メキシコ名物をもっとサステナブルに。廃棄物ゼロのメスカル酒「Sombra Mezcal」

Browse By

テキーラと並んで、メキシコを代表するアルコール飲料のひとつが、リュウゼツランという植物が原料のメスカル酒だ。知る人ぞ知る、芋虫の入ったお酒である。近年世界中で人気を高めているこの蒸留酒だが、伝統的な製造方法では多くの資源を使い、製造のための廃棄物が増えてしまう。人気の裏で、大量のCO2を排出する結果にもつながっている。

さまざまな環境問題を抱えるこのメスカル酒の製造過程を見直さなければならない。環境分野の弁護士であったRichard Brettes氏はそう考え、より環境に優しく、サステナブルな製造方法を編み出した。そして作られたのがエコなメスカル酒「Sombra Mezcal」だ。

Brettes氏がオープンしたメキシコのオアハカ州の蒸留所では、蒸留酒の原料に標高8000メートルの山で栽培されたオーガニックのリュウゼツランを使っている。4年から12年のあいだに成長したものを収穫し、高温で丸2日かけて焼く作業はメスカル酒の製造できわめて大切なプロセスだ。だからこそ、ここでは地域認定のオーガニック農場で生産された木材のみを燃料として使っている。

また、Sombra Mezcalの製造は動物の権利も尊重している。従来の製造方法では、焼いたリュウゼツランを馬が動かす石うすで潰していたため、労働力確保ために大量の家畜が必要だったが、これを馬力ではなくソーラーパネルで動くように改良した。動物労働をクリーンエネルギーに置き換えたのだ。そして、空が恵んでくれるものは太陽光だけではない。蒸留所に3つのタンクを設置したことで、雨水を貯水して治水することもできる。

リュウゼツランを潰したあとは、いよいよ発酵・蒸留の工程だ。伝統的な製造においては、蒸留の際に残留物が近くの川に流れ、水質汚染を招くという大きな問題を常に抱えていた。しかしSombra Mezcalの製造では、この残留物をコンポストにし、現地の農家に提供したり、バイオ燃料にしたり、日干しレンガを作ったりしている。つまり、廃棄物はゼロだ。

すべての工程が終わると、地元でリサイクルされたガラスからできた瓶に詰められる。それにひとつひとつ手でラベルを貼り、ついに完成だ。

Sombra Mezcalの製造について、Brettes氏はこう語る。「自分の会社の製造方法が、他のリキュール製造者の手本になれば良い。もちろん、すべての製造者にとって最適な方法とは限らない。しかし、廃棄物の処理だけは、製造者の重要な責任だ。皆がわたしたちの仲間になることを願っている。」

近頃、エシカル消費という言葉が広まりはじめ、買う側としての責任が重要視されてきている。Sombra Mezcalのような商品を知ることは、わたしたちが「消費者としての責任」をまっとうする第一歩なのではないだろうか。

【参照サイト】Sombra Mezcal

FacebookTwitter