みなさんは、着なくなった服をどのように処分しているだろうか。知り合いに譲る、古着屋で売る、資源回収に出すなど、再利用には様々な方法があるだろう。しかし、シミがついていて売ることができなかったり、自治体の資源回収の基準を満たせなかったり、という理由で、泣く泣くごみに出した経験もあるかもしれない。
米の中古服EC大手Thredupの2020 resale reportによると、毎年世界で生産された衣服の64%が廃棄されている。また、日本では毎年100万トン以上の衣料品が排出されていると言われており、そのうち約74%が再利用されることなく処分されている。服1着を300グラムとすると、これは約25億着にあたる量だ。
衣料品の廃棄が引き起こす問題は、資源の無駄遣いにとどまらない。衣服は廃棄されてしまうと自然環境の中で完全に分解されることは難しく、地球温暖化を加速させるメタンガスを放出する。また、焼却しても燃やした分だけダイオキシンなどの有害ガスを排出してしまう。
このように世界中で大量に廃棄される衣料品を救おうと、フランスの建築学生が立ち上げたスタートアップがFabBRICKだ。捨てられた服からレンガを作るという、予想外で大胆な発想である。
FabBRICKは、廃棄された服を買い取り、切り刻み、代表者が自ら開発した自然に優しい糊を混ぜた後、型に圧縮し乾燥させて作る。Tシャツ2・3枚が一つのレンガに生まれ変わるそうで、レンガの色は希望に合わせて調整することもできる。このレンガは保温と防音に優れているため、部屋の仕切りや壁、ランプやテーブルの脚などの家具の材料として最適だ。すでに数々の衣料品店の壁にも使われた実績がある。
CEOのクラリス・マーレットは自身の経験にもとづいて、FabBRICKを創設した。2017年、建築学生であった彼女は、建築産業が大量のエネルギーを用いて環境を汚染していることに心を痛めていた。同時に、衣料品が建築資材になり得る素材であるにも関わらず、繊維業界がリサイクルに消極的であると知り、廃棄衣類で建築資材を作ることを思いついたのだ。
FabBRICKは2018年の創業から既に4万個にのぼるレンガを生産し、約12トンの衣料品を救ってきた。さらに現在は新たな試みとして、コロナ禍で大量に廃棄される医療用マスクを用いたレンガを試作中だという。
衣料品をアップサイクルし、オシャレで暖かみのあるレンガという新たな価値を生み出すFabBRICK。今後の更なる活躍を期待したい。
Edited by Motomi Souma
【参照サイト】FabBRICK
【参照サイト】独立行政法人 中小企業基盤整備機構|「繊維製品3R関連調査事業」報告書
【参照サイト】Thredup|2020 Resale Report