高吸水性で堆肥化可能な、世界初の「海藻タンポン」。ベルリンのスタートアップが開発

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日本では、食べものとして多くの人になじみがある海藻。近年では、私たちが手にする衣類や包装フィルムなどさまざまな製品に藻由来の原料が使用されている。そして驚くことに、女性にとって身近な生理用品も、生分解性素材の海藻を使って作る企業が誕生している。

生理用品のほとんどは生分解性ではないプラスチック製であり、分解されるのに約500年から800年かかる(※1)。使い捨て生理用ナプキンには最大90%、タンポンにはアプリケータを除いて最大6%のプラスチックが含まれており(※2)、生理用品だけで排出されるプラスチックごみは毎年何十万トンという単位だ。そのほとんどは埋立地に送られ、焼却される。

その状況を改善しようと、ドイツ・ベルリンを拠点とするスタートアップ企業・Vyld(ヴィルド)は、ワカメやコンブ、ヒジキなどの褐藻類から抽出されたバイオポリマー繊維で作ったタンポン「Kelpon(ケルポン)」を開発した。

Image via Kelpon

海藻は再生可能な資源であり、真水、農薬、肥料、土地資源を必要とせず、高速で成長し、その過程で大量のCO2と窒素を結合し多くの酸素を生産する。そんな海藻で作られた素材は、吸収性が高く、天然の白色で化学漂白の必要がない。生理用品の素材として、最適というわけだ。

2023年の秋、Kelponの初期のプロトタイプを完成させたVyldは、100人以上の女性に実際にタンポンを使ってもらった。実験参加者からは「絹のような表面構造により、従来のタンポンのように周囲にプラスチックのカバーがなくても挿入しやすく、膣内の粘膜が乾燥しにくい」という意見が得られたという。彼女らは、海藻からタンポンができることに驚きを隠せなかったようだ。

同社では、Kelponだけでなく海藻を素材にした堆肥化可能な紙おむつ「Vyndel(ヴィンデル)」も開発し、その実験も行った。プラスチックフリーかつ化学的な吸水材不使用の使用済み紙おむつは、管理された条件下で堆肥化され、“紙おむつの森”として小さな植林地に利用されることになる。

Vyldの創設者イネス・シラーさんとメラニー・シチャンさんは、海藻を循環型製品の原料として使用するプロジェクトを開始するにあたり、クラウドファンディング・キャンペーンを行った。(クラウドファンディングは2023年に成功して終了。)そして、同社は「フューチャー・プロフィット・パートナーシップ・アグリーメント(FPPA)」という資金調達手段を利用し、ドイツ政府やEUの支援を受けることにも成功した。

またVyldは、従業員など企業に直接関わる人々が株式を所有し、会社の運営を行う「スチュワード・オーナーシップ」を取り入れた。短期的な利益追求ではなく、企業が社会や環境への責任を重視することができ、利益は自社に再投資されるか、慈善団体に寄付される仕組みだ。

海藻が次世代プラスチックを作る時代は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。長期的なパーパスを追い求めるVyldのような企業が、今後どのように海藻が持つポテンシャルを引き出していくか、注目していきたいところだ。

※1 A Study into Public Awareness of the Environmental Impact of Menstrual Products and Product Choice – MDPI
※2 Menstrual products: A comparable Life Cycle Assessment – ScienceDirect

【参照サイト】Vyld
【参照サイト】Case study: The profit-for-purpose company, Vyld
【参照動画】Tampons made from seaweed! Vyld Crowdfunding
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Edited by Megumi

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