が一覧でわかるといいかもしれません
  • 分別についてパートナーの理解を得られているかが不明。お互いに生活習慣が染みついているので、ごみを減らすアクションが難しい
  • 引っ越しなど生活を見直すタイミングだと、どうあがいてもゴミが大量に出てしまう
  • 何かを変えてもそれが環境に優しいかどうかまでを考慮することが難しい

特に多かったのは、新型コロナの影響でテイクアウトやネットショッピングの需要が増えた結果、その包装が使い捨てプラであることが困った、という声。また、家族やパートナーの理解を得ることの難しさや、行動の一つひとつが本当にエコかどうかを実証する術がないという声もあがっている。

全体の数字をみるとごみは明らかに減っているが、生活のすべてを自分でコントロールできない中でのゼロウェイストは簡単ではないと、改めて思わされた結果だった。

ゼロウェイストに向けた5つのヒント

一方で、チャレンジ実施中に思わぬグッドアイデアも社内でたくさん生まれた。ここでは、普段の生活でのごみを減らすための5つの考え方を、スタッフのコメント付きでご紹介する。

01. 家にあるものでできないか?を考える

新しい食材や洋服、道具などが必要になったとき、すぐにそれを購入するのではなく、まずは家の中を見回してみる。エコグッズも、買い替えのタイミングでなければわざわざ買う必要はない。代用ができそうなものがあれば使い、本当に必要なものだけを買う習慣をつけることで、無駄は大きく減る。

  • スーパーでまとめ買いをやめた。毎回、使う分だけ買うようにした
  • 洗面台の掃除をティッシュではなく、使っていなかった大量のハンカチ(雑巾に再利用)で拭いている。1度拭いたらそのまま洗濯籠にポイなので手間もない
02. 賞味期限よりも自分の感覚を信じる

生活に密接する食品ロスを減らすために大切なのは、何より「食べきる」ということ。賞味期限が過ぎたらすぐに捨てるのではなく、まずはよく食品の状態を見て、匂いを嗅いでみよう。

  • フードロス削減を意識したので、以前より食べ残しや賞味期限切れで捨てる量や機会が減った
  • 生野菜は残りそうだったらすべて野菜スープにして冷凍
03. お店の人とコミュニケーションする

買い物やテイクアウトをするとき、お店の人に「一つの容器にまとめてくれませんか?」や「マイ容器を持ってきてもいいですか?」と、試しに聞いてみる。お店側としても、毎回包装のために使っていたプラを使わなくて良いことがわかれば、コスト削減でWin-Winとなるかもしれない。ネットショッピングでも、注文する際に包装は要らないと連絡してみることもできる。

  • お店の人に今までマイ容器に入れてほしいと言ったことがなければ、試しに言ってみるのも手です。お店側はそんなこと気にしたことがなかったとしても、検討してくれるかもしれませんし、実はお互いにとって「嬉しいこと」だと気づく機会となるかもしれません(ハーチのブログ記事より)
  • お米屋さんにケースを持っていき量り売りをしてもらうと、そこでのコミュニケーションも楽しむことができる
04. 自分にとっての要らないもの=ごみ?

大掃除や引っ越しなど、自分の生活を見直すタイミングには、要らないものが多く出る。これを「誰かにとって必要なもの」だと捉えることは大切だ。リサイクルしたり、誰かにあげたり、フリマアプリを活用したりするのもいい。530weekとの共同ワークショップ中には、ハーチ社内で要らない服の交換会をしたい、という声もあがった。

  • 飾りつけやプレゼントの包装は使いまわしするようにしています
05. ゼロウェイストを楽しむ!

チャレンジの結果、ごみが減らなくても落ち込むことはない。今日は家族でこれをできた、という一つひとつのステップを楽しみながら踏んでいくことが継続の秘訣だ。誰かにごみ削減の大切さを伝えるときも、自分が楽しんでやっている姿を見せることで、ゼロウェイストの良さが伝わることもある。

  • 自分にとって優先度の低いことでごみを減らす取り組みをすると、我慢を強いられることが少ないので意外といけそうな気がします
  • 買わずに作るという選択肢。そしてその過程を楽しむことが大切

最後に

正直なところ、ごみを減らすことに毎日向き合い続けるのは、「おうちdeゼロウェイストチャレンジ」実行者である筆者自身にとってもエネルギーがいることだった。買い物をしていると、ちょっとした隙にカゴにレジ袋を入れられてしまうし、一緒に住むパートナーの理解と協力も欠かせない。何より、モチベーションを保ち続けることが、一番大変だったといっても過言ではない。

しかし、本チャレンジに取り組んだ20名のスタッフからは「環境についての話題全般に以前より目がとまるようになった」「できるだけ捨てない前提で生活する意識が身についた」「ごみが少ないと、シンプルに気持ちがいいと思った」などと、ポジティブなフィードバックを得ることができた。実際、アンケートではスタッフの多くが分別に気を付け、買い物をするときにごみのことを意識して買うようになったと回答し、ごみの総量も目に見える形で減っている。

これからさらにゼロウェイストを加速させるには、どうするべきか。また、一つの会社だけでなく、今回のチャレンジを通して得たメソッドを他の会社や団体にも適応し、社会全体からちょっとでもごみを減らすにはどうしたらいいのか。考えることは、再びオフィスで働くようになってからも多くある。

今回のチャレンジが、誰かにインスピレーションを与えられることを願う。やり方をコピーするのも大歓迎だ。社会をもっとよくするためには、一人でも多くの挑戦者が必要なのだから。自宅でもオフィスでも、コロナ禍の中でも、ゼロウェイストは今日から始められる。

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