ユニセフによると、小学校に通えない子どもの人数は、世界で約6,700万人いると言われている(※1)。
そのうち半分は、ガーナなどのサハラ以南のアフリカ地域に集中している。同地域で2012年から2018年までの間で、小学校を修了した児童の割合は男女ともに64%だ。中学校を修了した生徒の割合は男女ともに50%以下と、半分の子どもが中学校を修了していないことがわかる。
学校に行けない大きな要因は「貧困」だ。たとえばガーナ全土の平均世帯年収を使用した研究によると、ガーナの家庭では世帯年収の26%を子ども一人分の教育費に費やしていることが判明した(※2)。ガーナでは、ほとんどの家庭で複数の子どもがいるため、子ども全員を学校に通わせることがどれだけ難しいかがわかる。また、低所得層の人々は日単位で稼ぐことが多く、まとまった期間の授業料を貯める余裕がないために学費が払えないケースが多い。
そこで革新的な教育ビジネスを考案したのが、ガーナ出身のドンコー氏だ。彼も貧しい家庭で育ち教育の課題に直面したことから、2009年に「学んだ分だけ学費を払う」オメガスクールを開校した。彼はアフリカで拡大する通信サービスからアイデアを得て、学期ごとに払う学費を支払う代わりに、日額で支払うモデルを構築した。
アフリカの多くの低所得国では、何千万人もの人々が収入に応じて少額の通話クレジットを購入できる携帯電話のサービスが利用されている。ドンコー氏は同様のビジネスが教育でも有効だと考えたのだ。
オメガスクールの生徒は、1日あたり1ドル未満の学費で、授業料、制服、書籍、交通費、ランドセル、給食が提供される。また病気になっても保険や社会的保護がなく、学費を支払えなくなった場合にも確実に出席できるよう、生徒は15日間まで無料で授業が受けられる。親が死亡した場合でも、すべての子どもが学校を修了できることを保証する保険も受け取ることができるのだ。
2012年、世界最大の多国籍教育企業であるピアソンは、オメガスクールに投資する大規模な投資ファンドを設立し、同校は2013年の時点で、ガーナ全土に保育所から中学校までの20の学校を開校した。また、各教育機関を構成する教材や制服、管理を含めチェーン全体で均一性を前提としてフランチャイズを行うことで、効率性をはかっている。
加えて、低コストな学校運営を実現するため、高卒者を教員として雇用している。経験が豊富な教師を雇って本部で授業計画を作成し、教師研修プログラムを確立することで、独自のカリキュラムで教師を育成する。こういった革新的な事業計画によって、ドンコー氏は「ブランド化された低料金の私立学校の、持続可能な大規模チェーン」を確立することに成功した。
低価格の私立教育モデルは、国外でも大きな注目を集めている。オメガスクールはすでにシエラレオネ、リベリア、ガンビア、ナイジェリアへの進出も始めている。現在、このチェーンには38の学校があり、数万人の生徒に教育の機会を与えてきた。
当初、貧しい子どもたちに質の高い教育を利益を上げて提供することは不可能だとほとんどの人が考えていた。しかし、低所得層向けのビジネス(BOPビジネス)は、巨大な市場であり、経済規模を利用して社会を変える営利的なアイデアが生み出されることもありうる。
オメガスクールは、世界で最も貧しい地域の教育ニーズに取り組み、営利的な解決策を実証した学校といえるだろう。
※1 ユニセフ「世界子供白書2021」
※2 Omega Schools Franchise in Ghana: ‘affordable’ private education for the poor or for-profiteering?
【参照サイト】Omega Schools – WISE
【参照サイト】Amazing! How this low-cost private school chain is educating poor children for profit in Ghana
【参照サイト】Omega Schools | Devex
Edited by Kimika