テクノロジーで社会を良くするアイデア大集合!「ソーシャルグッドサミット〜ヒラメキが紡ぐ未来~」

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貧困、気候変動、人権侵害・・・。世界には深刻な課題が山積みだ。これらの問題を解決しなくてはいけないのはアタマでは理解できるが、実際、自分たちの生活とは程遠く日常生活のなかで解決へ向けた行動にまで移せているという人は少ないだろう。

しかし、そういったグローバル課題を、誰もがワクワクする新しいテクノロジーと掛け合わせて解決するアイデアが、実は世界にも日本にもたくさんある。今年9月、そんな日本発のアイデアの一部が、東京・渋谷で開催されたソーシャルグッドサミットで披露された。

登壇者の方々

コラボレーションから生まれるイノベーション

ニューヨークの国連総会の週に合わせて毎年開催されるソーシャルグッドサミットは、世界中の市民と先駆的なリーダーたちをつなぐ場となっている。実際、このイベントを共催している国連開発計画(以下、UNDP)もさまざまなセクターと協力し、国際開発の分野でイノベーションを起こそうとしている。

たとえば、ワクチンの在庫や輸送状況がスマホでリアルタイムでわかるネットワークを構築したインドの事例や、汚職についての世論をSNSでリアルタイムで分析するチュニジアの例、電子廃棄物をスマホで写真撮影すると業者がリサイクル用に取りに来てくれるアプリを開発した中国の事例などがある。

Image via Shutterstock

UNDP駐日代表の近藤哲生氏は、「これらのコラボレーションによってパートナーが増えると同時に、コストも削減できる」と利点を話してくれた。

SDGs達成に必要なのは、「ワクワクするひらめき」

イベント冒頭で国連広報センター長の根本かおる氏から、国連で採択された世界共通の目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」についての話があった。

国連広報センター長の根本かおる氏

「SDGsは9月25日で採択から3年を迎えます。これらの目標を2030年までに達成させるのに必要なものは、『ワクワクするひらめき』と『柔軟な思考』です。そのためには、ユースの力が欠かせません。グローバル課題をやわらかい形で伝え、楽しい議論が展開されることを期待しています」

まさに、根本氏が言っていた「ワクワクするひらめき」でグローバル課題を解決していこうとしている3つの事例を見ていこう。

1. 魚と植物を1つのシステムで一緒に育てるアクアポニックス

ひとつ目の例は、魚の養殖と水耕栽培(土を使わずに水で栽培する農業)を同時に実現し食のベーシックニーズの達成に挑むアクアポニックスである。水槽のなかで魚のフンが微生物によって分解されたあと、同じ水槽内で育てている植物の栄養となり、その過程で水槽の水がフィルターされ浄水になり、再び水槽に戻る循環型農業である。

Image via 100Banch

チームメンバーである大久保勝仁氏が、アクアポニックスにかける自身の想いを共有してくれた。大久保氏は、東南アジアのスラム街を訪れた際に、垂れ流しにされたトイレの汚物がそのまま土に還り、その成分の滲み出た井戸水を子供たちが飲んでしまうという現実を目の当たりにして衝撃を受けたという。井戸だけではなく、水田にも水は流れ、最終的には私たちが日々食べている植物にも吸収されている。そこで地面を掘らずに植物を育てる方法として、アクアポニックスに目をつけた。

大久保勝仁氏

マクロな視点で見ると、世界で生産されている食料の約3分の1が廃棄されている一方、世界人口の11%にあたる8億人以上が飢餓に苦しんでおり、この食料分配の不均衡は大きな問題となっている。

そこでアクアポニックスは食生産と水循環の「手段」を提供しようと考え、魚の養殖と水耕栽培という異色のものを掛け合わせることで、食料危機問題の解決に挑んでいる。

2. 世界最大規模のごみ拾いSNS「ピリカ」

次の事例は、世界最大規模のごみ拾いSNSや人工知能を使ったポイ捨て分布調査サービスを通じて、ごみ問題の解決を目指す株式会社ピリカ /一般社団法人ピリカだ。ピリカは、科学技術の力であらゆる環境問題を克服することを目的としている。

ピリカがおこなっているゴミ削減への3つのステップを説明しよう。まずポイ捨てゴミをスマホで撮影し、ゴミの分布を見える化することで、以前は行政側がクレームベースでしか測れていなかった問題の深刻度を、客観的に認識できるようになる。

