広い地球、いわゆる僻地と呼ばれる場所はたくさんある。世界最大面積を誇り、地球上の熱帯雨林の半分を占めると言われるアマゾンもその一つだ。ここでは遠隔地に広がる数千もの先住民コミュニティが存在している。
密林に閉ざされたこれらの人口密度が低い先住民コミュニティでは、医薬品や公衆衛生サービスなどを受けるための充分なインフラが整っていない。そのような状況にも関わらず、ヘビによる咬傷事故がひと月に平均45回も発生しているというのだ。咬傷事故ですぐに必要なのは解毒剤だが、現状では医薬品を村やコミュニティへ届ける手段はボートしかないため到着までに膨大な時間を要しており、村人の命は危険にさらされていた。
この問題を解決する手段として人々が注目したのがドローンだ。これまでにも自然災害のマッピングや食糧援助の提供、ルワンダでの輸血用血液の配達など、さまざまな緊急事態の対策としてドローンが採用されており、その可能性に解決の糸口を見い出したのだ。
ロボットソリューションを利用して発展途上国の支援を行っているWeRoboticsのペルーフライングラボと、ペルーの保健省および現地の医師が協働し、「ドローンを使い抗毒薬を輸送する」というプロジェクトを立ち上げた。使用されたのは、比較的安価な3000米ドルほどのドローンだ。極力コストを抑えつつ、いかに迅速かつ正確に目的地へ薬を輸送できるかが重要な鍵となる。
無人機がアマゾンへ薬を届けるという未来物語のようなこの挑戦に、実験当日は大勢の子供達が集まり、彼らが見守る中フィールドテストが行われた。
ペルーにあるコンタマナの町から、約40キロ離れたパンパエルモサ村へ飛ばしたドローンは、コールドパックに包まれた抗毒薬を乗せ、わずか35分の飛行で目的地に到着した。これまでに行っていたボート輸送では、最大6時間はかかっていた距離だ。さらに、チームはこのドローンの返還時を夜に設定し、血液サンプルを乗せてコンタマナの町へ送り返したのである。その夜、ライトが装着されたドローンと血液サンプルは無事到着し、実験は成功した。今後は手ごろな価格のドローンを使用しつつ、100km以上遠方への輸送を可能にするべく準備を進めている。
この実験の成功により、アマゾンに住む先住民の人々の医療環境は今後大きく変わることになる。
このプロジェクトの素晴らしい点は、僻地で生活を営む先住民の人々の文化や暮らしをしっかりと尊重しつつ、最新のテクノロジーを利用して彼らに手を差し伸べているという点だ。
医薬品を届けやすいように森林を開拓して流通インフラを整えることも可能だが、先住民の暮らしを壊してしまっては元も粉もない。その意味で、ドローンを活用して遠隔から支援するというのは、最も望まれる支援の形ではないだろうか。
このように人々の幸せに繋がるテクノロジーの活用がこれからもたくさん増えてくれることを願いたい。
【参照サイト】Cargo Drones Deliver in the Amazon Rainforest
(画像:We Robotics”より引用)