オーストラリアでは、1日平均7.5人がドラッグにより、そして15人がアルコールにより命を落としているという事実をご存じだろうか?
これを年間計算すると、アルコールで5,400人以上、ドラッグで2,700人以上が亡くなっていることになる。さらに、重い中毒や依存症に苦しむ人々の数は、それよりもはるかに多い。
そこでオーストラリア政府は、アルコールやドラッグ漬けの生活から足を洗うリハビリに励む人々に向け、とてもユニークなプログラムを発表した。それはなんと「小型飛行機の操縦訓練」だ。指導役には、飛行機の操縦訓練を通して若者の成長支援を行う、豪LIFT Youth Developmentが選ばれた。
全国から集められたリハビリ患者たちが向かうのは、体験用の小型飛行機が待機する飛行場だ。飛行機に乗り込んだあとは、隣に座るパイロットの指導を受けながら、飛行機の離陸と、飛行中の操縦を実際に体験する(※体験動画)
アルコール・薬物依存症と、飛行機の操縦。いったいどんな関係が?と思う人も多いだろう。「私たちはストレスを通して、多くのことを学ぶことができます。」そう語るのは、LIFT Youth DevelopmentのPaul Simmons氏だ。
「飛行機の中で患者が体験するのは、落ちるかもしれない、死ぬかもしれないという恐怖です。そんな極度のストレス状況下でも、しっかり気を保ち、脳をコントロールすること。自分の身を自分で守るということ。その体験が、アルコールやドラッグの誘惑を断ち切るための、大きな助けになるのです。」
プログラムに参加した患者の1人は、興奮ぎみにこう語る。「空を飛ぶという体験を通して…… 今までとはまったく違う感覚や、ものの見方を学んだように思う。広い空から見たら、私の不安が、とてもとても小さいことのように感じられたんだ。」
本訓練は、全豪州のリハビリセンターで実施される、全部で10ヶ月のリハビリプログラムに組み込まれる。費用のほとんどは寄付でまかなわれるという。
「空飛ぶ飛行機の中で、自分の身を守る体験」が「アルコールやドラッグ依存の危険性から自分を守る」ことにつながるのはとても興味深い。空を舞うとまではいかなくても、日常の中にあるちょっとしたスリルや、ドキドキさせられる状況を通して、私たちが学べることは多いのかもしれない。
【参照サイト】LIFT
【参照サイト】What’s really happening in our community?
【参照サイト】Drug induced deaths at highest rate since late90s