旅は「退屈なのが」良い。スウェーデンで提案される“何も起きない”観光の価値

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私たちはいつから、旅先でまで「効率」を求めるようになったのだろうか。分刻みのスケジュールをこなし、SNSに投稿するための写真を撮り……そんな旅行のあり方が、知らず知らずのうちに「休むための旅」から私たちを遠ざけているのかもしれない。

そんな忙しない旅の在り方へ問いを投げかけるように、スウェーデンは「退屈すること」を肯定する旅のかたちを提案している。Visit Sweden(スウェーデンの公式マーケティング会社)は、2025年冬のキャンペーンで、訪問者に「スローダウンし、スイッチを切り、計画を持たずに自然の中で過ごすこと」を勧めたのだ。

キャンペーンでは、定番のウィンターアクティビティではなく、静かな体験が全面に押し出された。例えば、焚き火のそばで星を眺めること、野生動物の気配に耳を澄ますこと、凍った湖で魚がかかるのを待つことなどだ。Visit Swedenによれば、この取り組みの目的は、忙しい日々のなかで「何もしなくてもいい」「少なくしてもいい」という許可を人々に与えることにあったという。

森の小道沿いに建つ小さなキャビンでの孤独な時間。Wi-Fiが限られ、デジタルから距離を置きやすい環境でのデトックス。長い冬の夜の静けさ。キャンペーンは、こうしたある種の“静止した時間”を、価値そのものとして描いている。

この動きは、近年広がりつつある「スロートラベル」や「デジタルデトックス」といった旅の潮流とも重なる。情報が絶え間なく流れ込む時代、自然の中で過ごす静かな休暇や、ネットワークから離れた環境を求める人が増えているのだ。

効率や最短距離が善とされてきた価値観に対し、日本でも揺り戻しが起きている。日経MJが紹介した「ムダパ(ムダ・パフォーマンス)」という概念は、無駄を排除するのではなく、あえて受け入れ、味わうという発想である。

スウェーデンの「退屈を肯定する旅」は、「人生や旅は、本当に“詰め込む”ほど豊かになるのか」と私たちに問いかけているようだ。

【参照サイト】Treat yourself to a dose of boredom in Sweden(Visit Sweden)
【参照サイト】Dark skies and empty itineraries: Why Sweden wants travellers to embrace ‘boredom’(euronews)
【参照サイト】2026年「ムダパ」への旅 4割がタイパ疲れ、無駄な時間で豊かに(NIKKEI)
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