海藻を育てる「カーボンネガティブ」な施設、トルコの大学に登場

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近年、サステナブルな新素材として海藻への注目が国内外で高まっている。

例えば、自然界で生分解される特徴を活かして、近年問題となっているプラスチックに替わる新素材として加工されたり、人口増加に伴うタンパク質不足を解決する食材として活用されたりしている。

さらに、海藻は光合成を行い空気中の二酸化炭素を取り込むため、燃やしても空気中の二酸化炭素量は実質的に変わらないという特性を持つ。この特性を活かして、化石燃料に代わる燃料精製を研究する動きも存在する。

このように海藻に注目が集まる中、カーボンネガティブ(※1)な大型海藻栽培施設がトルコにてオープンした。場所は、黒海に隣接するボルジチ大学のキャンパス内だ。

※1 特定の経済活動によって、排出される温室効果ガス(CO2や水蒸気など)よりも吸収する温室効果ガスが多い状態を指す。

大学と海藻栽培施設

image via Bogazici University

同施設の栽培システムは、化石燃料を使わないカーボンネガティブな設計かつ、廃棄物を出さないデザインになっている。この栽培システムの下で、1年間に約1,200トンの海藻が生産される予定だ。

生産された海藻は、バイオ燃料のほか、食品、サプリメント、医薬品成分、有機肥料など、様々な用途に使用される計画となっている。2022年末には、ここで作られたバイオジェット燃料を既存の燃料に10%程度混合して、トルコ国内でのフライトを目指している。

海藻と研究者

image via Bogazici University

この海藻栽培施設に出資したのは、EU(欧州連合)とトルコ政府だ。欧州では近年バイオ革命が進んでおり、2022年2月には、欧州の循環型バイオエコノミーファンドが、バイオエコノミーに携わる企業に約3億ユーロを調達したと発表した(※)

また、トルコ政府は、本格的にバイオエコノミーを推進し、バイオエコノミーによる同国の発展プロジェクトを構想している。今回紹介した栽培施設は、同プロジェクトの一貫だという。サステナブルなエネルギー源として注目されるバイオマスだが、トウモロコシなどの穀物を利用する方法には、過度な森林伐採の問題が指摘されている。一方で、海藻の栽培には耕作地が必要ないため、この問題を解決する新しい選択肢になるだろう。

また、トルコにおける栽培施設の建設は、黒海と地中海に面する地理的条件を考えると不思議ではない。自国の地理的特徴を活かしたサステナブルな技術で経済成長を描く方針は、トルコだけでなく、多くの国にとって必要な戦略になっていくのではないだろうか。

Growth capital for sustainable transformation to a bio-based circular economy: EU-initiated impact fund oversubscribed with € 300 million

【参照サイト】A radical, carbon negative project in Turkey is turning algae into bio-jet fuel
【参照サイト】Growth capital for sustainable transformation to a bio-based circular economy: EU-initiated impact fund oversubscribed with € 300 million
【参照サイト】株式会社タベルモ
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Edited by Motomi Souma

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