21世紀に解決するべき世界課題の中でも、特に重要視されるもののひとつが水不足である。
蛇口を捻れば安全な水が飲める日本に住んでいる私達には信じられないような数字を紹介しよう。現在、世界で10億人以上の人々がきれいな水の安定した供給を受けられない状態にある。さらに劣悪な衛生状態を原因として毎年220万人以上の人々が死亡しており、毎年2億5,000万人以上の人々が病に苦しんでいる。
そんな現状に対して、驚くほどスマートな解決策を提示した企業がある。太陽光発電のエネルギーを利用して、空気中の水分を飲料水に変えることのできるハイドロパネル「Source」を製造したZero Mass Water社だ。
ハイドロパネル「Source」は、空気に含まれる水分を集め内部にある貯蔵庫でマグネシウムとカルシウムを添付する。これら一連の動作をすべて太陽光発電によるエネルギーで賄う。1日10リットルもの水を作り出し、30リットルまでの水を貯蔵庫に蓄えられる。
Zero Mass Water社の公式サイトにある会社概要ページは非常に明確なメッセージから始まっている。「私達は毎朝一つの目的を持って会社に来ています。安全で質の高い水の供給に関わる問題を解決するために、私達は活動するのです。」というものだ。
「Source」はきれいな水を確保することができなかった貧困地域だけでなく、むしろ水道水を直接飲むことの出来ない多くの新興国や先進国にも高い需要を持つ。そのような国ではミネラルウォーターをペットボトルで買う習慣があるが、将来まで続く購入費用を考えれば、パネルの導入費である4500米ドル(約49万)もあながち高すぎるとは言えない。
加えて、ミネラルウォーターを買わなくなることでゴミになるペットボトルの数も削減できる。公式サイトでは「Source」の導入によって、既に10万本以上のペットボトルが節約されていると発表されている。単に綺麗で安全な水が飲めるだけに留まらず、他の環境問題の解決にも繋がっているというのだから素晴らしい。
きれいな水の供給問題について、テクノロジーによってここまで鮮やかに解決するケースは中々見ない。今後さらなる技術の発展によって価格が下がれば、貧困地域の問題解決にも間違いなく寄与するだろう。「Source」のこれからの活躍に期待したい。
【参考サイト】Zero Mass Water