Sponsored by ヨコハマ未来創造会議
今住んでいる地域の未来を、想像してみてほしい。人々はどんな暮らしをしているだろうか。そのまちで、自然はどのように息づいているだろうか──想像の中に「自分」の役割を位置付けてみると、現在の行動にも変化が生まれる。
そんな変化が、横浜で若者が主体となり動き出している。環境と共生する未来に向けて、プロジェクト創出のきっかけを生むプラットフォーム「ヨコハマ未来創造会議」における分科会活動だ。
大学生から企業の若手社員など多様な参加者約40名が、計5つのグループを作り、自然・人・社会が共に持続する社会の構築をテーマに横浜を舞台としたプロジェクトを企画・実施している。国際都市としても知られるグローバルな一面がありながら、地域に根ざした「顔」の見える課題解決アクションが動き出しているようだ。
プラネタリー・バウンダリーが叫ばれる現代、横浜では3年後に、地球環境や自然・植物との共生をテーマとしたGREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)の開催を控えている。ヨコハマ未来創造会議はこれを契機の一つと捉え、横浜での取り組みを発信する場にすべく、現在ワークショップや分科会などを通してプロジェクトの醸成を促しているのだ。
その分科会活動の中間報告会が、2024年10月8日、横浜国際協力センターにて開催された。そこでは、プロジェクトを行う上でのプロトタイプの進め方に関するメンター陣からの講義や、各チームへのフィードバックがおこなわれ、プロジェクトをアイデアにとどめず、社会で実装されていくための議論が飛び交う場となった。
環境問題への意識が高まる今、環境との共生を目指す地域プロジェクトには何が求められるのか。それを、どのように地域の暮らしの中で実現させることができるのか。ぜひプロジェクトの一員になったつもりで、本記事を読み進めていただきたい。
完璧じゃなくても、想いを形にしてみる「プロトタイプ」の重要性
2024年7月に本格始動した、ヨコハマ未来創造会議の分科会活動。メンバーは自身の関心に沿った分科会に所属しており、そのテーマは海上農業から新たな横浜観光、フードロス、謎解きプログラム開発、ウェルビーイングの創出まで、多岐にわたる。
すでにアイデアが固まり始めた今、彼らが踏み出すべき一歩は何なのか。ヨコハマ未来創造会議でメンターを務める、横石崇氏と守田篤史氏は「プロトタイプ」に踏み出すよう背中を押した。
話者プロフィール:横石崇(よこいし・たかし)
&Co. 代表取締役 / Tokyo Work Design Weekオーガナイザー
多摩美術大学卒。2016年に&Co.を設立。ブランド開発や組織開発、社会変革を手がけるプロジェクトプロデューサー。アジア最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」では3万人の動員に成功。鎌倉のコレクティブオフィス「北条SANCI」や渋谷区発の起業家育成機関「渋谷スタートアップ大学(SSU)」、シェア型書店「渋谷◯◯書店」などをプロデュース。法政大学兼任講師。著書に『これからの僕らの働き方』(早川書房)、『自己紹介2.0』(KADOKAWA)がある。
話者プロフィール:守田篤史(もりた・あつし)
Paper Parade Inc. Co-founder / Creative Director / Printing Director
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。「紙や印刷の新しい価値を生み出す」をテーマに、フィジカルの境界を横断しながら独自の世界観を創出するデザインを提案している。下町の印刷・紙加工工場との協働を通じてプリンティング、プロセッシング技術の知見を深める。アートディレクターとプリンティングディレクターの2つの視点からの提案を得意とし、サーキュラーの観点からプロジェクトをプロデュースするといったサステナブルな領域のデザインも提案している。国内外の受賞歴多数。2024年より神奈川大学 非常勤講師。JAGDA会員。コーヒーブランド・キッチンスペース「1 room kitchen」主宰。
横石氏「何かプロジェクトを立ち上げたとき、プロトタイプは、フィードバックをもらえる機会として位置付けています。なので、プロトタイプを通じて獲得したいフィードバックの解像度を上げておくことが重要です」
