世界の環境リーダーを迎えるUAEの「ブルービザ」。脱石油依存につながるか

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2024年、アラブ首長国連邦(UAE)の人口は約1,100万人に達し(※1)、経済とともに急成長している。UAEの豊かな経済は、多くの中東諸国と同様に、主に原油の輸出によって支えられてきた。しかし、急速な発展の裏で、水不足や砂漠化、大気汚染、生物多様性の喪失、海岸浸食などの環境問題が深刻化している(※2)

こうした課題に対応するため、UAEは環境保護を強化し、再生可能エネルギーへの投資や水素エネルギーの開発といった産業の多角化を推進している(※3)。その一環として、2025年2月18日、UAE気候変動環境省は外国人に10年間の居住ビザを提供する「Blue Visa(ブルービザ)」を正式に導入することを、連邦身分・市民権・税関・港湾保安局(ICP)と共同で発表した。

ブルービザは、UAEがすでに導入しているゴールデンビザ(10年間有効で就学・就労が可能な居住ビザ)やグリーンビザ(5年間有効で就労可能な居住ビザ)の制度を拡張したもので(※4)、持続可能な環境保護活動に特化している。取得対象者は、持続可能性に関わる国際組織や企業のメンバー、協会や非政府組織の関係者、環境保護活動における世界的な受賞者、持続可能性に関する著名な活動家や研究者などだ。

第一段階では、UAE以外の環境保護分野で偉大な貢献をした個人20人が対象となる。申請はICPの公式サイト(ICP申請ページ)を通じて直接行うか、UAE当局の推薦を受けて取得することが可能だ。ブルービザを取得した環境リーダーは、UAE政府から資金援助も受けることができる。

UAEは中東で最初にパリ協定を批准し、「Vision 2021」の目標を掲げて2050年までに温室効果ガス排出量のネットゼロを目指すことを宣言した。2023年のCOP28(第28回国連気候変動枠組条約締約国会議)では議長国を務め、国際的な環境政策を主導しようとしている。

UAEは持続可能な都市開発プロジェクトとして、スマートシティ構想を進めている。アブダビにある未来型実験都市「マスダールシティ」のようなゼロカーボン都市の開発や、再生可能エネルギーの導入を促進し、環境対策と経済成長の両立を目指しているのだ(※5)

今後、UAEのブルービザによる環境支援政策を機に、日本を含む各国の専門家や企業がビジネス機会を求めて移住する動きが広がる可能性がある。脱石油依存を目指し、「人材」を軸にした環境開発の推進は、UAEの経済だけでなく、他国の政策やビジネスにも影響を与えるかもしれない。

※1 United Arab Emirates Population World Meter
※2 What are the Environmental Issues in the UAE? Recapp by Veolia
※3 UAE Sustainability Initiatives Emirates GBC
※4 Dubai visas for visits, work and living
※5 Welcome to the city of tomorrow Masdar City
【参照サイト】UAE Launches ‘Blue Visa’ For Leaders in Environmental Sustainability
【参照サイト】UAE Blue Visa: This 10-year residency visa is for eco-conscious individuals
【参照サイト】UAE launches first phase of 10-year blue visa programme for environmental
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Edited by Megumi

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