競争や報酬といったゲームの要素を取り入れることで対象者を動機付けし、特定の行動に導く仕組みとして「ゲーミフィケーション」という概念が度々メディアに登場するようになった。
ビジネスの世界では昔から、マーケティング手法のひとつとして、参加者の競争心や攻略意欲をかきたてるゲーミフィケーションが多用されてきた。モバイルの普及や実生活へのインターネットの浸透により、今、その形は多様化し、応用シーンも広がりを見せている。購買だけではない様々なアクションの促進に、ゲームの効用が適用される。ソーシャルグッドなプログラムでも、このゲーミフィケーションの活用は多く見られるようになった。
そこで今回は、これまでにIDEAS FOR GOODでご紹介した事例を振り返り、ゲームの力を効果的に利用したプロジェクトを選出。ゲーミフィケーションで社会をよくするアイデア5選として、ご紹介したい。
ゲーム感覚でもっと楽しく安全な生活を
01. スパイごっこで効率的なインフラ整備
ノルウェーの首都オスロでは、子供たちに危険な道路を見つけるスパイをしてもらうアプリ「Traffic Agent」が開発された。エージェントとして登録された子供たちは、通学路の途中で危険な場所を見つけたら、アプリを通じてレポート。収集されたGPSデータと口コミ情報に基づき、優先順位の高い場所から効率的に道路・インフラの整備が進められる。地元PTAも協力する優れた公共プロジェクト。
02. 子供の歯磨きストレスを楽しい時間に変えるスマート歯ブラシ
テクノロジーの活用により子育て中の親をサポートする英BleepBleeps社が開発中のスマート歯ブラシ。歯磨き中の2分間、好きな音楽を流すことができるので、子供を飽きさせない。さらに無料アプリの使用で家族の歯磨き状況を記録。家族同士で磨いた回数と時間の長さを競い合うゲーム方式で、子供の嫌う歯磨きタイムを楽しいものに変える。
寄付する気持ちに働きかけるゲームの力
03. VRの村で寄付、コミュニティへの影響を視聴できるゲーム
Virtual Villageは、ユーザーが360度動画のアフリカの村を歩きながら人々の生活を知り、教育や医療、農業など興味を持ったテーマに対してその場で寄付ができるサービス。ゲーム内の寄付は特定のチャリティプロジェクトに直接送られ、現実世界に反映される。他のユーザーと協力することで、より効果的な援助が可能になるなど、ユーザーが楽しみながら継続的に援助したくなるような仕掛けも。
04. 競い合うNPO!トーナメント方式で寄付を促進
チャリティ団体Brackets For Goodがアメリカ通信大手のAT&Tと協働で米国内NPOによる資金調達の全国大会を開催。資金調達を目指すNPO同士でトーナメント戦を行い、寄付金額を競う。各団体の士気や注目度を高めることで、彼らが新たな支持者や資金を獲得するのを支援。
ステークホルダーエンゲージメントにゲームを活用
05. オンラインゲームで楽しむCSR報告
ビール醸造ブランド「ハイネケン」がCSR活動の成果をオンラインゲームで伝える取り組みが、注目を集めている。ゲーム参加者は、複数のステージを楽しみつつ、水の節約やCO2排出量削減、コミュニティへの貢献といった同社のCSR活動の内容と成果を知ることができる。参加者が1,000名を超えたら、5万米ドルをClosed Loop Foundationに寄付するというコミットメントも。
まとめ
見知らぬ人同士のつながりを生成し、様々な動機を生む「ゲーミフィケーション」の効力。ゲームに没頭することだけを楽しみにフィールドを訪れた人たちも、プレーを通じて取り組みに参画し、社会を変える力となることができる。理念で人々の心に訴えることができても、実際のアクションを引き出すのが難しいようなソーシャルグッドなプロジェクトにおいて、ゲームの力は時として極めて有効なソリューションとなる。