「異常気象が発生しています。」
このようなニュースが頻繁に流れてくる今の世の中で、気候変動や異常気象に危機感を持ち続けられる人はどれだけいるだろうか。
WMO(世界気象機関)が発表した災害の規模を示す調査(※1)によると、1970年から2019年までの50年間で、天候や気候、水関連の災害が1万1,000件以上発生。200万人以上が死亡し、経済損失は3兆6400億ドル(約400兆円)に達したとされる。
だが、今や世界各地で見られる異常気象。深刻な現状がある一方で、何が本当に“異常”な状態なのか正確に把握することが難しくなってきている。「米国科学アカデミー紀要」に掲載された研究(※2)によると、それまで人々が異常気象だと思っていたものが、まるで日常のように思えてしまうまでにかかる年月は、わずか2年から8年程度だという。
このような「人々が異常気象に慣れてしまう」事態を避けるため、アメリカに本部を置く非営利団体・ISeeChangeは、地域の天候に異常があった場合に、ユーザーに警告する機能を持つアプリを開発した。
アプリのトップには、予想最高気温や予想最低気温が過去30年間の同週の気温と比較して異常な日に、バナーによる警告が表示される。さらに、バナーの「詳しく見る」をクリックすると、「30年前の今日の気温は○°でした」と、その日の気温が過去30年の平均値からどれだけ外れているかを示すチャートがポップアップ表示される。表示を通して、異常気象に慣れてしまったユーザーが気候の深刻さに気づくことができる仕掛けになっているのだ。
また、ユーザーはアプリを通して自分の住んでいる地域の天候や気候を記録し、写真やコメントを添えた投稿として他の人に共有することができる。それらの投稿は、ISeeChangeによってSNSやニュースレター、レポートとして地域のパートナーにシェアされ、地域のアクターたちが気候変動や異常気象に警鐘を鳴らしたり、解決策を生み出したりすることに役立てられる仕組みになっている。
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共有された投稿が実際にデータとしてどのように活用されたかは、ニュースレターを通して報告されており、地域のユーザーやコミュニティは、自分たちが気候変動へのアクションを起こすことでどのような変化が起こっているかを知ることができる。
単にClimate Anxiety(気候変動への不安)を煽るだけではなく、地域の人々やコミュニティメンバー、さらには世界中のネットワークにつながることができる取り組み。「慣れ」によって当たり前になった習慣や意識を変えることはなかなか難しいが、「今日の気候は何だか少しおかしいな」と感じたとき、その小さな違和感を行動に移すための一歩として、まずはこのアプリをチェックしてみてはいかがだろうか。
※1 WMO Atlas of Mortality and Economic Losses from Weather, Climate and Water Extremes (1970–2019)
※2 Rapidly declining remarkability of temperature anomalies may obscure public perception of climate change
【参照サイト】ISeeChange
Edited by Tomoko Ito