開発ではなく、自然保護での復興を。LA火災後の土地を“コミュニティの財産”に変えたNPO

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気候変動の影響により、アメリカ・カリフォルニア州では森林火災が毎年のように発生し、多くの住宅や自然が被害を受けている。ロサンゼルス郊外のアルタデナも例外ではなく、2024年の大規模火災・Eaton Fireにより、多くの住宅が焼失した。

通常、このような被災地の土地は開発業者に買収され、再開発されて高級住宅地に変わることが多い。開発業者にとって、被災地の土地は比較的安価で取得でき、再開発による利益が見込めるからだ。しかしその結果、もともと住んでいた人々が戻れなくなるケースも珍しくない。

2025年3月、アルタデナ地区ではNPOのGreenline Housing Foundation(グリーンライン住宅財団)が、助成金などを活用して被災地の土地を取得。住宅を再建し、特に黒人やラテン系コミュニティの人々のために市場価格よりも低い価格で販売した。また、開発業者から土地を守ることで、投機的な再開発を防ぎ、地域の多様性と歴史を維持することを目指している。


一方、同じくアルタデナを拠点にするNPO・Altadena Seed Libraryは、火災に強い在来植物を植樹し、緑地の回復を図ることで、生態系を守ると同時に再び火災が広がるリスクを低減する試みを実践中(※1)。また、同組織が運営するコミュニティ基金は、火災で影響を受けても地域に留まる住民への経済的支援を行っている(※2)

火災リスクが高い地域に再度住宅を建設することには、安全面や環境面での懸念が伴う。しかし、複数のNPOが生態系の回復と地域の安全性向上を目的としたプロジェクトを推進しており、市民主体で保護区やレクリエーションエリアとして活用することを目指している。危険な場所には住宅を建てず、安全に利用できるかたちで地域を活かすことで、こうした懸念の払拭にもつながっている。こうした取り組みが、自然保護や地域の再生を後押ししているのだ。

UCLAの環境・持続可能性研究所のジョン・クリステンセン氏は、LAistの取材「この地域を開発業者から守るためには、慈善活動だけでなく、多角的なアプローチが必要だ」と指摘する。社会的に意義のある投資を行う投資家が、適正なリターンを確保しながら地域住民を支援する仕組みが求められているのだ。Greenlineはすでに関心を持つ住民や支援者のネットワークを介して、土地を地域のために活用する方法を模索している。

日本でも、地震や台風などの自然災害が頻繁に発生し、被災地の復興が課題となっている。その中で経済性だけが重視され、地域住民が取り残されるケースも少なくない。アルタデナの事例は、従来の「開発主導の復興」に代わる新しい視点を提供するものだ。災害後の土地利用について、私たちはどのような選択肢を取るべきなのか。防災、環境保護、そして地域コミュニティの未来を考えるうえで、この取り組みから学べることは多いはずだ。

※1 Altadena Seed Library LAist
※2 Altadena Community Preservation Fund NAACP
【参照サイト】Greenline Housing Foundation
【参照サイト】As developers swoop in post LA fires, one nonprofit offers an alternative to Altadena sellers
【関連記事】マレーシア、土地開発前に地元の「完全な同意」義務化へ。先住民の森林を守る 
Edited by Megumi

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