「最近、年を取ったよね」と言うとき、次に続くのはどんな言葉だろう。「体力が落ちてきた」「代謝が悪くなった」「物忘れをするようになった」──ちょっと自嘲気味に、あるいは仲間内でからかいあうように、そんな台詞を続けるかもしれない。
あるいは、「あの人老けたね」と言うとき。青春時代によく見ていた有名人が年を重ねるのを見ながら、時代の流れを感じ「あの頃は良かった」「最盛期は過ぎてしまった」と寂しげに続けるかもしれない。
社会には「高齢者は虚弱である」「いつも助けを必要とする側である」「老いるほどできることが少なくなっていく」など、加齢に関するスティグマが存在している。それらによって、私たちは加齢を受け入れがたく感じ、年をとることに恐怖すら感じてしまうことがあるのだ。アメリカの長寿ケア企業・Modern Ageが行った調査によると、回答者の97%が「少なくとも週に一度は老いについて考える」と回答し、75%以上の回答者が「老いることを恐れている」と答えた(※)。
そこで、同社が実施したのが、老いに対するネガティブなイメージを変える「The Aging Index(加齢の索引)」キャンペーンである。同社は「老人」「お年寄り」「老いぼれた/ぼけた」など、一般的に使用されているが時代遅れとなっている老いにまつわる用語を、下記のようにアップデートしたのだ。
- Senior Citizen(高齢者)→Seasoned Citizen(熟練者)
- Over-the-hill(全盛期を過ぎた)→Zenith(全盛期)
- Middle-aged(中年)→Evolved(発展者)
- Boomer(ベビーブーマー)→20th Century Modern(20世紀のモダン)
- Geriatric(老年者)→ Advanced(高等者)
- Retiree(定年退職者)→Post-career(ポストキャリア)
- Sunset years(老後)→Vital years(生き生きした/重要な年)
- Senile(老いぼれた、ぼけた)→Relaxed Tempo(リラックスしたテンポ)
- Old-timer(老人)→Venerable(尊敬すべき人)
- Elder(お年寄り)→Wise Adult(賢明な大人)
Modern Ageは、WEBサイトのなかで下記のように語る。
「私たちは、老化への恐怖を乗り越えることは、老化プロセスについて話すときに使う言葉そのものから始まると考えています。 ライフステージを定義するために使われる用語は、時代にそぐわなくなってきました。今こそ、これらの言葉に新しい命を吹き込み、年をとることで生じる変化を受け入れるときです」
言葉はときに、私たちを制限する。だが、その制限を解き放ってくれるのもまた言葉だ。用語をアップデートすることは、私たちの意識をアップデートすること。そして、心を縛っていた鎖を解き放ち、自由にすることなのである。
※ Meet The Aging Index: An Updated Way to Talk About Aging(MODERN AGE)
【参照サイト】Meet The Aging Index: An Updated Way to Talk About Aging(MODERN AGE)
【参照サイト】Modern Age Gives Outdated Aging Terms an Update(Fitt Insider)
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