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自然と無関係に経営できる企業など存在しない。原材料の調達から事業の運営、モノやサービスの使用、廃棄、リサイクルでさえ、私たちの経済活動はすべて地球上の何かしらの恵みに支えられて成り立つものだ。
そんな当たり前のことが蔑ろにされている状況に、近年警鐘が鳴されている。改めて経済と自然の強い繋がりが認識され、環境省が2024年3月に「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を示した。経済と自然の繋がりが、破壊に寄与するのではなく、互いに栄養を分け与えるものになるよう関係を築き直そうとしているのだ。
そしてその流れは、いよいよ可視化され始めている。2025年9月25日、企業や金融機関が自然への依存、インパクトなどについての情報開示と適切な意思決定を促す国際的なイニシアティブ・TNFDが、2023年9月の最終提言の公表後初めてとなるステータスレポートを発行した。
2025年6〜7月に800件以上の回答を集めた調査によると、50以上の国と地域にわたり、620の組織が、TNFDの提言に沿った自然関連の財務情報を開始することを公に表明している。その運用資産総額は20兆ドル(約3,000兆円)にのぼる。実際、TNFDに準拠したレポートが500件以上公開された。
中でも、アジア太平洋地域では開示が進んでいる。TNFDの調査によると、アジア太平洋地域の回答者の86%が自然関連の報告にTNFDフレームワークを使用している、または使用予定であると回答。特に底上げを担うのが日本だ。Bloombergが調査した、自然関連の指標を報告している企業数において、日本は世界第3位になるなどアメリカ・中国と並び情報開示をけん引している。
こうしたTNFDの勢いは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の初動を上回る。TNFDに準拠した初期の開示ペースは、TCFDのそれを上回っているのだ。これは、TNFDのフレームワークがTCFDなどの気候変動・サステナビリティ関連の情報開示フレームワークと一致するような構成や言語で設計されたことで、多くの企業がすでに持っている社内チームや経験を活用できているためだと分析されている。
この前進を支えるのは、決して規制だけではない。TNFDの同調査によると、投資家の56%が、自然損失が金融市場に与える影響について「非常に懸念している」と回答、42%が「ある程度懸念している」と回答した。このように、投資家からの要求も強まっていることで、企業による自然関連情報の開示が進んでいると考えられる。
気候変動をめぐるアクションの雲行きが怪しまれる中、良い走り出しを示した本レポートは、一縷の希望となるだろう。ただし情報を開示して終わり、ではない。情報を社会と共有したことは、ここから真に自然環境を再生していくための始まりだ。
【参照サイト】Release of TNFD Status Report highlights significant market momentum on nature-related issues|TNFD
【参照サイト】TNFD 2025 Status Report|TNFD
【参照サイト】Asia Pacific companies lead the world in adopting nature reporting framework: TNFD|Eco-Business
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