横石氏が例に上げたのが、知的障害のある人がアーティストとして活躍する場を創出する株式会社ヘラルボニーのプロトタイプだ。現在は社会に広く知られる存在となった同社も、2019年頃はアイデアだけを持っている状態で、社会実装に向けた最初の一歩となるプロトタイプを模索していた。
このとき、横石氏や守田氏とも議論を交わしていたという。当時ヘラルボニーが検証しようとしていたのは「知的障害のある作家さんのアートを社会貢献ではなく、きちんとビジネスにする」ことであった。そこで、多様なカルチャーが混ざり合う渋谷を舞台とした3ヶ月間の「ソーシャル美術館」の実施に至ったのだ。この展示を通じて訪問者からさまざまなフィードバックを得たことが、その後の動力源になったという。
必要とするフィードバックや検証を明確にすることに加えて、守田氏は「この結果・返事が返ってきたら、次はこれを試してみよう」と次の一手を計画しておくことも重要だと語る。
守田氏「プロトタイプを作っている時点で、結果に応じたプランを立てていると、すぐに次の行動に移していくことができます。こうすることで、高速でPDCAを回すことができるんですよね。ダメだったら良かったところまで戻るというのが合言葉です。
例えば、私が廃棄包装のアップサイクルを依頼されたとき、2週間ほどでシート状の素材を作り、先方に送り返すこともあります。プロトタイプは、取り組みのビジョンを共有する『手段』に過ぎないので、できるだけ早く具体的な形にすることが必要です」
より早ければ、素材を手にして2日後にサンプルができることもあるという。こうして素早くプロトタイプを実践することによって、関わる人の意欲を損なうことなく、プロジェクトを前進させることができるのだ。
完璧じゃなくても、想いを形にして誰かに届けてみる。その反応を受け取り、改善を重ねる。その一連のコミュニケーションは、実はただプロジェクトを進めるためのステップになるだけではない。チームのワクワクや熱量を引き出すものでもあるというのだ。
参加メンバーの誰もが、両氏の講義をまっすぐに聞き入っていた。具体的なプロジェクトを動かそうとする彼らに、その言葉はどう響いただろうか。
メンター陣との対話から見えた、同志を引き寄せる「伝え方」のカギ
5つのチームには、今後それぞれにメンターが割り振られ、12月の最終報告会に向けて議論を交わしながらプロジェクトを実践していくこととなる。
その2ヶ月前となる中間報告会の時点では、待ちきれずプロトタイプを作成したチームから、アウトプットの形式に悩むチームまで、さまざまな段階が見受けられた。どのような取り組みが立ちあがろうとしているのか、そしてメンターとの議論から何が生まれたのか。
プロジェクトの全貌は最終報告会に残しておきつつ、対話の様子を覗いてみよう。
サステナブルツーリズムから考える、新たな観光要素「(仮)シン・ヨコハマ」の発掘
世界に誇れるヨコハマの「コト・モノ・バショ」の新たな観光要素の発掘を目指す分科会。特に、プラントベースの食材を活用した「(仮)ヨコハマグリーンバーガー」による観光促進を計画している。複数の社会環境課題の潮流をよく捉えていた一方で、「広報において一番強調したいポイントはどこか」を明確にはできていない点が課題にあがった。
またメンターからは、神戸ビーフをベンチマークに捉えて人気の秘訣を探ることが助言された。観光要員になっている既存ブランドや、すでに手に入るプラントベースの肉を調査・実食することがネクストステップとなったようだ。
メンタルヘルス×ネイチャーポジティブで生まれる持続可能なローカルコミュニティとは?
メンタルヘルスを自分ごとにするべく、癒しをテーマに多様で手軽なセルフケアの提案を目指す分科会。プロトタイプとして、さまざまなケアを実践している人に話を聞き、その内容を発信していくとのこと。横浜という都会の暮らしでも自然と人間がより良い形で共存できる方法や、ネイチャーポジティブに貢献できるメンタルヘルスケアを模索していくそうだ。
一方課題にあがったのは、伝わりやすさ。良い問いはシンプルな言葉でまとまる必要がある、との指摘があったのだ。これから「伝わるタイトル」を目指していく中で発信のキーワードにも磨きがかかることに期待が寄せられた。
フードサーキュラーを起点に子どもの可能性を最大化するには?
