中国で進化するシニアトイ。人生100年時代に必要な“遊び”とは?

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日本同様、中国でも急速な高齢化が進行し、総人口に占める高齢者の割合は年々上昇している(※1)。世界保健機構によると同国では、2040年には4億200万人(総人口の28%)が60歳以上となることが推定されているという(※2)

医療の進歩によって長寿化が進む一方で、高齢者たちが抱える孤立や認知症といった課題に、社会としてどう向き合い、どう支えていくのかが問われている。

老後の過ごし方が問い直されている今、中国で注目されているのが「おもちゃ」だ。おもちゃといえば子ども向けのものを想像しがちだが、いま高齢者たちが自らの暮らしに「遊び」を取り入れる動きが広がっている。

シニアトイは心と体を健やかに保つ手段であると同時に、人生をより豊かにする選択肢の一つとして進化。単なる娯楽の域を超え、認知機能の維持・向上、巧緻(こうち)性トレーニング(※3)、社会的孤立の緩和といった多面的な効果が期待されているのだ。

※3 折り紙やパズルなど、手先や指先の細かい動きを訓練し、器用さを高める活動のこと。

Image via Shutterstock

実際、中国の市場では懐かしい風景のジグソーパズル、操作が簡単なロボットペット、仲間と楽しめるボードゲームなどが人気だそうだ。これらのおもちゃは、人間工学に基づいて設計されており、視力や手先の動きに制限がある高齢者でも無理なく扱えるよう工夫されている。

特に都市部の高齢者は、安定した年金や貯蓄を背景に、自分の興味や健康に対して前向きに投資する傾向がある。企業もそうしたニーズに寄り添うかたちで、生活の質を高めるシニアトイの開発に取り組み始めている。

たとえば、AIを活用した会話型デバイスや脳トレアプリと連動するおもちゃ、木製シニアトイなどが登場している。こうした木製玩具は、大学や医療機関が監修の上、科学的根拠に基づいて設計されており、産業にも変革をもたらしている(※4)

また、中国の大手ECプラットフォーム・淘宝網(タオバオ)では、2025年のシニアトイの検索数が前年比124%増、取引量も70%以上伸びたという(※5)。各地の高齢者施設では、シニアトイを取り入れたレクリエーションプログラムが広がりつつあり、おもちゃが医療や福祉の現場で活用されている。

おもちゃは単なる道具ではなく、人とのつながりを生むコミュニケーションの媒介にもなる。家族間の交流だけでなく、同世代の仲間と遊ぶことを通じて生きがいを感じる高齢者も多い。

シルバー世代の暮らしに多様な選択肢が求められる中、シニアトイのような“小さな遊び”が、孤立や無気力をやわらげ、自分らしく暮らすための力になるかもしれない。経済的な側面だけでなく、「遊び」がもたらす喜びの可能性に、注目が集まる。

※1 Share of population aged 60 and older in China from 1950 to 2020 with forecasts until 2100 Statista
※2 Aging and Health in China World Health organization
※4 ※5 Senior-friendly toys fuel growth of China’s silver economy Borneo Post Online

【参照サイト】Senior-friendly toys fuel growth of China’s silver economy
【参照サイト】Des toys suitable for seniors stimulate the expansion of the silver economy in China
【関連記事】“ケアされる人”から“表現する人”へ。高齢者が作ったアート作品をバーチャル美術館で展示

Edited by Megumi

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