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エイジズム(年齢差別)とは・意味

エイジズムとは

エイジズムとは

エイジズム(年齢差別)とは

エイジズムとは、年齢に基づいたステレオタイプや、偏見、差別のこと。わかりやすく言うと、「いい年してこんな格好をするなんて」「~するには年を取りすぎている」と決めつけたり、人が何かを物忘れしたらすぐに「年を取ったからな」と言ったりすることは、無意識な年齢差別の表現にあたる。1969年、アメリカ国立老化研究所の初代所長であったロバート・ニール・バトラー(Robert Neil Butler)が提唱した。

「老い」とは人としての価値が下がることとし、それに抗うためにアンチエイジングに精を出したり、老いた自分に相応しくあるために行動範囲を制限するような、自分に対する偏見にもエイジズムの表れがある。

同じくアメリカの老年学者エルドマン・パルモア(Erdman B. Palmore)は、エイジズムを「ある年齢集団に対する否定的もしくは肯定的偏見または差別である」と定義しており、レイシズム(人種差別)とセクシズム(性差別)につづく、三番目の重い差別であると主張している。肯定的なエイジズムとしては交通費や医療費の無償化や、経験豊富と見られることなどが挙げられるが、実際にはネガティブな側面が強調されがちである。

たとえば、科学ジャーナルThe Gerontologistの2013年号では、SNS上で高齢者がどのように扱われているかを調べた研究が掲載された。それによると、Facebookで高齢者の話題を多く出している84の公開グループのうち、ほとんどは20代の人々によって作成されており、全体のグループの75%近くが高齢者を批判するために存在し、40%近くが「高齢者は運転や買い物などの積極的な活動を禁止したほうがいい」と主張していることが明らかになった。

エイジズムとステレオタイプ

アメリカの心理学者スーザン・フィスケは、若者が高齢者に期待する行動(ステレオタイプ)として典型的な3つのパターンがあると説明している。

  • 継承

年配の人は「自分の番がある」と思い込んでいることが多いが、若い世代のために道を譲るべきだ

  • 消費

限られた資源を、年配の人ではなく若い人のため(自分自身)に使うべきだ

  • アイデンティティ

喋り方や服装など、若い人のアイデンティティを盗まないでほしい。年を取ったら、相応に振舞うべきだ

思い当たるものはないだろうか。イェール​大学公衆衛生大学院の疫学(社会行動科学)教授であるベッカ・レヴィは、自身のステレオタイプ具体化理論(SET)の中で、社会には「暗黙のエイジズム(Implicit ageism)」があり、それはほとんどネガティブなものだと述べる。

エイジズムは、何が問題なのか

エイジズムによる問題は、簡単に言うと「無意識な権利の侵害」だ。今、日本に限らず世界でも差別的な表現だと気づかずに「汚い老人」「第二の子供時代」などのフレーズは使われている。新しい挑戦や好きな服装などが、偏見に晒されることによって制限されることはもちろん、収入が少ないために必要な医療に届かない、新しく住居を借りることが難しいといった問題に対して「老人は人生の舞台から降りるべきだ」「高齢だから仕方ない」と片付けてしまうことなども人権侵害にあたる。

また、看護などヘルスケアの現場などではお年寄りに「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼びかけて敬語を使わなかったり、幼児言葉を使ったりというようなことも行われており、人によっては、人としての尊厳を感じられなくなるケースもある。

老いることは自然なことで、老いない人はいない。成熟社会において平均寿命が延び、高齢化していくのは避けられない中で、生きづらい老後を過ごさないといけない。エイジズムが絞めているのは「他者」である老人の首ではなく、まさに将来の自分の首だということを忘れてはいけない。

世界のエイジズム対策

WHO(世界保健機関)は、エイジズムを削減または排除するには、「政策と法律」「教育活動」「世代間の介入」という3つの戦略が役立つとしている。

政策と法律は、年齢に基づく差別と不平等に対処し、あらゆる場所のすべての人の人権を保護する。教育活動は、正確な情報とステレオタイプでない例を提供することにより、共感を高め、さまざまな年齢層に関する誤解を払拭し、偏見を減らす。異なる世代の人々を結びつける世代間の介入は、グループ間の偏見や固定観念を減らすのに役立つ。

政策と法律の例としては、EU(欧州連合)が2006年末にすべての加盟国で年齢差別を禁止する法律を制定したことがあげられる。また、アメリカでは1967年に法制化された「雇用における年齢差別禁止法 (ADEA)」 によって、40歳以上に対する年齢差別が厳しく規制されている。就職のための履歴書への生年月日や性別、年齢の記載、顔写真の添付も不要であることが多い。

エイジズムのない世界

女性でいることは男性でいることよりも不利だ、と思わせられるのは女性器を持つから不利なのではなく女性差別があるから不利なのだ、というように、年を取りたくない、年を取ることは惨めなことだ、と考えるのは年齢差別がそうさせるのだという考え方がある。

性差別、人種差別、年齢差別など諸々の差別がなくなった先にあるものは「一人ひとりを所属やカテゴリーではなく『人』として捉える」世界の実現だろう。幼少期から少しずつ作られていく柵から解き放たれれば、どんな性で出身地がどこでも、何歳になろうとも、自分にしかない個性を発揮しながら、生きやすくなるのではないだろうか。

【参照サイト】How Does Implicit Bias Influence Behavior?
【参照サイト】Eradication of Ageism Requires Addressing the Enemy Within
【参照サイト】欧米諸国による年齢差別禁止と日本への示唆




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