私たちは、生活を助ける家電製品に囲まれて暮らしている。なかでも洗濯機や冷蔵庫、電子レンジ、エアコンといった家電は、テレビやスマートフォンに比べて消費電力が高く、家計への影響も大きい(※1)。そうしたエネルギー負担の大きい家電こそ、「いつ使うか」を意識するだけで、電気代も環境負荷も大きく変わってくる。
昼の12時から15時は、太陽光発電がピークを迎える時間帯だ。この時間に家電を使えば、再生可能エネルギーを効率よく活用できる。しかし、それを知っていても、実際に使用のタイミングを昼間に変えるのはなかなか難しい。そんななか、オランダで興味深い取り組みが始まっている。
韓国の家電大手・Samsungと、オランダの電力会社・Coolblue Energieが提携し、「正午から午後3時の洗濯が無料になる」というサービスを開始した。対象は、Coolblue Energieの動的価格契約(※2)に加入し、Samsung製の対応洗濯機をSmartThingsアプリに接続している家庭。洗濯機が電力価格と連動し、無料の時間帯に自動で運転を始める仕組みだ。
※2 時間帯や電力の需給状況によって電気の単価が細かく変動する料金プラン
この試みの本質は、「報酬によって行動を変える」というシンプルかつ効果的な考え方にある。洗濯の時間をずらして電気代が無料になるのであれば、工夫して日中に洗濯をするユーザーも増えるだろう。また電力会社にとっても、再生可能エネルギーが豊富な時間帯に消費を集中させることで、電力網の負荷を下げることができるのだ。
TrendWatchingの取材で、Coolblue Energieのディレクター、マレイン・ファン・ウィール氏は「Coolblue Energieが1年間に販売する家電製品すべての電力消費量を合わせると、ロッテルダムの街を3年間照らすことができる」
と語っている。その中でも消費電力の大きい洗濯機が、再エネの豊富な日中に使われたとしたら、その効果は大きくなるだろう。
このサービスを使えるのはまだ一部の人々だけではあるが、価格の変化に連動して自動で回してくれるならば、外出中でもあえて今までと違う時間に洗濯機を回すかもしれない。このシステムは、忙しい現代人が、いつもの生活リズムを少し変えて環境負荷を小さくする手助けをしてくれるはずだ。
【参照サイト】Coolblue Energie
【参照サイト】Free laundry at noon: Samsung and Coolblue make climate action effortless
【参照サイト】Samsung SmartThings washing machines get free electricity perk
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Edited by Megumi