横浜のフードロス、特に給食のフードロス削減に取り組もうとするチームだ。まずは捨てられる食材をリデュース・リユースしていき、生産者(農家)から消費者までが幸せになれる、食のコミュニティを横浜で構築することを目標としている。しかし最終的には、給食に閉じるのではなく、食育にもつながるプロジェクトを目指していることから、テーマの広さをうまく捉えた伝え方が課題として見えたという。
また、大きなゴールであるがゆえに、乗り越えるべき課題も多岐にわたる。報告会では、その大きな目標に対して今踏み出すべき一歩目が何であるのかを明確にする必要性が指摘された。ビジョンを可視化しつつも、現実社会における実装方法が精査されると、夢物語ではない変革へと踏み出すことができそうだ。
インクルーシブな横浜のグローバルコミュニティから考える生物多様性を守るためのアクションとは?
横浜の生物多様性と文化多様性をテーマにした地域型街歩きプログラムの開発を目指す分科会。マップを頼りにチェックポイントを探し得点の獲得を目指す、ゲーム形式の競技・ロゲイニングを土台に採用している。これを通じて、日常的に接することがない多様なバックグラウンドの住民同士が繋がる機会を創出すること、地域の自然に触れ生物多様性のアクションの一つを提供することを目指す。
今後パイロット版の実施およびハンドブックの作成を予定している。ただしロゲイニングという競技名の認知度が低いことを踏まえ、よりわかりやすいタイトルを検討していくとのこと。広い横展開も期待できる本プロジェクトだからこそ、より人々の心を掴むようなタイトルの設定がカギとなりそうだ。
横浜の海で植物を育てられたら?
横浜での海上農業の実現を掲げる分科会。人口が増加する中で淡水が希少になっていることを課題と捉え、海上で食用の植物を育てることを目指している。今回、すでにブロッコリースプラウトでプロトタイプを作成していた。
会場の議論では、水不足が世界的に深刻な課題であるものの、島国の日本では身近には感じにくいことが障壁としてあげられた。これを克服するには、プロジェクトが実施された未来と、そうでない未来の双方を言語化・可視化することで、必ずしも課題意識が合致しない相手でもプロジェクトの重要性を伝えることができるよう準備することが必要とのことだ。
メンバーが見据える、市民目線での横浜の未来
セミクローズドではありながら、一つのお披露目の場ともなった中間報告会。メンターの5名からは、行政関係者や地域の多世代が関わる企画であるからこそ、伝わりやすいキャッチフレーズを見出し、連携の可能性を最大化することの大切さが改めて強調された。また、メンターの指摘を鵜呑みにせず、消化しながら取捨選択する必要性も。メンターの存在は、プロジェクトを社会につなぐ架け橋となりそうだ。
こうした助言と応援を受け、分科会のリーダーからは「外部からのプロジェクトの見え方を捉えることができた」「チームでこだわりの取捨選択を進めたい」など、すでに次の一歩を模索しようとする言葉も聞かれた。
彼らが描く横浜の未来は、現在のグローバルな都市環境が基盤となりながらも、顔が見える地域のつながりが紡がれ、暮らしと自然環境がより日常的に交錯するような社会として描かれる。5つのプロジェクトがその片鱗となり、市民の声からまちに変化が広がるのではないかと、希望が感じられた。
編集後記
どのチームにも共通する、ある特徴が感じられる場であった。それは、分科会リーダー以外を含めた全員が、メンターからの投げかけに対して主体的な意見や問いを出すことができることだ。
自ら志望して参加しているのだから当たり前かもしれないが、横浜というまちに愛着や関心を持ち、仕事や学校が終わった後に集まり議論を交わす姿勢は印象深い。まさに市民による民主的なまちづくりの一面を目の当たりにしたようだった。
そんなエネルギーの集まりが、これから横浜の未来をどのように想像、そして創造していくのだろうか。2024年12月中旬には、さらに広いアクターを迎えての最終報告会が予定されている。そこで、プロトタイプの実施を経てさらに洗練されたプロジェクトに出会い直すことを心待ちにしていたい。
※ 最終報告会を含む「ヨコハマ未来創造会議」の活動は公式サイト及び各種公式SNS等で発信予定。最新情報は下記のサイトをご確認ください。
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※ 本記事はヨコハマ未来創造会議とのタイアップ記事となります
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