私たちの健康にも自然環境にも負担が少ないオーガニックの食料品や製品。日常生活にできるだけ取り入れたいと思っていても、値段が高くてちょっと難しい。それは、日本でもブラジルでも同じ。そんな中、サンパウロ市には画期的な店舗運営をする団体がある。
Instituto Feira Livre(インスチトゥート・フェイラリブレ/青空市場団体)」がそれだ。この団体は、「透明性」と「持続可能性」を大切にしながら、消費者がオーガニックの食料品と製品にアクセスしやすくすることを目的に運営されている。
青果店のように入り口からびっしりと野菜や果物のカゴが並び、店内に足を進めると乾物や、必要最低限の加工がされた食品、さらに日用品が並んでいる。一見、どこにでもありそうなお店だが、違いは店内に掲げられた「生産者からの仕入れ値 + 経費(35%) =適正価格」というメッセージにある。
このお店で売られている品物は、生産者から購入した仕入れ価格で販売されている。つまり、生産者からリンゴを一つ100円で買い、お店でそのリンゴを100円で販売しているということ。これでは、利益が出ないだけではなく店舗運営費すらカバーできない。
Instituto Feira Livreでは会計時に、お店の利用者に合計金額に35%の負担金を上乗せして徴収して良いか確認する。
先ほどのリンゴの例を再び用いると、リンゴ100円を2つ購入して合計金額が200円になる。その合計金額の35%、つまり70円が負担金となる計算である。つまり、実際に利用者が支払うのは270円となる。利用者が払う35%の負担金によって店舗は運営されている。
そして、この35%という数字の基になるのが、上記で触れた店内の掲示情報なのだ。
その黒板には、売上額をはじめ、家賃、共益費、光熱費、人件費、メンテナンス費、損失・万引きで失った額、さらに銀行手数料からカード決済手数料などの経費や来店者数など、各月の収支情報を開示している。この数字をもとに店舗維持に必要な収入を割り出し、その結果35%という率を目安として利用者に提案している。
ここでポイントとなるのが、この負担率は強制ではなく「任意」なところ。Instituto Feira Livreの価値のひとつが「オーガニック商品へアクセスのよさ」であり、誰もが食卓に化学肥料や農薬が使用されていない食べ物を並べられることである。政府から生活保護を受けている人たちや低所得者が少しでもオーガニックなものにアクセスできるよう、負担率分を払うのが難しい人たちへの配慮がある。
少し実例を挙げてみよう。ある日、近所のスーパーでオーガニックではないリンゴが約14レアル(350円相当)/kgで販売されていた。
Instituto Feira Livreのオーガニックのリンゴは約15レアル(375円相当)/kgだった(※1)。35%の負担率を上乗せすると約17レアル(425円相当)になる計算だ。Instituto Feira Livre以外に近所でオーガニックのリンゴを販売しているところが見つからなかったのでオンラインスーパーの価格を調べてみたら、400gで16レアル(400円相当)だった。1kg当たり約40レアル(1,000円相当)になる。
この例を見ると、Instituto Feira Livreの価格がどれだけオーガニックなものにアクセスしやすく設定されているか想像できるだろう。ちなみにこの店頭価格(仕入れ価格)は生産者が設定した価格で、全額生産者に支払われる。
さらに、店頭に並ぶ品物の価格が本当に仕入れ価格なのか知りたい利用者には、店内で生産者から購入した際に発行される伝票も開示してくれる。
脱化学肥料・農薬、脱投機。Instituto Feira Livreは、生産者から消費者に至るまで、関わる全ての人たちと共にオーガニック市場の健全な関係を構築することをモットーに挑戦し続けている。
※1 1レアル=25円(2023年1月23日時点)
【参照サイト】インスタグラム – Instituto Feira Livre
【参照サイト】フェイスブック – Instituto Feira Livre
Edited by Kimika