「どうせ社会は変わらない」を変える。米国の私立高校、学生の訴えにより化石燃料への投資を廃止

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2024年の夏の猛暑。秋風に乏しく、寒さが一気にやって来る今の気候。やはり、地球の気候が変だ。

欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」の最新の分析によれば、2024年の世界の平均気温は産業革命前の水準より1.5度以上高くなる可能性が高いとされている。各国が現在の温暖化対策を今のペースで続ければ、世界の平均気温は今世紀末までに産業革命前から最大で3.1度上昇する可能性があるとも警告されている(※)

政治、経済、社会、科学など様々な要因が絡み合う気候変動対策。「どうせ個人では何もできない、状況は変わらない」。こんなふうに無力感に陥っている人も少なくないのではないだろうか。

そんななか、アメリカの高校生がダイベストメント運動で勝利を収めた。ダイベストメント(投資撤退)とは、環境や社会問題に悪影響を及ぼす企業から資金を引き揚げることで、持続可能な未来を目指す取り組みだ。

サンフランシスコの名門私立高校、ヌエバ・スクールでは、2024年春に理事会が5,500万ドル(約85億円)の基金の一部を再生可能エネルギーに投資し、化石燃料への投資を行わないことを決定した。この動きは、学生たちのダイベストメント運動の成果であり、環境や社会に配慮した投資を促進するものである。

活動の特筆すべき点は、学生たちが単に「No」を突き付けるのではなく、6年間にわたって対話を通じて理事会との関係を築き、新たな枠組みを提案したことだ。この枠組みは「投資撤退(ダイベストメント)と再投資」の組み合わせであり、単なる撤退にとどまらず、再生可能エネルギーという未来志向の分野への投資を含んでいる。学生たちはただ批判するだけでなく、具体的で建設的な解決策を提示し、未来へのポジティブな影響をつくり出したのだ。

ヌエバ・スクールの運動を引っ張ったのは、International High School Clean Energy Investment Coalition(国際高校生クリーンエネルギー投資連合)のメンバーで、私立高校の生徒たちからなるグループだ。11か国、約50校の高校生が参加している。

世界では、ここ数年で260以上の教育機関が化石燃料企業への投資撤退を決定している。2015年にペンシルべニア州の高校が1億5,000万ドル(約231億円)もの寄付金を炭鉱会社の株式から切り離したのを皮切りに、その後いくつもの高校、大学で生徒・学生によるキャンペーンが続き投資撤退が実現している。

若者たちは、自分たちにできることを真剣に模索し、行動に移している。「何もできない」という無力感に陥ってしまうこともあるが、少しずつでも皆が取り組めば、「何かできる」のではないだろうか。学校や企業で、ダイベストメントの声を上げること。Noだけではなく対話を通して皆で学び、よりよい解を見つけること。米国の高校生の運動には、私たちの無力感を破るヒントがあるはずだ。

Emissions Gap Report 2024
【参照サイト】US students score win in push for fossil fuel divestment by private high schools
【参照サイト】The International High School Clean Energy Investment Coalition
【参照サイト】Global Climate Highlights 2023
【参考文献】UNEP Emissions Gap Report 2024
【参照サイト】Global fossil Fuel Divestment Commitment Database

Edited by Erika Tomiyama

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