“チーズの副産物”でチーズを包む技術、ネスレが導入

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「チーズが、自らを包装紙として包む」そんな未来が、もう現実になりつつある。

これまで、チーズの包装といえばプラスチックや紙、ワックスが当たり前だった。しかし、そうした素材の多くは一度きりの使い捨てで、特にプラスチックは分解までに数百年かかるとも言われている(※1)。日々の食卓を彩る身近な存在である一方、その裏には見過ごされがちな環境負荷が潜んでいるのだ。

この課題に対し、ネスレ・パナマと広告代理店オグルヴィ・コロンビアがタッグを組み、“食品そのものが包装になる“という驚きの発想から生み出したのが「セルフパッキング・チーズ」。包装のあり方を根本から問い直す、革新的な取り組みだ。

 

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プロジェクトの核心は、チーズ製造の過程で副産物として生じるホエイ(乳清)を活用すること。通常は廃棄されるホエイを、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)という生分解性バイオポリマーに変換し、薄く柔軟なフィルム状の包装材へと再生。PHAは自然界の微生物によって約300日で分解される、環境負荷の極めて小さい素材だ(※2)

また、ホエイ由来のこの包装材は、製造工場の近くで生産できる。これにより、包装資材の輸送や追加資源の投入といった工程が不要となり、CO2排出量の削減にもつながる。ネスレとオグルヴィの開発チームによれば、このプロトタイプには、廃棄量と従来型プラスチックの使用量の両方を減らす効果があるという(※3)。加えて、このパッケージ素材は国際的な食品安全基準(FDA)に適合しており、チーズの品質や安全性、風味を損なうこともない(※4)

すでにネスレの「¡Qué Rico!(ケ・リコ)」ブランドの一部商品にこの技術が導入され、パナマ市場で展開されている。今後、年間約5,500トンの包装材をプラスチックからホエイ由来素材へと置き換えていく計画も進行中だ(※5)

この取り組みは、包装廃棄物を減らすだけでなく、これまで見過ごされてきた副産物に新たな役割を与える点でも意義深い。身の回りにある「捨てられてきたもの」に、どんな可能性が眠っているのか。次に冷蔵庫を開けるとき、あなたが手に取るその包装──それもまた、何かが生まれ変わった変革の一つかもしれない。

※1 In Images: Plastic is Forever United Nations
※2 Nestle invents a cheese packaging to control plastic Creapllis
※3 Self Packing Cheese Nestlé Ogilvy
※4 Nestlé Aims to Transform Cheese Whey into Sustainable Packaging Little Black Book
※5 Nestlé’s Self-Packing Cheese: A Bold Step Toward Zero-Waste Packaging Campaigns Of The World

【参照サイト】Nestlé invente un emballage… en fromage pour lutter contre le plastique
【参照サイト】self-packing cheese: biodegradable packaging made of whey & waste decomposes on its own
【参照サイト】Nestlé Aims to Transform Cheese Whey into Sustainable Packaging
【参照サイト】Nestlé’s Self-Packing Cheese: A Bold Step Toward Zero-Waste Packaging
【関連記事】【2024年最新版】脱プラから食品ロスまで。ゼロウェイストに取り組む国・都市・企業まとめ

Edited by Megumi

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