信頼が鍵。ゼロウェイストの町、徳島県上勝町でマイプロジェクトを創出―E4Gレポート

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徳島県上勝町。「ゼロ・ウェイストの町」や「SDGs未来都市」として、IDEAS FOR GOODをはじめ、世界中のメディアから注目を集めている町だ。上勝町は2003年に全国で初めてゼロ・ウェイスト宣言をし、2020年までに上勝町のごみをゼロにするための取り組みを進めており、1,500名の人口の町に国内外から年間2,600名の視察者が訪れる。

そんな上勝町を旅する中で生まれたマイプロジェクトを宣言し、その後の歩みに生かしていく「ソーシャルイノベーションツアー」が2019年11月に開催された。ツアーには、目的をもって上勝町から学び、何らかの形で次のアクションにつなげることを志すイノベーター10名が参加した。主催は、ANAセールスJourney +合同会社パンゲア株式会社パソナJOB HUBだ。本記事では、ツアーの様子をレポートする。

「マイプロジェクト」を考えて旅の目的を明確に

はじめに、今回のツアーの仕掛け人の一人である株式会社パソナJOB HUBの加藤遼氏から、ツアーの目的や到達イメージが参加者に共有された。ツアーの目的は大きく分けて2点。「ソーシャルイノベーターから学ぶこと」と、「マイプロジェクトを考えること」だ。

加藤氏は「自ら問題を発見して課題を設定し、解決策のアイデアを出して、仲間を巻き込んで具体的なアクションにつなげたプロセスが大切」と話した。上勝町はこれまで、自ら課題を発見し、サステナブルなまちづくりに励んできた。現在進行形で進んでいる取り組みについて参加者が現地のイノベーターから直接学ぶ2日間が始まった。

加藤氏

株式会社パソナJOB HUBの加藤遼氏

続いて、ツアーの心構えを参加者同士でシェアする時間が設けられた。それぞれの自己紹介や参加目的をシェアするだけではなく、参加者に内省を促すように構成されており、「『学ぶ』と『身につける』の違いは何か」「『これだけはやってやる』という決意は何か」などの問いが、合同会社パンゲアの田中貴大氏から投げかけられ、参加者それぞれが持つツアーへの目的や価値観が共有された。

加藤氏と田中氏のセッションを通じて、目指すところを明確にし、全体でアウトプットをすることで、旅を旅で終わらせるのではなく、次のアクションにつなげていくことが参加者に促された。

ワークショップの様子

ワークショップの様子

DAY 1:上勝町の全体像と「SDGs未来都市計画」を知る

「誰かに会える場」日比ヶ谷ごみステーション

ツアーの目的が共有された後は早速、日比ヶ谷ごみステーションへ向かった。上勝町にはごみ収集車は走っておらず、基本的には町民が日比ヶ谷ごみステーションまでごみを持ち込む形式になっている。

多くの町民がごみステーションに足を運ぶことで、住民にとっては「誰かに会える場」として機能しているという。

日比ヶ谷ごみステーションついて説明する合同会社パンゲア・野々山聡氏

日比ヶ谷ごみステーションついて説明する合同会社パンゲア・野々山聡氏

さらに上勝町では、資源の分別が徹底されており、その数は全国で最多の45項目。リサイクルできる業者を見つけるたびに、分別数が増えていった。「なるべく近い場所でリサイクルをしたほうがよい」という考え方に基づいて、徳島県内や四国内でのリサイクル業者が選定されている。資源をリサイクルしても輸送のために化石燃料を使うと、環境負荷がかかるからだ。乾電池をリサイクルできる業者は日本で北海道しかないため、例外となっている。また、リサイクルは年間約300万円の収益を生み、廃棄物処理コストの削減につながっている。

ゴミステーションの張り紙

ごみステーションの張り紙には、資源が1キログラムあたりどの程度の収入になっているかが明記されている。これが町民の参画意識を促しており、町の財政に寄与している。

もう一つ忘れてはいけない重要な施策は、生ゴミ処理だ。すべての廃棄物に含まれる生ゴミの割合は約3割。ここにいち早く注目した上勝町は、1995年から電動生ごみ処理機を購入する費用を町民に補助している。現在は98%の普及率を達成し、生ごみを回収する必要がほぼなくなった。上勝町内は都市部とは違い、庭や農地を持っている家庭がほとんどだったことも普及が進んだ一因といえよう。ごみステーションに臭いがなく、みんなが快適に訪れることができるのは家庭用生ごみがないことが大きい。

