ゴルフしながら気候危機を学べる?NYにできた体験型施設

Browse By

先日、ブラジルのアマゾンの二酸化炭素の排出量がその吸収量を上回ったという研究結果が発表された。大きな原因は、森林伐採や開発などさまざまな産業が引き起こす森林破壊にあると分析される。昨今、このような環境問題や気候危機に関連する情報に触れる機会が増えている一方で、都市に暮らす多くの生活者にとって、アマゾンという場所は決して近くない。気候危機と聞いて心配になり、どうにかしたいという気持ちがあっても、日々溢れるニュースの一つとして流れてしまうことはないだろうか。

都市に住みながらも環境問題や気候危機をもっと身近に感じる必要がある。――そんな今、都市型生活ならではの環境問題への視点を表現する屋外娯楽施設「Putting Green(パッティング・グリーン)」が、ニューヨークに誕生した。今回は、実際にPutting Greenを訪れた筆者が撮影した写真を織り交ぜながら、施設の様子やいくつかのミニゴルフコースをテーマとあわせて紹介する。

全18コースのミニゴルフ施設・Putting Greenは、ブルックリンのウィリアムズバーグの一角に位置する。その全てのコースには、環境問題に関するテーマが設けられており、訪れた人がゴルフを楽しみながら、気候変動とその解決策について学び、考えることができる仕組みになっている。

ウォーターフロントであるこのエリアのレジリエンスサステナビリティ、そしてニューヨークの人々の水との関わり方を重視したプロジェクト・River Ringの一環で開設されたPutting Green。その入場料から発生する利益は、全て気候危機に取り組む地域団体に寄付される。また同施設は、ニューヨーク市を拠点とする環境保護活動団体や教育機関、アーティストたちの協力によってデザインされるなど、多様な人たちの手によってつくりあげられた。

入場料に含まれるレンタルのゴルフクラブとボールを持って施設に入ると、まずはイーストリバーの先に広がるマンハッタンの摩天楼と、地球を模したオブジェに出迎えられる。近づいて見るとわかるが、このオブジェは、ペットボトルキャップと余剰や廃棄になった芝生からできている。

putting green

Putting Green

実は、18に及ぶミニゴルフコースにも多くの廃材が利用されており、近辺の閉鎖工場の建材、工場現場で使用されなかった資材、廃棄タイヤ、海洋ごみなどの活用が随所に見られる。施設全体の床の板材は、かつて近隣にあった砂糖会社「ドミノシュガー」の大型工場の跡地にあったもの。元々この場所にあった木を残したまま開発されているのも注目だ。

putting green

Putting Green

それぞれのコースは、ミニゴルフとして楽しめるだけでなく、気候危機から生じるさまざまな局面や、都市ならではの観点を表現している。例えば、コース4番。

小さな島のような構造であるマンハッタンは、地球温暖化による水位上昇の影響を受けており、その上昇スピードは加速している。近年では8年間で1インチ(約2.5センチメートル)の上昇が記録されており、これが続くと住民は嵐などによる水害の危険にさらされ、健康で安全な生活が脅かされる。ここでは、ゴルフをプレーする人がこうした課題を視覚的に理解できる「高さのある」コースになっている。

putting green

Putting Green-HIGHER GROUND

続いては、3つの異なる勾配の傾斜が並ぶコース6番。“Choices(選択)”と題されたこちらは、一体何を意味しているのだろうか?

putting green

Putting Green-CHOICES

どの傾斜に向けてボールを打つか、というゴルフとしての選択だけではないことが、コースの裏側の説明を見るとわかる。気候危機が進む今、パリ協定で設定されている温室効果ガス削減目標に向けて私たちがとる「選択」が、気候難民などを含めどれだけの人々に今後影響するかを決めることを体感させるようになっているのだ。

putting green

Putting Green-CHOICES

コース13番は、コンポストに関するもの。ニューヨーク市の廃棄物の約3分の1を、食品ごみをはじめとした有機物が占めていることから、ここではコンポストを実践する重要性が提唱されている。都心の家庭菜園やコミュニティガーデンを彷彿とさせるセッティングを通して、都市型生活の中でも食品ごみを循環させる方法を伝えている。

putting green

Putting Green-COMPOST FORE NYC

最後にもう一つ紹介しよう。16番は交通に関するコースだ。

ここでは、搭載される動力だけでなく、製造も再生エネルギーで行われる自動車や、頻繁な飛行機・クルーズ船利用への課税など、今後検討されるべき事項が説明されている。同時に、CO2の排出削減のために、都市生活の中で徒歩や自転車、公共交通を利用することが人々に促されている。

上記以外にも、全18コースのテーマや、そこに込められた思い、製作者や製作における工夫などが、Putting Greenのウェブサイトで確認できる。

putting green

Putting Green-FORE-WARD THINKING

国連が発表した2017年のデータによると、世界人口のうち41億人以上がいわゆる都市部に居住していると言われている。これは全人口の約55%を占め、2050年にはその比率は68%にまで上がると予想されている。つまり、今後3人に2人が都市型の生活になるということだ。

そのように都市部に人口が集中してしまうと、都市の富裕化現象を意味するジェントリフィケーションが引き起こされやすくなる。それは、多くの人々や文化、建物、ビジネスなどが集約し、常に変化を続けるニューヨークのような街では、地域ごとの格差などにもつながっており、重大な社会課題となっている。

気候危機という地球規模の課題と向き合う際も、そういったそれぞれの街が抱える課題や、そこに暮らす多様なコミュニティの目線を考えることが大切になってくる。社会のあり方も意識した上で、ローカルな活動と連動しながら、地域に基づく環境問題の向き合い方を進めていくPutting Greenのような場所は、大きな意味を持っているだろう。

【参照サイト】Putting Green
【参照サイト】River Ring
Edited by Tomoko Ito

FacebookTwitter