社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン、IDEAS FOR GOODの編集部が選ぶ、今月の「ちょっと心が明るくなる世界のグッドニュース」。前回の記事では、子どもの「夜泣き」を歓迎する夜カフェなどを紹介した。
日々飛び交う悲しいニュースや、不安になる情報、ネガティブな感情ばかりを生む議論に疲れたあなたに。世界では同じくらい良いこともたくさん起こっているという事実に少しのあいだ心を癒し、また明日から動き出そうと思える活力になれば幸いだ。
愛に溢れた世界のグッドニュース5選
01.ロバが下草を食べて、山火事のリスクを減らす
夏の日差しを浴び、草や低木が乾燥すると、ひとたび火がついた際に、炎が広がる要因となる。とりわけ広大な自然環境では、山火事のリスクを抑えながら、生態系に負担をかけずに植生と向き合う方法が求められている。
そんななか、スペインのドニャーナ国立公園では、18頭のロバからなる「消防士ロバ部隊(Burritos Bomberos)」が活躍中だ。ロバたちは、人や車両が立ち入れない場所を含め、公園内の乾いた草や低木を食べながら過ごす。彼らが「ごちそう」を食べる過程で、あたりの植生が低く保たれ、火の広がりを抑える自然の防火帯がつくられるという。ロバが活動する区域では、これまで火災が起きていないそうだ。
だが、彼らの力に頼るだけではすべての山火事を防ぐことはできない。適切な森林計画や土地管理と組み合わせることが大切だ。
人間を含めた動物や植物たち、それらが織りなす営み。地球に生きるものたちの心地よさが重なるところに、すべての命にとって健やかな暮らしが生まれるのかもしれない。
【参照サイト】A Spanish park has been free of wildfires for over a decade thanks to 18 donkeys
02.使い道のない空き家を、若者の就労準備の場に
東京都豊島区では支援を必要とする人が集まりやすい一方、家賃相場が高く、NPO法人が活動拠点を確保しにくいという課題があった。そこで区が着目したのが、UR都市機構が防災まちづくりのために取得し、事業開始まで使われていなかった土地や建物である。
2025年3月、豊島区とUR都市機構は若者の居場所づくりに関する協定を締結した。区が土地と建物を無償で借り受け、若者支援団体へ無償で貸し出す仕組みをつくったことで、NPO法人は活動場所を確保でき、UR側も空き家を地域貢献に活かしながら管理費の削減や固定資産税などの減免につなげられる、双方の困りごとを一度に解決する取り組みとなっている。
この仕組みを利用する団体の一つが、親を頼れず孤立しやすい若者を支援するNPO法人サンカクシャだ。サンカクシャは、親を頼れない若者が、18歳前後に児童福祉制度から成人向けの支援へ移る過程で、住まいや仕事、相談相手を失い、孤立しやすいことに課題意識を持っている。そこで、若者が働くための経験を積める場として、庭付きの一軒家を複合型就労支援拠点「サンカクスクエア」へと改修した。
働きたい若者と地域や企業の大人が食事をしながら交流できる「サンカクキッチン」のほか、就労体験の場としてビストロ「Dans Trois Jours(ダントロワジュール)」を営業し、若者たちが洗い物やホールの仕事を任されている。
活動する「場所がない」NPO法人と、当面の「使い道がない」空き家。その二つを行政がつなぐことで、まちづくりを待つ建物が、若者たちの次の一歩を支える大切な場所へと変わっている。

特定非営利活動法人サンカクシャ プレスリリースより
【参照サイト】働きたいけど、働けない若者の働く1歩を支援する複合型就労支援拠点「サンカクスクエア」を開設
【参照サイト】18歳で支援が途切れ孤立する若者たち。空き家を「ビストロ」に変え、仕事と居場所をつくる豊島区×UR×NPOの挑戦
03.散歩中に見つけた虫をパシャリ。「これ、何だろう?」が、データベースに
公園の草むらで見つけた小さな虫。道端に咲いていた、名前の分からない花。少し意識して眺めると、いつもの道にも、驚くほど多くの生きものが暮らしていることがわかる。
神奈川県相模原市では2026年4月、市内で見つけた生きものを市民が観察・記録する「世界同時開催!生きもの大調査in相模原」が行われた。世界各地の都市が同じ時期に身近な自然を調べる「シティ・ネイチャー・チャレンジ」の一環である。
参加方法は、植物や昆虫、鳥、魚などをスマートフォンで撮影し、無料アプリ「iNaturalist」に投稿するだけ。AIが生きものの名前を候補として示し、ほかの利用者や専門家も一緒に確認する。一定の精度に達した記録は、世界の研究者が利用する生物多様性データにもつながっていく。
専門家だけのものに見えがちな生きもの調査が、いつもの散歩の延長線上になる。日常の「これ、何だろう?」を写真に収めることが、地域の自然を知り、世界の研究を支える入口になるかもしれない。

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【参照サイト】【生物多様性に興味のある皆さまへ】相模原市で世界規模の「生きもの調査」に参加してみませんか!
04.本を借りに行った図書館で、音楽をつくる
音楽が好きでも、自宅に楽器や録音機材を置けるとは限らない。学校の外で学びたいと思っても、近くに練習場所や相談できる人がいなければ、興味を深めたり、その先の進路を思い描いたりするのは難しい。才能や好奇心はどこにでもあるが、音楽に触れ、つくり、育てていく機会は、誰にでも同じように開かれているわけではない。
そんななか英国政府は2026年7月、音楽を始める人から、仕事として続ける人までを支える長期計画「Turn It Up: Our Plan for Music」を発表した。これは、活気ある音楽産業のために、4万人以上のアーティストや企業、草の根プロジェクト、さらに数百万人の子どもたちを支援するという政府の取り組みを表明するものだ。
その一つが、地域の図書館に無料のスタジオスペースやレコーディングブース、ミキシングデスク、最新鋭の機材などを整える「Music in Libraries」である。誰もが立ち寄りやすい図書館を、楽器に触れたり、音楽をつくったりできる場所にもしていく。また、社会的養護を経験した若者が、創作の専門家から一対一で助言を受けられる支援も行う。
音楽に触れる入口だけでなく、学び、つくり、その先の進路を思い描ける場所までを、日常の風景のなかにひらいていく。住む場所や家庭の環境にかかわらず、好奇心や才能を育てられる図書館から、いつか未来の音楽家が生まれるかもしれない。
【参照サイト】Government launches bold plan to ‘turn up’ the music industry
05.1日30分歩く人に、英国の公的医療が「ごほうび」
健康のために運動しようと思っても、仕事や家事を終えたあとに、着替えてジムへ行くのはなかなか面倒だ。1日のなかに楽しく運動を組み込むことができたらどんなに良いだろう。
英国・イングランドの公的医療機関NHSは2027年初頭、ウォーキング企画「Movement 26.2」を開始する予定だ。日々30分程度のウォーキングを記録し、1か月でフルマラソンに相当する26.2マイルの達成を目指す。
歩いた距離は、スマートフォンやスマートウォッチなどで記録。達成した人には、提携する団体や企業から割引などの特典が用意される予定だ。記録を途切れさせたくない気持ちを生かす「ストリーク」の仕組みも取り入れられており、楽しみながら続けられるよう工夫されている。
フルマラソンと聞くと身構えてしまうが、買い物や通勤、気分転換の散歩の距離を少しずつ積み重ねていくことならできそうだ。「運動しなければ」という大きな負担は、「今日は少し歩いてみよう」という日常の行動へ「小分け」するのが良いのかもしれない。






