子どもを持つ親の中には、ある程度子育てがひと段落したら働きに出るという人もいる。最近では育児費の高騰や保育所費用の上昇、そして共同養育の取り決めなどもあり、身近な祖父母が子どもの世話を担うこともあるだろう。
しかし、そうした家庭内のケア労働は無償で行われることがほとんどだ。祖父母も、孫の相手をするだけで疲れることもあるだろう。また、仕事をしている祖父母は孫の世話のために休みを取らなければならないということもあり得る。国の福祉制度がもっと充実していれば……と思う親や祖父母も多いのではないだろうか。
2024年7月1日、スウェーデン政府は育児手当の権利に関する画期的な新法を施行した。その制度とは、いわゆる「祖父母手当」だ。家族内のケア労働の対価として、親が受け取る有給育児手当の一部を祖父母に提供するというものだ。
新法では、二親の場合は子どもが生後一年の間に最大45日間、母子家庭または父子家庭の場合は最大90日間、祖父母に育児手当を譲渡することが可能となる。(※ただし、育児休暇を取った祖父母が定年になっている場合、育児手当は年金ベースで算定される。)育児手当を受給している間、求職活動や学業に携わることは認められない。
北欧スウェーデンの福祉制度は、高額な税金で賄われていることはよく知られている。家庭の経済状況にかかわらず、生まれてから死ぬまで、すべての人々の面倒を国がみるという進歩的な社会福祉制度が保障されているのだ。
その先駆けとなったのが、1974年に導入された共同育児休暇制度だった。スウェーデンはどの国よりも早く、母親と父親の両方が子ども一人につき、6ヶ月間の育児休暇を受け取ることができるようになったのだ。
スウェーデンでは、子どもが8歳(公務員の子どもは12歳)になるまでは労働時間を短縮することができ、子ども一人につき約16ヶ月の育児休暇を子どもの母親と父親ニ人で分け合うことができるという福祉制度がある。育児手当においては、親が受け取る最初の390日間は既存の給与の80%、残りの90日分は1日あたり180クローナ(約2,700円)の定額支給となっている。
スウェーデンの社会保険庁の調査では、1974年に共同育児休暇制度が導入されたものの、当時は父親が取得した有給育児休暇はわずか0.5%に留まっていた。しかし2024年現在、その数字は約30%まで上昇している。それだけ積極的に育児に参加する父親が増えたということだ。
祖父母が娘や息子に代わって孫をみるのであれば、それに見合う経済的支援が妥当だと認めるスウェーデンの新しい育児休暇制度は、家族に柔軟性と選択肢を提供してくれる新たな法律と言えるだろう。こうした国の支援が、一人ひとりの生活を充実させることにつながっていくのではないだろうか。
【参照サイト】Sweden’s new parental leave law pays grandparents to care for grandkids
【参照サイト】The European country where grandparents are now paid for looking after their grandchildren
【参照サイト】Sweden’s ‘groundbreaking’ new law allows grandparents to take paid parental leave
【参照サイト】Sweden is a top performer on well-being. Here’s why
【参照サイト】forsakringskassan
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Edited by Megumi