化石燃料の仕事はお断り。広告・PR業界の気候アクティビズム「Clean Creatives」

Browse By

「エコ」「環境にやさしい」という言葉やナチュラルなデザインのパッケージ──。そんな商品をついつい手に取ってしまう方も多いのではないだろうか。しかし、実際にその商品やサービスが本当に環境にやさしいのかどうかは、疑わしい場合もある。

一見、環境に配慮しているように見せかけて、実態はそうではなく、環境意識の高い消費者に誤解を与えることをグリーンウォッシュと呼ぶ。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、企業がイメージアップ広告やブランド戦略ばかりしていて、その社会的責任を十分に果たしていないと指摘している。そのため、広告規制も必要だと警告するほど、グリーンウォッシュは横行している。

そんななか、広告・PR活動やマーケティングを担うクリエイティブ業界から反グリーンウォッシュの大きなうねりが起こっている。ガス、石油などの化石燃料を扱う企業・業界団体の広告を一切「お断り」する、というプロジェクトを始めたのだ。すでに現時点で900のクリエイターと295の広告代理店やPR関連企業などがこのアクションに署名し、化石燃料に関する企業の仕事を「キャンセル」し始めている。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Clean Creatives(@clean_creatives)がシェアした投稿

なぜ、化石燃料の仕事は「お断り」なのだろうか。このアクションを展開する米国の団体「Clean Creatives」によれば、化石燃料を扱う企業・団体は気候変動対策に反対する最大のロビイストで、彼らに利すれば、当然ながらCO2排出削減のゴールは遠のくという。そして、クリエイティブ業界がよい広告を作れば作るほど、企業イメージはアップするため、ガス・石油会社、そして消費者も思い切った現状打開策を打ち出せないというジレンマに陥るというのだ。

気候変動対策を阻害するのは、若い世代の価値観に沿うものではなく、クリエイティブを制作することで、気候変動に関する訴訟に広告業界が巻き込まれるケースもある。このままでは業界自体が弱体化し、イメージダウンは免れないという危機感から、このプロジェクトは始まった。

Clean Creativesは、化石燃料関連の企業の仕事を積極的に引き受けている世界の広告代理店やPR企業も「Fリスト(化石リスト)」として挙げている。広告代理店自身がどれだけ「気候変動に取り組んでいる」とスローガンを掲げていても、事業で汚染そのものを引き起こしている企業と大口取引しているのはどうなのか、というわけだ。

2021年4月にフランスでは石油、石炭、天然ガス関連企業の広告を全面的に禁止することを発表し、同年5月、オランダ・アムステルダム市では、世界の都市としては初めて市内の地下鉄駅における化石燃料を主軸とする製品・サービスの広告を禁止すると発表。ガスや石油の広告はじわじわと締め出されている。

こうした世界の潮流のなかで、マーケティング・クリエイティブ業界がどう動くのか。広告は人々の生活や考え方に浸透するものだけに、ますます注目が集まるにちがいない。

【参照記事】【オピニオン】化石燃料が広告から締め出される日
【参照サイト】Clean Creatives公式ホームページ
【参照サイト】The public relations and ad firms refusing fossil fuel clients

Edited by Erika Tomiyama

FacebookTwitter