世界最大規模となる太陽熱発電所の建設が、今年オーストラリアで始まる。建設予定地はオーストラリア南部のPort Augusta市で、アメリカに本社を置くSolarReserveが開発を行う。
この太陽熱発電所の総出力は150メガワット。1,100メガワット時の電力量を貯めることができ、日没後も8時間にわたって電力を供給できる。これは、23万世帯の8時間の電力量、もしくは南オーストラリア州の全世帯の35%の電力量に相当する。
この大規模な電力供給を可能にしたのは、世界最先端の溶融塩の蓄電システムだ。何千枚もの鏡を使って太陽光を反射させて中央の塔に集め、塔の上に汲み上げられた溶融塩を熱してタービンを動かす。
従来の太陽熱発電の短所は、夜間は発電せず、天候によって発電量が左右されるという点だが、溶融塩の蓄電システムがこの問題を解決してくれる。このシステムでは、太陽が出ている昼間に発電して電力を貯蓄し、日没後も溶融塩のバッテリーに貯めておいた太陽エネルギーを使用できる。これにより、バックアップ用の化石燃料を使用せずに、化石燃料や原子力のような安定した電力供給が可能になる。有害物質も排出しない。
さらに、溶融塩を使用する技術は、現在の大規模エネルギー貯蓄システムにおいて一番コストが低く、化石燃料や天然ガスおよび原子力発電のコストと同等だという。
この太陽熱発電所は、2018年前半に最終的に認可され、建設が始まった。発電所建設に当たって6,5億豪ドルが投資され、700人の雇用が新たに生まれるということで、環境や地域コミュニティ、そして社会に大きな影響を与えるプロジェクトとして、注目が集まっている。
南オーストラリア州のエネルギー大臣代理であるChris Piction氏は、「この世界最先端のプロジェクトで、電車や病院、学校および主要な政府建物などにクリーンで再生可能なエネルギーを供給できるようになる。また、南オーストラリアにおける電力コスト低減への第一歩となるだろう。」と語る。
SolarReserveはこのプロジェクトに当たり、南オーストラリア大学と共同研究を行い、太陽熱発電所の研究および南オーストラリアにおける教育拡大に努めていくという。
南オーストラリアに建つ、溶融塩の蓄電システムを使った世界最大規模の太陽熱発電所。今後の展開が楽しみだ。
(2019/09/03 追記:記事中に使われていた「太陽光」の表記を「太陽熱」と修正いたしました。)
【参照サイト】SolarReserve
(※画像:SolarReserveより引用)