オフピークの店舗を無償で市民に解放。オランダ企業が取り組む地域コミュニティ作り

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あなたが住む街には、目的もなく立ち寄り、誰かとおしゃべりできるような場所が、どれくらいあるだろうか。地域の公民館や図書館も大切だが、もっと気軽に、ふらっと集まれる場所が街の中にあれば、と感じる人も少なくないのではないだろうか。

しかし、街の中心部にあるのは大きな資本を有した飲食店や企業の店舗ばかり、という場合も少なくない。市民が気軽に集える場所が十分に街の中にないことは、社会的なつながりの希薄化を解消するための活動をしようとする時の最初のハードルになるだろう。

こうした課題に対し、オランダのホスピタリティ企業Mooie Boulesは、収益の少ない日中のオフピークに自社の店舗を地域のコミュニティグループや住民に対して無償で解放している。

賃料は一切不要。地域の人々をつなげることを目的としたイベントの主催者には、スペースとペタンク、さらにはドリンクまで無償で提供されるという。

取り組みは全ての店舗で行われ、大きなインパクトを生み出している。2024年に実施したパイロットプログラムでは、住民がリラックスしたり交流したりするための集いの場を企画し、実際に5,500回のミートアップが行われたという(※)。この成功を受け、同社はコミュニティづくりを専門とするDe Buurt財団と共に、独立した新たな財団「Mooie Buurt(オランダ語で、「美しい地域」の意味)」を設立し、活動を推進している。

Mooie Boulesは、ペタンク(南仏発祥のボールゲーム)を楽しめる飲食店事業を展開する企業だ。最初は友人同士でペタンクを楽しむ企画から始まり、2025年現在はオランダ国内に9店舗を構えるホスピタリティチェーンに成長している。ゲームを通して人々のつながりを生み出すことを事業の目的とし、今回の取り組み以前にも、経済的に恵まれない人や孤独に悩む人々に向けた無償イベントなども数々開催してきた。

短期的な収益だけを見れば、この取り組みは非効率に映るかもしれない。しかし、企業が持つ資産を地域に「譲渡」することで生まれる信頼やつながりは、お金では買えない価値を持つ。予測不可能な時代において、本当に必要とされ、長く愛される企業であるためには、地域という生態系の中で人々といかに共生できるかが重要なのではないだろうか。

2024 Mooie Boules impact report

【参照サイト】Mooie Buurt
【参照サイト】During off-peak hours, hospitality chain Mooie Boules repurposes venues as community hubs
【参照サイト】Founder Mooie Boules sees the social aspect diminishing when SMEs close and takes action
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