あなたは日々、どれくらいの食品を廃棄しているだろうか?食べきれずに腐らせてしまったものや、野菜や果物などの食べられない部分は、ほとんどの人が日常的に捨てているだろう。
農林水産省によると、2017年の世界の食品廃棄は13億トンにものぼる。日本の食品廃棄物も年間612万トンと、非常に多い。また、世界銀行が公開しているグラフによると、世界の廃棄物の半分近くを食品廃棄物が占めている。
今回は、そんな世界で問題となっている食品廃棄物を活用した、魅力的なアイデアを紹介したい。
ドイツの芸術大学の学生が開発した半透明でカラフルなバッグ『Sonnet155』は、廃棄予定の果物の皮を主な原材料としている。
このバッグは、製作者の地元のジュース工場で余った果物の皮と、同じく地元の繊維工場で余った短いセルロース系繊維から作られている。2つの異なる業界から出る廃棄物を同時に利用して作られているところがユニークだ。
廃棄果実の細胞壁から抽出されたペクチンは、天然の糸としての役割を果たしており、これを工場の製造過程でろ過されてしまう長さ5ミリ以下のセルロース繊維で補強。そしてこの混合物に温水を加え、型に入れて5日間置いた後、バッグの形に縫い合わせて、完成だ。革のような手触りで、作りたてのバッグはジャムやグミのような香りがするという。
Sonnet155は、使っていくうちにだんだんと分解されていき、最終的には土や水の中で完全に分解される。使い終わったら植物の肥料にしたり、同じ製品にリサイクルしたりすることもできるのだ。
Sonnet155を共同で開発したのは、テキスタイルデザイナーのLobke Beckfeld氏とJohanna Hehemeyer-Cürten氏だ。両者とも、ベルリンのヴァイセンゼー芸術大学の修士課程に在籍しており、サステナブルなデザインの研究に情熱を注いでいる。
Johanna Hehemeyer-Cürten氏は自身のウェブサイトでこのバッグについて、「夏の終わり、肌に感じる太陽、爽快な海、穏やかな風にインスパイアされた、多彩なカラーバリエーションを取り揃えています。グラデーションのパターンやテクスチャー、天然色素を使った鮮やかな色味など、それぞれのバッグが個性的な一点ものです。」と説明している。現在は商品化に向けて生産・販売戦略を練っており、協力してくれる企業を探しているそうだ。
もう一人の製作者、Lobke Beckfeld氏は自身のウェブサイトでこう語る。
「Sonnet155では、サステナビリティを“重荷”ではなく“ご褒美”として表現することを目指しています。」
このバッグを制作する技術はまだ世界中で知られているとは言えないため、廃棄から救うことのできる果物の皮の量は限られているだろう。しかし、私たちが普段何気なく捨ててしまっている食品廃棄物から、こういった製品を作られることを知ると、廃棄物への眼差しが少し変わるのではないだろうか。
【参照サイト】 Lobke Beckfeld
【参照サイト】Johanna Hehemeyer-Cürten
【関連サイト】Johanna Hehemeyer-Cürten(instagram)
【関連サイト】Lobke Beckfeld(instagram)