社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン、IDEAS FOR GOODの編集部が選ぶ、今月の「ちょっと心が明るくなる世界のグッドニュース」。前回の記事では、父親たちがパブで娘の三つ編みを練習するクラブや、蝶にやさしいまちなどを紹介した。
日々飛び交う悲しいニュースや、不安になる情報、ネガティブな感情ばかりを生む議論に疲れたあなたに。世界では同じくらい良いこともたくさん起こっているという事実に少しのあいだ心を癒し、また明日から動き出そうと思える活力になれば幸いだ。
愛に溢れた世界のグッドニュース5選
01.「20歳若返った気分!」介護施設でファッションショー・フォト
鏡の中に映るのは、いつもの自分ではなく、花が散りばめられたウィッグや大ぶりのアクセサリーをまとった、新しい自分。イギリスにある介護施設「メープルウッド・コート」で、入居者72人が参加する華やかなフォトイベントが開かれた。
この企画は、施設のライフスタイル・チームに所属するローラ・テイラーとジョー・モーガンが「ただおめかしをするだけでなく、思いっきり派手に着飾って、最高に素敵な気分を味わってもらおう」と考案したもの。花飾り付きのウィッグやサングラス、巨大なパールのネックレスなどが用意され、入居者たちは思い思いにドレスアップを楽しんだ。
メープルウッドコートのニュースでは、100歳のヒルダ・ハウズが「100歳ではなく80歳に見えるわ!」と笑顔を見せる様子が紹介されている。また、企画を担当したモーガンは「この取り組みは、みんなの気分を明るくしてくれた」と語っていた。
老いとは、失われていく過程なのか。それとも、まだ見ぬ自分に出会い続ける時間なのか。ケアの現場で生まれたこの小さな変身は、年齢にまつわる私たちの前提そのものを問い直している。
【参照サイト】Maplewood Court’s fabulous photo shoot makes Hilda, 100, feel 20 years younger!
02. ニューヨークで進む、市職員向け無料保育の取り組み
ニューヨーク市が、市職員を対象とした初の無料保育プログラムをスタートさせる。市長のゾーラン・マムダニ氏が発表したもので、働く親の負担を軽減し、行政サービスを支える人材の定着につなげる狙いだ。
対象となるのは、David N. Dinkins Municipal Buildingで働く職員など。建物内に新設される保育施設では、生後6週間の子どもから預けることができ、年間を通じて無料で利用できる。施設は約1,000万ドルをかけた改修の一環として整備され、今秋の開始が予定されている。
アメリカでは高額な保育費が大きな社会課題となっており、ニューヨークでは特に深刻だ。こうした状況のなかで、職場と保育を近づける今回の取り組みは、通勤や送迎の負担を減らすだけでなく、仕事と育児の両立を現実的な選択肢にする。
さらに市は、2歳児・3歳児向けの保育無償化の拡充も進めており、将来的にはより広い層へのアクセス改善も視野に入れている。
保育は、家庭の中で完結すものなのか。それとも、都市を動かすために不可欠なインフラなのか。今回の取り組みは、その問いに対するひとつの答えを示している。
【参照サイト】Mayor Mamdani Advances New York City’s First Free Child Care Program Pilot for Municipal Workers
03. お金では買えない。優しい人だけが泊まれるスイートルーム
チョコレートに囲まれて眠る──そんな特別な体験のできるスイートルームが、アムステルダムで期間限定のポップアップとして登場した。
ホスピタリティ企業「ザ・ソーシャル・ハブ」と、エシカルチョコレートブランド「トニーズ・チョコロンリー」が共同で手がけたこのスイートルームは、一般の予約では利用できない。宿泊できるのは、「世界で最も優しい人」だ。
コンテストにて「最も優しい人」に推薦された人のなかから、審査員団が代表を選出する仕組みで、選ばれた人は推薦人とともに、このスイートルーム体験の権利を得ることとなる。
室内はチョコレートバーのデザインから着想を得たユニークなインテリアで彩られ、カカオ生産地域のアーティストによるプレイリストも用意されている。さらに、宿泊者には2つに分かれたチョコレートバーが贈られる。一つは自分のために、もう一つは誰かにプレゼントするためのものなのだそう。
また、モーニングコールではカカオ農業における賃金や労働環境の課題について聞くことができる。楽しさの中に、見過ごされがちな現実を織り込む設計だ。
この事例を見ていると「優しさ」や「他者との関係性」が、お金の消費に変わる価値の条件になりうる可能性を感じる。取引ではなくつながりで価値が決まるとき、社会はどのように変わっていくのだろうか。

Image via Tony’s Chocolonely & The Social Hub
【参照サイト】SEARCH BEGINS FOR WORLD’S “SWEETEST PERSON” AS MONEY-CAN’T-BUY CHOCOLATE HOTEL ROOM UNVEILED
04. 人々を外へ連れ出す、「かつて本だった」ピクニックラグ
長野県に拠点を置く株式会社バリューブックス。全国から本の買い取りや販売を行う同社には、毎日およそ3万冊の本が届く。そのうち約半分は新たな読者のもとへ届くが、残りは市場で行き場を失い、やむを得ず古紙回収へと回されていた。
同社はこうした本を素材として生かしたいとの思いから、紙再生サービスメーカーの山陽製紙株式会社とともに「本だったシリーズ」を展開。「本だったノート」「漫画だったノート」など古本の紙を再生した製品に加え、2026年3月にはピクニックラグが登場した。
このラグは、素材の約70%に再生された本の紙を使用。印刷された文字の痕跡があえて残されており、その背景を感じさせるデザインになっている。裏面にはラミネート加工が施され、芝生の上でも使いやすい仕様だ。
このプロジェクトが目指すのは、単なる資源の再利用にとどまらない。本だったものを、再び「本と過ごす時間」へとつなげること。屋外で本を開くきっかけをつくるプロダクトとして、新しい読書体験を提案している。
部屋の片隅で埃をかぶっていた古本が、人々を外へ誘い、陽の光をめいっぱい浴びる存在になるなんて、人生(“本”生?)何があるかわからないものだ。

Image via バリューブックス
【参照サイト】【ニュースリリース】“捨てられるはずだった本”に新たな役目。本のアップサイクルから生まれた「本だったピクニックラグ」 ― お花見シーズン 2026年3月がつ24日(火)発売開始 ―
05. 「見ていますよ」目のシールはカモメの盗み行為にも有効
海辺で食べ物を広げた瞬間、カモメに盗まれてしまい、せっかくの楽しいランチが台無し。そんな悲しい事態を防ぐために、あるアイデアがうまれた。
イギリス・エクセター大学の研究によると、テイクアウトの箱に目のイラストを描くだけで、カモメによる食べ物の窃盗を最大50%減らせる可能性があるという。デヴォンやコーンウォールの海辺で行われた実験では、カモメは無地の箱よりも、目が描かれた箱に近づくまでに時間がかかり、つつく頻度も低かった。駅や駐輪場に「見られている」と感じさせるステッカーが貼られていることがあるが、こうした策は人間にも野生動物にも一定の効果があるようだ。
「人間に不利益をもたらすならば排除すべき」ではなく、小さな工夫を積み重ねることで、適切な距離を保ちながら共存できるようになるのかもしれない。
【参照サイト】Painting eyes on takeaway boxes can stop gulls stealing chips, study shows


