また、ごみステーション内にある「くるくるショップ」には、不要になったがまだ使えそうなものを町民が持ち込むことができ、他の町民が自由に持ち帰ることができる。町外の方は、持ち帰りのみ可能だ。筆者が訪れたときは、ランドセル、食器類、服、ユニフォーム、ソファ、ベッド、正月飾りなど、ありとあらゆるものが置かれていた。

誰かの不要なものも、他の誰かにとっては必要なものかもしれない。くるくるショップでは本来捨てられてしまうものも次の所有者の手に渡るため、廃棄の発生を遅らせることができる。リサイクルされるまでに「リユース」というワンクッションがあるというわけだ。平成29年度版特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー年次活動報告書によると、2017年の1年間で約7,760kg分のものががリユースされたという。

くるくるショップ外観

くるくるショップ外観

新たな町のシンボル、ゼロ・ウェイスト・センター「WHY」

新たな町のシンボルとして、新ごみステーションであるゼロ・ウェイスト・センター「WHY」の建設が進んでいる。WHYは、上勝町を訪れる視察者が見学できるように設計されており、2020年春にオープン予定だ。中村拓志&NAP建築設計事務所が設計を担当。上空から見ると、はてなマークになっているユニークなデザインだ。

ごみの中間処理施設のほか、シェアオフィスやラボ、コインランドリーなどが設置される。さらに宿泊施設まで併設予定であるというから驚きだ。「ゴミの横に宿泊する」ことになり、世界でも非常に珍しいケースになるという。野々山氏は、「普通はハードを作り、町民の意識などソフトを作りますが、上勝町は、ゼロ・ウェイストへの意識という『ソフト面』が先行しており、『ソフト面』は立派ですが『ハード面』が整っていない珍しいケースです。」と、話した。今後は徐々にハード面も整えられていくだろう。

WHY

新たに建設中の「ゼロ・ウェイストセンターWHY」Image via WHY公式ホームページ

SDGsリサーチ「上勝町のSDGs未来都市計画」

現地リサーチを終えた後は、上勝町役場の上勝町企画環境課・浅野豪氏の話を直接聞くことができる機会が設けられ、上勝町のSDGs未来都市としての概要とこれから目指す方向性についてのレクチャーを受けた。上勝町は前述の通り2003年にゼロ・ウェイスト宣言を出してから、経済・環境・社会の3つの側面においてサステナビリティを推進している。

「上勝町を、まちエリア、彩エリア、山エリアの3つに分けて、地域資源を活かしながらそれぞれの相乗効果を促しています。たとえば、ヘルスツーリズム、ゼロウェイストの教育企画の実施、企業とのパートナーシップ(サンスター)などに取り組んでいます。」(浅野氏)

SDGsについては、上勝町SDGs推進委員会がバックキャスティング思考やシステム思考を使って、上勝町SDGsに取り組んでおり、以下の5つの段階を一つずつ推進している。

①知っている(講演・セミナー・カードゲームなどの啓蒙活動)
②やっている(既存事業での落とし込み)
③次どうする(将来ビジョンの策定)
④やってみる(新たなステークホルダーとの連携)
⑤どうなった(独自指標の開発)

「①②はある程度のところまで実施可能ですが、③以降には難しさを感じています。上勝町もチャレンジしているところです」と、浅野氏。

浅野氏

上勝町役場の上勝町企画環境課・浅野豪氏

また、SDGs推進委員会は、「誰一人取り残さない」というSDGsのコンセプトに基づき、全町民1,500名に「上勝町で増えてほしいもの、減ってほしいもの、変わらずあってほしいもの」をヒアリングしている。たとえば「居酒屋がほしい」という意見があったが、「なぜ居酒屋がほしいのか」という問いかけから「集まる場がほしいのではないか」「コミュニケーションができる場が必要なのでは」「だったらそのような場をもっと作ればいいのではないか」という、ひとつの意見の背景に隠れた意図を探っている。

さらに、町はローカルベンチャーの推進(支援)にも力を入れている。大きく分けて「自然資本を生かした事業」と「ゼロ・ウェイストブランド生かした事業」に分け、意図的に上勝町にベンチャー企業を作る仕組みを整えている。すでに拡がってきているゼロ・ウェイスト認証を取得して展開するケースも考えられるという。

