世界中でテロや犯罪などが多発し、市民の安全が脅かされているなか、南米のペルーでは位置情報を活用して自身の身近に迫っている危険をリアルタイムに知らせてくれるソーシャルセキュリティアプリ、「Reach」がリリースされた。
ペルーと言えば遺跡のマチュピチュが観光地として人気があるが、訪れる人々が懸念する点に治安の問題がある。南米は一般的に治安が悪い地域として知られており、窃盗や強盗犯罪などが頻繁に起こっている。ここ近年ではこれらの軽犯罪の手口が凶悪化していることが問題となっており、首絞め強盗など暴力を振るわれることもあるという。
これらの犯罪や危険からできる限り回避できるよう、また、万が一それらに巻き込まれてしまった場合にも早急な発見や救援ができるようにと開発されたのがこのReachだ。
Reachは、GPSでユーザーの位置情報を特定するジオロケーション技術を利用し、リアルタイムで身の回りの危険を警告してくれるアプリで、ユーザーはいつどこでどんな事件が発生しているのかを知ることができるほか、緊急時には自身の居場所を知らせることもできる。
Reachはソーシャル・インシデント、パーソナルセキュリティ、そしてグローバルネットワークという3つの機能から構成されている。ソーシャル・インシデント機能では、Reachのユーザーのネットワークが犯罪や事件などを報告した場合、その周辺にいるユーザーはリアルタイムで警告を受け取ることができるほか、その警告を100以上のソーシャルネットワークを通じて拡散・共有できるようになっている。
また、パーソナルセキュリティ機能では、自分の家族など、自分の位置情報を含んだ緊急警報を受信するための連絡先グループを設定することができ、緊急時にはボタンを押すだけで警報通知をグループのユーザーに送ることができる。
さらにグローバルネットワーク機能では、警察や消防などが発信する救急サービスチームの移動ルートや道路閉鎖情報、その他の市民の注意を促す警告をユーザーに提供する機能などを備えている。
同社は、「私たちは個人情報を第三者に提供せず、24時間体制でユーザーをサポートしていく方針だ。」と公言しており、信頼のおけるサービスとして世界中の人々に利用してもらうことを目標としている。
アプリは無料で、スマートフォンだけでなくタブレットやパソコンからの使用も可能だ。同社の拠点はペルー共和国のリマにあるが、今後ほぼすべての言語と国で動作ができるようプラットフォームを設計している最中だという。
このサービスの要となっているジオロケーション技術は、2009年末にGoogleがすべての検索において導入した例もあるように、もはやインターネットを使用する際には必ずと言っていいほど付随する技術だ。
ジオロケーション技術により私たちの生活が便利になったことは確実だが、その一方で、いつ、どこで、なにを検索しているか、という個人情報が常に流出しているというプライバシーの危機にも繋がっている。
しかし、このプライバシーのリスクから一歩さらに進んで、個人情報を「人々の安全をより向上させる方向へとうまく利用する」というReachのアイデアは、テクノロジーを上手に活用して社会に役立つサービスを生み出す好事例だと言える。
【参照サイト】Reach