ごみ拾いをしながら無料でカヤックを楽しめる。ヘルシンキで「海のプロギング」を体験

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せっかく海に来たのだから、マリーンアクティビティを楽しみたい。しかし、すべての人が、アクティビティに使えるお金を潤沢に持っているわけではないし、単に「楽しむ」以上の体験を探している人もいるのではないだろうか。

フィンランドの首都ヘルシンキでは、そういった「楽しむ」に付随する経済的な制約にとらわれず、世の中に良いことをしながら、さらに海のアクティビティを楽しめるスポットがある。それが、Itämeri Plogging(イタメリプロギング)だ。

プロギングとは、もともとジョギングをしながらごみを拾うことという意味の造語である。イタメリプロギングでは、カヤックをしながらごみを拾うことで、カヤックを無料で楽しむことができる。

筆者も実際に現地で体験してきたので、レポートしていく。ヘルシンキエリアだけで約4箇所のカヤックをする海岸を選ぶことができ(ヘルシンキ市以外にも、トゥルク市やオウル市にもある)、場所と日程をオンライン上で予約する。カヤックは基本的に二人乗りなので、先にバディを探すとよいだろう。

当日は、濡れてもいい格好で向かう。スタッフに声をかけると、簡単にカヤックのやり方やごみ収集および計測のやり方を教えてくれる。

準備が整ったらさっそく海へ。当日はあいにくの小雨模様だったが、なんとか海に繰り出すことができた。筆者はカヤックに乗るのは初めてだ。こんなに水と近いとは思っていなかった。風が吹くと流される。気分はまるで波である。

海の真ん中であたりを見渡す限り、あまりごみはなさそうだ。想像とは違い、缶やペットボトルのような目立つごみは見当たらない。

一緒にカヤックに乗った友人と「一つもごみが見つからなかったらなんだか悔しいね」と笑いながら、必死でごみを探す。

ごみが溜まりやすい岸辺に向かい、しばらく岸沿いにカヤックを漕いでいると、岸辺や岩の間に、目立つビビッドカラーを発見。小さな「宝物」をやっと見つけた。

ごみ取りツールで宝物を必死に掴む。カヤックのバランスを取りながらのごみ拾いはなかなか難しい。

正味1時間くらいだろうか。小さな湾をくるりと回り、カヤック置き場に戻り、スタッフと共にごみを計量した。「0.125グラム?計量器が壊れているかも?あ、動いた」なんて言いながら、スタッフがごみの量を記録する。

もう一組同じ時間帯にカヤックプロギングをしていた人たちがいたが、そのチームはごみを見つけることができなかったようだ。私たちの「勝利」である。

「ごみ、あんまりなかったよ」とスタッフに言うと、「このあたりはみんながプロギングをしてくれてきれいになっているんだ」と教えてくれた。ごみがないことはよいことだけど、プロギングでごみが拾えなかったら、少し残念だと複雑な気持ちになった。本来は喜ぶべきことなのだが。

この活動を主催しているのは、フィンランドのチャリティ団体だ。澄んだ湖のイメージが強いフィンランドだが、実はその土地が面するバルト海は、世界一汚い海の一つとされている。海洋汚染にはさまざまな理由があるが、特に最大の原因と言われているのが土地利用等の影響による富栄養化の進行だ。そして、海へのごみ捨ても問題視されている。

カヤックでプロギングをすることで、人々は実際に近くで海を見たり、ごみに触れたりとバルト海の現状を五感で体験することができる。これは、海洋ごみ問題について書籍などで知識として学ぶのとは大きく異なる経験だ。

イタメリプロギングは、夏の間(主に5月末〜8月末)だけ体験することができる。また、自動車メーター「ボルボ」が出す電気自動車(EV)「ポールスター2」とカヤックがコンビネーションになったプランもあり、ドライブを楽しみつつ、場所を変えてカヤックプロギングをすることもできる。イタメリプロギングの他にも、Green Kayakという団体もカヤックプロギングの体験を提供している。

もしフィンランドに訪れる機会があれば、バルト海をカヤックプロギングで楽しんでみてはいかがだろうか。バルト海との新たなつながりができるだろう。

【参照サイト】itameri Plogging(イタメリプロギング)
【参照サイト】Eutrophication
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