SDGsは2015年から始まったものだが、上勝町は2003年以前から持続可能なまちづくりを推進してきた。その土台があったからこそ、昨今のSDGsの盛り上げを踏まえて整理ができたという。つまり、SDGsありきではなく、持続可能なまちづくりを推進する一つのツールとしてSDGsが位置付けられている。ちなみに浅野氏は、上勝町がSDGs未来都市に選定されるにあたり、北海道下川町など他の自治体から学んだり、上勝町に来る講師たちの送迎時にたくさんの質問をしたりと、急ピッチで学び、現在町のSDGs推進の最前線に立っている。そんな浅野氏だからこそプレゼンテーションにも熱が入っていた。

DAY 2:ソーシャルイノベーターから学ぶ

カフェ・ポールスター

上勝町にあるカフェ・ポールスターは、ゼロ・ウェイストをコンセプトにしているカフェだ。今回のツアーでは、店長である東輝美氏にインタビュー形式でお話を伺った。

東氏は、上勝町で生まれ育った。昔から、毎日当たり前のようにゼロ・ウェイストの考え方が身近にあったという。2013年にカフェ・ポールスターをオープン。国内外から訪れる視察者だけではなく、町民にも人気の場所だ。

カフェの目指す方向について「オープン当初から、『上勝を五感で体感できるショールームのような場所』を目指していました。いろどりのつまものやゼロ・ウェイストのコンセプトを体験していただけるようになっています。注文した品を待っている間にゼロ・ウェイストカタログを読んでいただいたり、量り売りを実施したりしています。」と、語る。

「ショールーム」だけにとどまらない活動も実施している。「生で上勝の暮らしを学んでみたい」「本当に45分別を町民が自然に行っているのか知りたい」そんな要望に対して、実際に上勝に滞在してもらう「寝泊り三食付きのインターンシッププログラム」を最低1か月以上から実施している。海外からはこれまでにアイルランド、カナダ、シンガポール、ドイツの方が参加しているという。

また、2017年から上勝町で始まった、ゼロ・ウェイスト基準を満たした店舗に与えられる「ゼロ・ウェイスト認証制度」についてこう語る。「始まってすぐに認証を取得しました。この認証制度によって、ごみの分別やスタッフ研修、次の年の計画や仕入れ方法、お店の運営において、どこまでゼロウェイストを実現しているかが見られます。また、当店ではゼロ・ウェイストクレド(信条をまとめた宣言)を出し、『食べる』『飲む』『仕入れる』『使う』『エネルギー』の無駄をゼロにする宣言をしています。たとえば、フードロスがでないような調理を心がけることや、冬はできる限り薪ストーブのみで暖をとること、断熱性のあるペアガラスを採用するなどと、それぞれの分野で取り組んでいます。」

東氏インタビューの様子

カフェ・ポールスター店長 東氏のインタビューの様子

ゼロ・ウェイストをカフェで実現するためには、顧客の理解が必要になる。たとえば、カフェ・ポールスターはお手拭きを提供していないが、それに対してオープン以来7年間、クレームはなかったという。お手拭きの要望があった場合は、上勝で有名なファブリックブランド『KINOF』のお手拭きを提供している。

「そもそもなぜお手拭きがないのか逆に違和感を持ってもらう良い機会だと思っています。また、当店ではストローもお出ししていません。たとえ紙ストローでも、紙ストローは上勝の分別方法にならうと、『その他の紙類』に分類されます。結果、固形燃料のダウンサイクルになり、きれいなプラスチックよりも100倍ものコストがかかってしまうのです。環境に良いように見えても、実はそうではないケースがあります。最初はサービスの低下につながってしまうのではないかと懸念をしましたが、しっかり説明をする中で理解を得られるようになりました。必要な方にはスゲ科の植物でできたベトナムから仕入れたストローを出しています。」(東氏)

野々山氏は「ストローやお手拭きを使わないことが『日常』であることをお客さんに見せることができれば成功である」と、話す。ゼロ・ウェイストというブランドを生かし、「体験」にしてしまおうというわけだ。

スゲ科のストロー

スゲ科のストロー

ゼロ・ウェイストを実現する上での重要な考え方について東氏はこのように話す。「ゼロ・ウェイストは、ごみゼロと訳されがちですが、『無駄をゼロにする』ということです。時間・労力・ごみ・お金の4つの無駄はないかという観点で捉えています。たとえば、食の宅配サービスは時間や労力は節約できますが、ごみとお金という観点で見ると大きな負荷になっています。上勝に置き換えると、自分で料理をすると時間・労力は負荷になりますが、ごみとお金は削減できます。このように都会と上勝では全く違う考え方になります。この4つの観点から、無駄についてもう一度考えるきっかけを上勝で提供したいと考えています。」無駄にも色々な種類がある。無駄を削減しようとする際、総合的に考える一つの指標になる。

