シンガポール国立大学研究チームは、木のゴミをコンクリートに混ぜて建物を強くするという、画期的な技術を開発した。
私たちの生活の中で生じるゴミ。シンガポールでは廃棄される家具から大量の木のゴミが発生しており、その量は1年間で50万トンにもなるという。シンガポール国立大学は、この木のゴミに注目し、燃やしたり埋立てて廃棄する代わりにバイオ炭として再利用することに成功した。
日本バイオ炭普及協会の解説によると、バイオ炭とは「近年注目されている、生物資源を材料とした、生物の活性化および環境の改善に効果のある炭化物のこと」である。バイオ炭は、水をよく吸収して保水する多孔性の素材であるため、主に農産業において、収穫量改善を目的として土壌改良用に使われている。
研究チームは、このバイオ炭をセメントに混ぜて、コンクリートなどの建築材料の強度を上げ、水密性を高めた。実験では、建物の強度は20%、水密性は50%も上昇が確認された。バイオ炭はセメントと混ざると状態を変え、硬度を強化するという特性をもっており、施工期間の短縮とコスト削減を可能にする。
「木のゴミを混ぜて建物の強度を高めるという技術は、シンガポールでは特に重要だ」と語るのは、研究チームを率いたKua准教授だ。
シンガポールは熱帯気候に属し、年間降水量は2,300mmで1年中雨が多い。日本の降水量1,700mmと比べると、その違いは歴然だ。そのためシンガポールでは、雨と水道管からの水漏れが、建物の強度維持において大きな問題となっている。今回の研究は、この問題を解決する大きな一歩となるものだ。
そして、この技術でバイオ炭を大量に再利用できる。100平米のアパート建設にあたって必要なコンクリートは120トン、木のゴミは6トンにのぼる。アパート1戸を作ると、6トンもの木のゴミをリサイクルできるのだ。
シンガポール国立大学研究チームは現在、さらなる高性能セメントの開発を進めると同時に、地元企業と共同で商業化をめざしている。
これまで捨てられてきた木のゴミをコンクリートに混ぜるというシンプルな発想。ゴミを減らしながら、建物を強くし水漏れ防止にも役立てる新技術の今後が期待される。
【参照サイト】Novel NUS technique strengthens building structures using wood waste
【参照サイト】日本バイオ炭普及協会
(※画像:National University of Singaporeより引用)