Image via 株式会社ピリカ

たとえば、どこに適切な喫煙所を設計すればポイ捨てを減らすことができるかなど、これまで効果測定ができていなかった課題に対しても、効率よくアプローチできるようになる。この仕組みは横浜市や港区という国内の自治体だけではなく、ニューヨークや中国など海外の調査にも利用されているという。

次にゴミの分布がわかったら、ゴミ拾いSNSを活用して回収していく。SNSに参加し、拾ったゴミの写真をSNSに投稿することで、自分がゴミを拾ったことが周りに伝わり、活動がだんだん広がっていく効果が期待できる。現在世界約80か国で利用でき、累計一億個のゴミが回収されているという。実際、福井県や横浜市など多くの行政機関が導入している。

Image via 株式会社ピリカ

そしてピリカは捨てられたゴミを拾うだけではなく、ゴミの海洋流出の阻止にも取り組んでいる。ポイ捨てゴミは陸から海へ流れるが、その流出源や海洋に漂っているゴミの種類を特定するのは未だに難しいのが現状だ。それは、都内を流れる狭い川でも使えるような適切な調査方法が確立されていないからだ。

そのためピリカは試行錯誤を繰り返し、川、橋、下水処理場などどこでも利用できる調査装置「アルバトロス」を完成させ、流出ルートと製品について現在調査中だという。

代表の小嶌不二夫氏は、「効率よく問題を解決できるように、まず問題を絞り込んでいきたい」ということを何度も強調していた。

小嶌不二夫氏

アフリカで有名なことわざ「早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け」を引用し、「早く遠くに行きたければ車で!」と言っていた小嶌氏。その心は、テクノロジーの力が大事であるということだ。

3. 先生なし、正解なし、高校生の真剣起業プログラム

最後の例は、高校生向け起業体験プログラムを提供している株式会社まつりばだ。先生なし、正解なしの週末二日間のプログラムで、知らない人とチームを組み、実際の起業家からフィードバックをもらいながら世の中に新しい価値を創り出すことを目指している。

Image via 株式会社まつりば

50社以上のスタートアップの協力を得て、アイデアを高速回転で形にしていく「Lean startup」と呼ばれる体系を高校生向けのプログラムとして体現したのがまつりばだ。代表の森真悠子氏は、高校生たちに「消費者という受身の立場から、社会を作る側に回ったほうが楽しい!と思ってもらうのがゴール」だと語っていた。

参加する高校生の動機は多種多様だ。「起業」というキーワードに興味のある参加者は、全体の2割ほどで、ほかは親に勧められて参加、クラウドファンディングで交通費を稼いで広島から参戦、メルカリでお金を稼いでいるなど、ユニークな高校生が全国から集まってきている。

Image via 株式会社まつりば

実際に参加した高校生からは、「普段できない貴重な体験ができた」、「自分の視野が広くなった」といった声に加え、「下水道の水が宇宙に出た時のような高揚感を感じた」といったコメントも届いている。

テクノロジーのおかげでさまざまな働き方や暮らしが可能になると同時に、価値観も多様化している現代。森氏は、「学校内での成績やスポーツなど少ない物差しでしか判断されずみんなが同じ基準を目指していたこれまでの『富士山時代』から、多彩な評価軸がありいろんな山に登ってもいいという『アルプス時代』に移っていくのではないか」と話していた。

森真悠子氏

本気の大人と本気の高校生がタッグを組み、次世代に向けた想像を超えるシナジーが生まれている。

イベントを終えて

国際機関が取り組んでいる問題は、地球規模で複雑なものが多く、また問題の伝え方も堅くなりがちである。しかし、国連広報センターは吉本興業と連携するなどして、親しみやすさと笑いで「伝わる」広報を心がけている。そして今回のソーシャルグッドサミットもまさに、「ワクワクするきらめき」でグローバル問題を自分たちに近づけようとする試みであると感じた。

会場となった100Banchでコミュニティーマネージャーを務めている加藤翼氏は「社会ゴトと自分ゴトをどうやってリンクしていくか、自分をどうハッピーにしながら社会もハッピーにしていくか」と言っていた。

地球の裏側にある問題と今ここにいる自分という遠くにあるふたつをつなげる媒介として、「ワクワクするきらめき」が今、求められている。

【参照サイト】ソーシャルグッドサミット