さらにゼロ・ウェイストを実現する文化も大切だと東氏は語る。「もともと上勝町では住民同士の信頼が強かったのです。そういう信頼経済のなかで動いていたからこそ、自然にゼロ・ウェイストが根付いていったのだと捉えています。たとえば、仕入れの際にタッパーを持っていき、包装が不要なことを伝えるだけで、一つのコミュニケーションが生まれます。そういったコミュニケーションの積み重ねの上に信頼ができ、ゼロ・ウェイストが実現できる土壌が生まれます。」

コミュニケーションが信頼を生み、ゼロ・ウェイストを実現させる。信頼とゼロ・ウェイストは切っても切れないという関係であることが感じ取れた。

今後については「カフェ・ポールスターにいかに上勝らしさを凝縮するか。上勝の人口が減って行く中で、上勝イズムをどれだけ発信できるかを目指していきたい」とのことだ。ちなみにカフェ・ポールスターの運営会社で東氏が代表を努める合同会社RDND(アール・デ・ナイデ)の由来は、「なんでもあるじゃないか!」という阿波弁が由来だという。「上勝には何もないようで実はずっと続いてきた産物や文化があります。当たり前にあるものをフォーカスして発掘することで、100年、1000年先に上勝らしさを残していけると考えています。」(東氏)

RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General

帰路に立ち寄ったRISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Storeで見学の様子。廃材を利用した内装で知られている。

葉っぱビジネス「株式会社いろどり」農家訪問

続いて行われたのは「葉っぱビジネス」として知られ、上勝町のブランドを高めた立役者である株式会社いろどりについてのレクチャーだ。いろどりでは、日本料理店やイベント、結婚式などで料理を美しく彩る「つまもの」を栽培・販売している。

いろどりの歴史は上勝町がピンチに陥った1981年まで遡る。みかんの産地だった上勝町は同年に大寒波に襲われ、経済損失として5億円の被害を被った。当時、農協職員だった横石知二氏は、会食で得たヒントをきっかけにつまものビジネスを上勝町で普及させようと決意した。普通ならもう一度みかんの木を植えれば再生への道を歩めるが、あえて新しいビジネスを作ることとなった。当初、町の農家の理解は全く得られず、苦難に満ちたものだったという。しかし、横石氏が自腹で日本全国の料亭を駆け回る中で、料亭のニーズを的確につかみ、軌道に乗せたことで協力農家も増えていった。現在は112件の農家が合計約2億6000万の収入を得ている。収入増によって農家のやりがいがアップしたり、心身ともに健康になったりしたこともこのビジネスの大きな特徴だ。

「高齢の農家でもできるビジネスである」とは言っても、自然に生息している葉っぱをそのまま販売することはできず、厳密に管理された厳しい規格がある。葉っぱがビジネスになるとメディアで放映され、簡単にビジネスができるのではないかという勘違いがここで大きく覆させられる。農家はどのような思いで栽培しているのか、実際にお話を伺う機会を得た。

いろどり農家の美馬氏をインタビュー

いろどり農家の美馬氏をインタビュー

美馬氏は、いろどりのキャリアを持って25年となるベテラン農家だ。美馬氏からは、栽培や品質管理の大変さとともに、いろどりに対する誇りとやりがいについて伝えられた。

最初はもみじの栽培からキャリアを歩み始めたという美馬氏。創業者の横石氏の熱心さに惹かれ、他の商品の栽培もトライしていった。病害や台風、雪などの災害に見舞われたり、品質管理に力を入れたりすることが大変だと語るが、美馬氏は「どこにでもあるもので都会の人たちが喜んでくれることが励みになっています」と、話す。

いろどりは、ほとんどが注文取引で、その日に出荷した商品は次の日の夕方にどの市場に出たかバーコード管理でわかるようになっている仕組みだ。どの市場に行くかは農協が決めているが、農家はシステムで把握できるため、最終消費地とのつながりができる。逆にいえば、商品がトレースできるようになっているため、誰が出荷したかもわかる。そのため「栽培や品質管理に対する緊張感が生まれます」と、美馬氏は語る。さらに、システムで売上実績や各農家の売上ランキングが閲覧できるようになっているので、農家同士のよい競争関係や品質向上の原動力にもなっているという。成績が良い農家による勉強会を実施したり、実際に商品が使われているレストランの現場で研修をしたりして、品質向上に努めている。農家同士のつながりも強く、自分だけが理解すればいいわけではなく、共に作り上げる意識が強いという。

