頭髪があってもなくても着飾れるヘッドウェア、国内クラウドファンディングで展開

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数年前に「頭髪のないバービー人形」というものが話題になったことがある。これは、がん患者の子供たちを意識した製品だ。

マテル社の製造するバービーは、アメリカという国をよく象徴している。最初期のバービーは金髪の白人だったが、そもそもアメリカは多民族国家である。アフリカ系、アジア系、ネイティブアメリカン、ヒスパニック。合衆国憲法ですべての国民の市民権を保証している以上、バービーの世界に白人しか出てこないということはあり得ない。だからこそ彼女の友達にはいろいろな境遇の人がいる。抗がん剤治療を受けている友達がいてもおかしくないはずだ。

しかしこれは、何もアメリカだけの現象ではない。日本にもあらゆる境遇の人が存在し、日々の暮らしを営んでいる。クラウドファンディングサイトMakuakeに、こんなプロジェクトが登場した。『N HEAD WEAR』と名付けられたファッションアイテムの開発である。

Image via Makuake

頭髪の有無に関わらず楽しめるヘッドウェアということで、すでに複数のメディアでも取り上げられている。

デザイナーの中島ナオ氏は、自身も抗がん剤治療を受けている。だが、抗がん剤により頭髪が抜け落ちたことと、ファッションへの興味の消失はイコールではない。人が人である理由、それは「着飾る」ということではないだろうか。それを持ち続けているからこそ、人類は巨大な文明と精緻な文化を築くことができたのだ。

N HEAD WEARはいくつかのラインナップを用意しているが、そのひとつに京都の先染め織物である西陣織を使用しているものがある。この製品化には多大な苦労があったようだ。しかし西陣織という、並の勤め人が気軽に購入できないような素材を選定した背景には、デザイナーの意気込みが見受けられる。

Image via Makuake

この西陣織ヘッドウェアの製品提供枠は、2万6520円。消費者の視点から見れば、決して安くはない。平均的な金銭感覚を持った人が衝動買いできるような数字ではないことは確かだ。だが、何でも安くすればそれでいいのだろうか? 付加価値を落としてまで値を下げることが、本当に正しいのだろうか?

われわれは、物の値段を「重み」として見なす必要がある。物事に対して真剣に向き合い、顧客に提供すべき付加価値を追求した結果が2万6520円ならば、それは何ものにも変えられない「本物ならではの重み」と言える。頭髪の有無、病の有無、そして境遇の差異を越えて誰もがファッションを楽しむという環境が構築されていく。われわれは、その過程をまさに目の当たりにしているのだ。

この春にがんとわかって、治療を始めてから4年。このままなら、生きにくいのであれば、その生活を変えていきたいですし、このままなら、生きられないのであれば、その状況を少しずつでも変えていきたいのです。
Makuakeより引用。一部句読点は筆者注)

どのような境遇の人でも、休日は外で遊び、友達と笑い合い、恋愛を経験する。ローマ教皇フランシスコは以前、「壁ではなく橋を作ろう」と発言した。われわれは心の中にある壁を撤去し、人々と手を取り合うための橋を建築する必要があるのだ。N HEAD WEARが、その第一歩になろうとしている。

【参照サイト】髪があってもなくても楽しめる、あたらしい頭のファッション N HEAD WEAR-Makuake