エアコンが無くても室内を涼しく快適に。除湿して電気も生み出すハイドロゲル

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今年も夏が来た。日本の蒸し暑い夏には、エアコンが欠かせないが、エアコンは日本で一番電気代がかかる家電だ。

環境に優しいエアコンの開発が進むなか、IDEAS FOR GOODでもこれまでに、熱を宇宙に送って空気を冷やす、スタンフォード大が開発する未来のエアコンや、電力を40%削減し、飲料水を生み出すシンガポール国立大学が開発したエアコンをご紹介してきた。

そして今回、シンガポール国立大学は室温調整に有効なゲルを新たに発表した。このハイドロゲルは、湿気を除去して室温を下げ、電気をも生み出すという優れものだ。

Image via NUS News

研究チームが注目したのは、「湿気」と「私たちが感じる暑さと不快さ」の関係だ。シンガポールのような熱帯地方では、湿気が70%から80%ととても高い。こういった環境では、空気が水によって飽和され、私たちの汗はよりゆっくり蒸発するようになる。そのため、私たちは実際の温度よりも暑く不快に感じるのだ。研究チームは、この湿気を周りの空気から効率的に除去し、冷却効果を得られるハイドロゲルの開発を目指した。

今回開発されたハイドロゲルは、日焼け止めクリームに含まれる酸化亜鉛の一種である。ハイドロゲルは一般的にコンタクトレンズやドレッシング材やパーソナルケア用品に使われており、最近では、再生医療や薬物送達システムなどの生物医学にも応用されているが、周囲の空気から水を吸収する働きについてはこれまで十分には研究されてこなかった。

実験の結果、研究チームは、このハイドロゲルが周りの空気の水分をゲル本体の重量の2.5倍以上吸収することを確認した。これは、シリカゲルや塩化カルシウムなどの既存の商業用乾燥剤の8倍に相当する。そして、7分という短時間で湿度を80%から60%まで下げることに成功したのだ。

このゲルは、安価で簡単に少ない材料で生産でき、エアコン設備のない病院や学校の教室、公園やバス停など、屋内および屋外の相対湿度を減らすのに適用できるという。壁や彫刻などの装飾品の表面に塗っておけば、部屋の除湿ができるという仕組みだ。電気を大量に必要とする除湿器やエアコンと異なり、ハイドロゲルは電気を必要としない。エアコンとともに使用する場合も、電力を大きく削減できる。

さらに、水分を吸収すると、ハイドロゲルは不透明になり、赤外線伝導を約50パーセント削減する。室内のプライバシーを守る目隠しとして、また熱を遮る日よけとして、これから窓への使用も期待される。

ゲル自体が導電性を持ち、電気を発生させることも興味深い。

開発されたハイドロゲルは、電子機器で広く使われているプリント回路板の導電性インクとしての機能も備え持つ。酢などによって簡単に拭きとれるため、回路板は再利用でき、電気部品の浪費削減に役立つという。また、単3電池と同等の約1.8ボルトの電気も発生させる。このゲルで、小さいデジタル時計などを十分に機能させられるのだ。日光や電気供給がない状況において、緊急電源としても使用できる。

今後、研究チームは屋内および屋外において、より大きなスケールでこの新しいゲルの適用試験を行っていくという。湿気を除去して電気も生み出すハイドロゲル。これからの研究開発が大いに期待される。

【参照サイト】Novel water-absorbing gel invented by NUS researchers harnesses air moisture for practical applications
(※画像:National University of Singaporeより引用)