空き瓶をリサイクルして砂にする。廃棄物削減と砂浜保全を同時に行うブルワリー

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今、世界では砂浜の3分の2が海岸浸食を起こしているという事実をご存じだろうか。島国である日本も決して他人事ではなく、国内だけでも毎年160ヘクタールもの国土が海岸浸食により失われている。

海岸浸食の要因は様々だ。気象の変化や温暖化による海面上昇などもさることながら、河川ダム建設による土砂量の減少や建材用の採取など、人為的な要因もある。海岸の砂は建設業をはじめ、電子部品、医薬品など様々な分野で使われる貴重な資源なのだ。また、砂浜は人々が海水浴に出かける重要な観光レジャーの資源でもあり、貴重な生態系が息づいていることも忘れてはならない。

そんな大事な海岸を守るべく、太平洋の向こう側にある同じ島国のニュージーランドでは、とあるビール醸造所が環境に優しい興味深い取り組みを行っている。

自然が豊かで海岸に対する愛着意識も強いニュージーランドのビール醸造所「DB Breweries」が新たに開発したのは、廃棄用のビール瓶をリサイクルして人工の砂を作り出すという装置だ。

IDEAS FOR GOODでは先日、洪水を防ぐために雨水からビールをつくるオランダの醸造所「Hemelswater」の取り組みを紹介した。こちらは災害の種を商品の材料として取り込むインプットの例だが、DBの取り組みは、同じビールづくりでもビール瓶という廃品をリサイクルする、アウトプットのソーシャルグッドな例だ。

リサイクルの方法もとても粋だ。人々は、バーで飲み終わったら空いた瓶を「DB Export Beer Bottle Sand」と呼ばれる装置に入れるだけでよい。瓶のラベルが剥がされ、ビンがたった数秒で瞬く間に砂になるのを、装置のガラス越しに見ることができる。自分が地球に良いことをするのが目に見えてわかるため、愉快になってますますお酒がすすみそうだ。

ニュージーランドでは毎年6万トンものガラスが埋め立て廃棄に回っているが、「ビール瓶サンド」にして再利用すれば、埋め立て廃棄物を大幅に削減することができる。また、これはコンクリートの材料として砂浜から採取される砂の量を減らすことにもつながり、まさに一石二鳥の取り組みだ。

国連の調査によると、世界では毎年四国と九州を合わせた面積に相当する約6万平方キロメートルもの土地が砂漠化しているという。建設用などにはその砂を使えばいいのではと思ってしまうが、砂漠の砂は丸みがありすぎて建設に向かず、砂浜の砂が多用されている。貴重な自然資源であり工業資源でもある海岸の砂を守るために、「ビール瓶」に目をつけた点がユニークだ。

瓶のリサイクル自体は新しいことではない。昭和の時代から、酒屋さんに空き瓶を持っていくと小銭がもらえ、子供がお小遣いを稼げるような仕組みは日本にもあった。DBの取り組みで特筆すべき点は、ビールの製造会社が自らの事業により発生する廃品を他人任せにするのではなく、しっかりと責任を持って誰もが楽しくリサイクルできるような仕組みを作ったことだ。

【参照サイト】DB Breweries

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