注文が入ったらタブレットでお知らせが届く仕組みだ。売上管理や売上ランキング、代表の横石氏のメッセージも閲覧できる。どの農家さんにもわかりやすいように考えに考え抜いた使いやすい設計となっている。

合同会社パンゲア「サステナブルツーリズムの考え方」

続いて、サステナブルツーリズムを提供する合同会社パンゲアの野々山聡氏よりサステナブルツーリズムの考え方が紹介された。サステナブルツーリズムは今後のツーリズムのあり方を論じる上で重要な旅行形態だ。従来の「消費型観光」から「地域共生型観光」の転換が今後のキーワードになると野々山氏は話す。地域共生型観光とは、自然環境・文化財・地域社会と共生し、将来にわたって楽しめる観光の形態である。

「棚田がきれいだから来てくださいね、と言うだけでお客さんは来てくれません。ここで取れたお米でおむすびやお酒を作って、地元で取れた魚や野菜を食べながら、棚田の水面に反映される月を見る。一つの資源をストーリーとしてパッケージにして訴求していくことが大切だと考えています。」と、野々山氏は語る。

さらに続ける。「観光のためのモノを作る必要はありません。自分たちで魅力を発見し続けることが『サステナブル』であると考えています。」一見何もないところから魅力を再発見し、ストーリーにして商品化していく。これがサステナブルツーリズムにおいて必須の考え方だ。先のカフェ・ポールスターの東氏も同じことを語っていた。ここにビジネスづくりの大きなヒントがあるだろう。

パンゲアは娯楽・審美・異日常・教育体験の4つのテーマで活動しているが、今後は教育体験に力を入れる方向だという。野々山氏は「2040年には上勝町の人口が800人になる予測もあります。今後は修学旅行や法人に対する教育体験を強化していきたいのですが、その理由として、修学旅行や新入社員研修は毎年実施ができるため、継続的に上勝町の魅力を伝えていき、関係人口を増やしていけるからです。」と、話した。

旅を旅で終わらせず、次のアクションへ

ツアー終盤では、ツアーの集大成であるマイプロジェクトの発表が行われた。マイプロジェクトシートを完成させ、決意を画用紙に書いて一人3分ずつで発表する。それぞれの参加者からは「新たに教育事業を立ち上げる」「起業を軌道に乗せるためキーマンとつながる」「世界と日本をつなぐプラットフォームを作る」「ゼロ・ウェイストのコミュニティを作る」「わくわく働くプロジェクト」などといった未来が楽しみになるマイプロジェクトが発表された。

今回の参加者は都市部からの参加者が多かった。2日間都会から離れ、イノベーションが生まれる現場を見て、人に会う実際を体験したことによって、これまで考えてきたマイプロジェクトをさらにブラッシュアップすることができたのではないだろうか。

マイプロジェクト発表の様子

終盤のマイプロジェクト発表の様子

編集後記

今回筆者は、初めて上勝町を訪れた。今注目の町として取り上げられているが、いたって自然に人々の営みが育まれている。町民・行政・企業・移住者・視察者が一体となって、次の目標に進んでいる様子が伺えた。この町で培ってきたゼロ・ウェイストの文化や住民参加の仕組みが、イノベーションを受け入れやすい土壌となっていることは確かだ。

カフェ・ポールスターの東氏が述べていたように、もともと住民同士の信頼で成り立つ信頼経済が成り立っていたからこそ全国に先駆けてゼロ・ウェイストが定着したのではないかと思う。社会課題を解決するイノベーションマインドを育み、アイデア創出やブラッシュアップをするにはうってつけの場所である。

参加者は昨日までお互いを知らなかったが、社会を良くしたいという共通の目的を共有し、1泊2日の濃厚な時間を過ごすことでそれぞれの人生を応援し合えるような仲間になった。また、「ただ見て感じ取るだけではなく、実践することに意味がある」という想いが運営メンバーから参加者にひしひしと伝わる、そんな心地よいプレッシャーも感じるツアーだった。

今後も同様のツアーの計画もあるとのこと。IDEAS FOR GOODでも引き続き紹介していくので、興味がある方は参加してみてはいかがだろうか。

【関連記事】【徳島特集 #3】「もう限界だった」なぜ上勝町はゼロ・ウェイストの町になれたのか
【参照サイト】ANAセールス株式会社 Journey +
【参照サイト】合同会社パンゲア
【参照サイト】株式会社パソナJOB HUB
【参照サイト】カフェ・ポールスター
【参照サイト】特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー
【参照サイト】株式会社いろどり

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