【イベントレポート後編】「ゼロ・ウェイスト認証制度」を初公開。ファッションレボリューション2019

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2013年のラナ・プラザビルの崩壊事故から6年目の4月24日、公平、安全、明確で透明性のある日本のファッションを考える『FASHION REVOLUTION DAY 2019』が東京で開催された。今年のテーマは「ミツケル・ヒロガル・エシカル baby steps lead to FASHION REVOLUTION」。

レポート前編では、企業による4つのトークセッションのうち前半3つをご紹介した。後編では、4つ目のトークセッション「今日からできるサステナビリティへの一歩」のようすをお届けする。ここでは、アパレルブランドを対象とした「ゼロ・ウェイスト認証制度」が初公開された。

▶前編はこちら:【イベントレポート前編】サステナブルなファッションのあり方を考える、ファッションレボリューション2019

「ゼロ・ウェイスト認証」とは?

「ごみ・無駄」をゼロにする事業者を独自の基準で公的に認証する、ゼロ・ウェイスト認証制度。制度をつくったのは、日本ではじめて「ゼロ・ウェイスト宣言」をし、80%以上のリサイクル率を誇る徳島県上勝町でごみ削減に取り組む、特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミーだ。

理事長の坂野晶さんは冒頭、「サステナビリティは自社だけでは取り組めなくなってきており、社会の仕組みを変えなくてはいけないところまできている。これからはいかにみんなで取り組める仕組みをつくっていくかが重要」と指摘した。これまでは飲食店を対象にゼロ・ウェイスト認証をしていたが、今回新たにアパレル向けの制度を立ち上げた。

認証を受けるには、事業所が以下三つの条件を満たすことが求められる(※1)

  1. ゼロ・ウェイスト活動に必要な知識を備えており、そのための人材育成を行っている
  2. 適切なごみの分別、資源化を行っている
  3. ゼロ・ウェイスト活動を継続的に発展させていくための計画が組まれている

細かい取り組みすべて合わせると、九つの項目があり、九つ中二つ以上の取り組みが認められると認証を受けられる。

パタゴニアのゼロ・ウェイストへの取り組み

今回はサステナビリティに積極的に取り組むアウトドアブランド、パタゴニア日本支社ブランド・レスポンシビリティ・マネージャーの篠健司さんから、それぞれの細かい項目についてどのように取り組んでいるか、という事例が紹介された。

Zero waste パタゴニア

「ACT with YOU(一緒に活動しよう)」という項目では、「利用者がゼロ・ウェイストについて知り、取り組みについて参加できる仕掛けがある」かどうかがポイントとなる。パタゴニア横浜ストアでは「地域にとって贈り物のような存在でありたい」という思いから、近隣の有機農家やカフェと協力し店舗スペースでゼロ・ウェイストライフな暮らしを実践できる「ゼロ・ウェイスト・マーケット」を開催。この他にも海洋ごみに関するイベントの開催や、店内でのゼロ・ウェイスト実践方法の展示などの取り組みもある。

「店がお客様に提供する『サービス品』から使い捨て品を出さない、もしくは削減に取り組んでいる」かどうかがポイントとなる「CHOICE(選択)」という項目では、店舗での洗剤の量り売りやレジ袋のデポジット制について紹介。

「日常の業務で使用する紙類、備品の削減や代替品の使用により、ごみの発生を抑制している」かどうかが問われる「SYSTEM(制度)」の項目については、業務につかう文具の置き場所を決め、すべに値段をつける、という取り組みをパタゴニア横浜ストアで実施したという。

担当者によると「無駄に買いすぎることがなくなり、置き場所が決まっているのでモノがなくならなくなった。モノを探す時間も減った」という。「置き場所を決める」というのは誰もがすぐにできる取り組みで、整理収納のプロとして知られる近藤麻理恵氏こと「こんまりさんの基本メソッドでもある」と坂野さん。事業者のみならず個人でもすぐに実践できそうだ。

「TRACEABLE」、「製品が使い捨てにならないような仕組みを取り入れている」という項目では、アップサイクルイベントの開催について紹介。普段は捨ててしまうような破れた古着などをポシェットなどにつくりかえてSNSで公開したところ、反響が大きかったという。

認証制度の策定には、パタゴニア大阪ストアの長谷川さんも参画した。パタゴニア日本支社が導入している、1年以上の勤務すると1か月環境団体でインターンができる制度を利用してかかわったという。長谷川さんは「多くの人たちと認証をつくりあげていきたい。こういうこともできるのではないかという意見をぜひ聞きたい」と認証制度に寄せる思いを語った。

パタゴニアの篠さんは、「認証制度は現状を知り、どこを変えたらインパクトが出せるか、お客様を巻き込んだら何ができるかを知る機会になる。パタゴニアでも、スタッフのやる気でさまざまな取り組みができている」と語った。制度を活用することにより、会社、店舗、従業員、消費者、それぞれの行動をサステナブルなものへと変えていく強力なツールになりそうだ。

消費者も前向き

ファッション業界のサステナビリティに対する取り組みを社会、消費者はどう受け止めているのだろうか。

レポート前編でご紹介した豊島株式会社の溝口さんによると「昔と比べ、オーガニックコットンについて説明をする必要がなくなってきた」という。業界内ではオーガニックコットン使用の認知度が高まりつつあるようだ。

ただ、エシカルをテーマとしたCMを打ち出したストライプインターナショナルの二宮さんによると、CMに対し「エシカルって何?」という質問が多かったという。用語が比較的新しいことも影響しているのかもしれないが、「エシカル」を浸透させていくにはもう少し時間がかかるのかもしれない。

それでも、セッション2のパネリストとして登場した『VOGUE』編集長の渡辺三津子さんによると、読者調査ではサステナビリティをテーマに特集した2月号が2位にランクイン。読者のサステナビリティへの関心は高まりつつあるようだ。

約350人が参加する大イベントとなった『FASHION REVOLUTION DAY 2019』。日本におけるファッションレボリューションキャンペーンの国別コーディネーターであり、ETHICAL FASHION JAPAN代表の竹村伊央さんは「今回は昨年より参加者も増え、アパレル関係の方を中心に多くの人が集う機会になった。今後はさらに、キャンペーンに参加してくれる店舗や団体、個人を増やし、全国で同時多発的にしていきたい」と展望を語った。

今回のテーマ「ミツケル・ヒロガル・エシカル baby steps lead to FASHION REVOLUTION」の通り、多くの人たちがファッションとサステナビリティに関するヒントを見つけ、理解を広げ、次なるstepにつなげる機会になったのではないだろうか。今後のさらなる展開を期待したい。

※1 アパレルストア ゼロ・ウェイスト認証制度 申請ガイドライン 2019
【参照サイト】ETHICAL FASHION JAPAN
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